適用業務解説書 「SEのための銀行三大業務入門」 

 

知人から紹介されて読んだ本です。金融財政事情研究会から発行されています。

http://store.kinzai.jp/book/11731.html

金融関連システムに40年以上関わってきたので、復習のためにサット目を通すつもりで読んだのですが、自分が知らなかったこと、勘違いしていたことが随所で発見されました。最近、「今さら聞けない・・・・」と称する本やWebサイトが多く見受けられますが、読んでみると自分の専門分野でも、新たに気付くことが多いことを痛感しています。本書は、読者層として若手・中堅SEを想定しており、平易に説明されています。著者は、老舗のシステム開発会社シーエーシー社の室勝氏です。400ページを超える原稿を書くのは、さぞかし大変だったろうと思いましたら、同社の社内研修用資料をアレンジしたのだそうです。それでも大変であることに変わりありませんが。また、このように整理された知的財産の公開を認めて支援するシーエーシー社の姿勢にも感心します。

この種の著作では、単純表面的な業務機能の羅列説明が多いのが実情です。また、知っていることや考えたことを書くだけではいけません。読者の関心と知識レベルに合わせる必要があります。判り易く書くことは実に難しく、面倒なことです。著者に書いていることの数倍の情報や知識がないとできません。その点、この著書は業務や商品を平易に説明しながら、システム化する時の留意点にも触れています。更に、約180ページが銀行会計処理の説明に割かれています。そして、勘定系の全体の仕組みを理解できるようにしています。まさに銀行勘定系システムの基本です。筆者も大昔に銀行オンラインを説明する著書を出版しましたが、表面的な説明に終始し、基盤となる会計処理を説明することはできませんでした。

若いSEの皆さんからは、「今さら銀行勘定系を勉強しても、勘定系プロジェクトなどないので、活用する機会がない。」という声が聞こえてきそうですが、それは誤りです。ネットバンキングであろうと、資産運用ビジネスであろうと取引処理は、勘定系システムと連動させなくてはなりません。それを無視して周辺システムを構築すれば、とんでもないことになります。融資支援システムや担保管理システム、コールセンター・システムなども同様です。良し悪しは別として、銀行の取引処理システムは全て勘定系に繋がるのですから。良し悪しは別と言ったのは、筆者は勘定系から総勘定元帳を外して、商品別元帳だけ持つようにすれば銀行基幹系システムが桁違いに身軽になると考えているからです。しかし、そうした動きは見られません。触るのは、途方もなく面倒なので、50年近く前の設計思想がそのまま使われています。このことが日本の銀行で、技術革新取り入れを阻害していると心配しています。

ところで、この本はSE向けに書かれたとされていますが、新入銀行員にも読ませるべきだと思います。銀行内の新人研修で教える内容より判り易く実務的だと思うからです。それに、「最近では、基本業務研修の講師がいなくなった。」と嘆く研修会社が多いように、教える側の人材不足が深刻です。受講者に本書を事前に読ませておき、集合研修でベテラン行員とのQ&Aに集中するのも効率的でしょう。銀行業務も、システム対象範囲も、どんどん変化していきますが、基本を押さえておかないと応用が効かず、間違いや非効率の元となります。個々人や各会社が保有するノウハウを社会的資産として公開、共有することが、金融界のためにも必要だと痛感しています。