DWH高速エンジン(翼システムのDr.Sum)



エンドユーザー向けのDWHツールのデモを見てきました。製造元は、印刷編集ソフトで実績のある翼システム社です。還元帳票の作成支援の延長線で、EU向けDWHツールを開発・拡張してきたそうです。今回は、スタンドアロン型の従来製品「Dr.Sum」(ドクター・サム)を数段高速化し、エンドユーザー向けに操作性を改良し、大規模ユーザーでも使えるようにサーバー・サポートを強化した「Dr.SumEA」版を発売しました。

http://www.drsum.com/

このツールは、部門別情報系や簡易レポーティングに使えるツールです。製品により異なりますが、1データマート当りで1千万、2千万、4億件のデータを集計できます。複数のデータマートを扱えます。ファイルは64ビット化されていますので、従来型RDBに比べると100倍前後の処理速度です。前回、エクセルのお化けと渾名付けしたDayDa.Labooをご紹介しましたが、それをデータマート化、データウェアハウス化したものと言えるでしょう。このツールもエクセルのドリルダウン、ドリルスルーによって自由自在なスプレッドシート処理が超高速で実行できます。

最上位版ですと、複数のデータマートを縦横に串刺し可能ですので、様々な視点から多次元データを集計できます。データをストアする段階でインデックシングしますが、追加データはビジネスディクショナリーで処理してからデータマートに追加されるので、データ更新時間を気にする必要はありません。その際に既存データの集計作業を並行処理できるコミットメント機能もあります。

APIも充実していますが、既存DBからはVtbCreatorというツールか、SQL、CSVでデータを取り込みます。銀行で言えば、勘定系から数秒間隔で異動データを取り込めますので、実質的にはリアルで情報系データを更新できます。三次オンで苦労したディファード処理が簡単に実現できることになります。ホストにデータをアップロードしないアプリであれば、バッチ処理にも使えるでしょう。

稼動環境は、サーバーがNTか2000Serverで、1GHZ以上、1GB です。クライアントは、98、Me、XP、NT、2000 のどれでも構いません。PentV以上、128MB以上ということですから、既設PCで充分です。

今日のエンドユーザーは、エクセル程度であれば使いこなせます。しかし一度、情報系と称してIT部門がDB管理を行なうと、途端に自由度を奪ってしまいます。IT部門としては、経費削減、要員減少という逆風の中で、エンドユーザーによる自力処理を推進することが、ITケイパビリティ強化に不可欠です。Dr.Sumは簡易版で150万前後、最上位版でも2千万円程度のライセンス・フィーと低価格です。どうもこの種の製品は値段が安くて、開発企業が儲からないことが欠点です。大法人価格、金融価格に馴染んだ私から見ると気の毒になります。金融IT部門は、ユーザー部からの簡単なニーズにも数ヶ月、数百万円をかけて顰蹙をかうことが多いのですが、このようなツールによってユーザーCS向上、経費削減、会社全体ITリテラシー改善を実現できるでしょう。

ITベンダーにとっては、受託開発で売上を確保する機会が減ることになります。ハードも一段と低価格化の影響を受けるようになります。ICの技術革新とユーザーの利用分野拡大が、従来型のITビジネスモデルを破壊しつつある事実は受け入れざるをえません。日本の中規模以下のITベンダーが、技術革新を活かして、優れたDBエンジン製品を発表するケースが増していることは、このトレンドの一環なのでしょう。とはいえ、これらのツールは導入して完了という訳にはいきません。他システムとのデータ連携や他ツールとの組合せにはIT専門家が不可欠です。既存業務の再設計支援、情報活用の体制やスキル育成支援もなくてはならないサービスです。コーディング主体のエンジニアは、数年後を睨んで、自分のコア・スキルを考え直す必要があります。