企業診断ソフト (与信ドクターZ)


独立系システム会社「日比谷コンピュータシステム」社(以下HCS)のセミナーで、今年4月に販売開始予定の企業診断ソフト「与信ドクターZ」の説明を聞いてきました。銀行の法人与信や企業が取引先の信用審査を行う際のツールです。あらかん(現在ではアラーム)の開発者として知られた伊藤祥司氏が、HCSに入社して、全く新しいロジックで開発した財務診断というか倒産予知システムです。

http://www.hibiya-cs.co.jp/gyomu_solution_credit.html

主な特徴は以下の4点です。

1.新たに考案した12の指標で倒産判別する。営業キャッシュフローを売上で割って営業キャッシュフロー比率とし、これが70%を切ると回復困難と判断する等、従来使われてきた指標を修正して判別力を強化している。売上高伸び率が、始めて企業評価ツールに組み込まれているが、営業キャッシュフロー比率と合わせて、架空売上等粉飾を抽出できるそうです。

2.付加価値創出力や純キャッシュフローを把握できる指標(絶対額ではなく比率)を過去の経験や実データから導出している。その結果、今日では定義が錯綜した業種区分や規模にとらわれずに全業種共通の指標で分析できる。

3.耐久力指標としてυ(ウプシロン)値を発見し、適用することで倒産判別力を大幅に向上させた。υ値とは、(実物資産―自己資本)÷月商×使用総資産回転率とする。これにより、営業用資産の質と量の適切性と投下資本回収速度(δ)を確認できるそうです。

4.二期分の決算書で分析可能なので、未上場企業や年商1億未満の中小企業でも簡便に分析できる。

筆者が、二十数年前にエキスパートシステムの担当をしていた時に、長銀の診断ツールやあらかんと併用するために、定性評価用のルールベース診断の仕組みを作ったことがあります。どちらも決め手はなく、最後は審査役の経験とノウハウに頼らざるをえませんでした。聞くところでは、財務診断も定性診断もその後余り変化していないそうです。この分野の進歩が止まっていたということなのでしょう。

伊藤氏は、こうした実情を憂えて、長年蓄えてきたアイディアを検証しながら、全く新しい財務診断ツールを開発したということです。これまでのところ、生存企業解明率は70%、倒産企業解明率は85%だそうです。4月発売までに、より精度をあげるべく実データによる検証と修正を続けるそうです。銀行実務からすれば、85%の倒産解明率でも十二分だと思うのですが。

筆者が、このセミナーに参加させてもらった動機は、銀行の零細企業与信審査に使えないかと期待したからです。地域金融機関には既に診断ツールが導入されていますが、零細企業の場合は決算資料の精度に問題のある場合が多い為、実質的には使われていません。一方、改正貸金業法の総量規制によって資金調達手段を制約された零細企業が多い。現在は金融円滑化法等で延命措置がなされていますが、時限立法です。いずれは、銀行に対して、この分野の事業強化が要請されるでしょう。金融庁の貸金業統計では、事業者向けローンは17兆円もの市場規模です。しかし、この分野に手ぶらで参入する訳にはいきません。財務診断、定性評価、恒常的モニタリング、証券化などの武器が必要です。ですから、どんなツールが現在、実用可能なのかを知りたかったのです。

与信ドクターZは、Windowsベースでクラサバ方式とスタンダロン方式があります。2003サーバーかXP、7で対応できます。DBはオラクル10gですが、MySQLにも対応可能だそうです。言語が富士通のNetCOBOLなので、自社でカストマイズしたい時には制約となるかもしれません。IFRS対応を予定しているとのことですが、IFRS基準自体が未確定ですから、確定時の対応方法を確認しておけばすむ問題です。ドクターZの販売価格は、2百万、5百万といった程度ですから、負担のかからない予算で実験的導入ができるでしょう。実績データを積み上げ、自行用にカストマイズしつつ、ルールベースの定性評価と組み合わせることで、新しいビジネス展開が可能になると思いました。