ASPによるCRM  “salesforce.com”

この商品の特徴は、とにかく安いことでしょう。1アカウント当り月間5千円です。インターネットさえ接続できれば使えるのです。次に導入が極めて簡単なのでSEは必要ありません。導入の時だけ、DBの論理設計が出来て、Web画面を操作できる人がいれば導入できます。ヒナ型テンプレートを使えば極端な話で当日から使えます。代表的な業種別テンプレートもありますので、それを使えば、細かいことに拘るユーザーでも一週間もあれば稼動できるでしょう。主なメニューは取引先情報、見込み先情報、商談管理、カレンダー管理、ケース管理などで、入力したデータを使って様々なレポーテイング機能もあります。WebベースのCRM、SFA、グループウエアの機能っを持ったサービスと言えるでしょう。

詳細は:https://ap.salesforce.com を参照して下さい。デモもすぐに見られます。

大手の金融機関の大半がCRMシステムを導入しています。CRMといっても、顧客情報管理や営業活動管理、コールセンターなど定義や範囲は様々です。元々は顧客情報DBを活用した顧客管理全般の仕組みを言っていたのですが、ここ数年ですっかりコールセンターの代名詞のようになってしまいました。

ITソリューションとしては、有名なパッケージ・ソフトが2、3あります。筆者も導入をお手伝いしたことがあります。しかし、それにしても費用が高い、導入が大変、使い方も限定的というのが本音です。数千万円もするパッケージを前提に、コンサルテイングに数ヶ月・数千万円(場合によっては億円を越える)、開発に一年・2、3億円、加えて専用のサーバーやクライアントPC、DBMS、回線料金も必要です。更に導入費用の20%弱の保守費用が毎年必要となります。IT要員も相当な人数となります。 

ところが業務要件は頻繁に変わります。いくらユーザー部門の代表を巻き込んで要件定義したと言っても、それはIT部門の責任回避にしかなりません。多くのユーザー担当者は、使えない・使い憎い・面倒だ・役立たない・本業の邪魔だ・・・などと不平不満ばかり言います。であれば、もっとじっくりと要件定義を・・と考えると間違いの元です。ユーザーの使い方が変わることを前提にすべきなのです。

最近、あるクライアントのCRMプロジェクトで salesforce.comを使ってみました。

要件定義は、ユーザー部門の声の大きい方々5名です。5回(1回3時間前後)ほどのセッションで要件定義の前提である営業目標・戦略・課題などや、ニーズ、マーケテイング・シナリオ、使い方などを洗い出して合意してしまいます。その際に、対象エンテイテイを抽出して優先付けしてしまいます。

次に、1か月間は無料で試用できるので、まずはプロトタイプを作ってしまいました。それをユーザーに見てもらいます。用語表現や画面レイアウトなどいろいろと細かい要望が出ますが、「それ直すにはXX万円かかりますが良いですか?」と質問して費用対効果で判断してもらいます。この過程でユーザーには、ITコストに対する認識を深めてもらう効果もあります。プロトタイプ作成は延べ期間で1週間、最終的な作りこみで、やはり1週間でした。全工程4週間で作業完了です。後は、使い込みながら、情報項目や画面、レポーティング機能を整理していけばよいのです。それも、多少のPC経験さえあればユーザー部の人が対応できます。

かつては数ヶ月を要していた要件定義や論理設計をこの手法で行い、実装の段階で大掛かりなCRMツールを使うという方法も有効でしょう。開発期間の30%を占める要件定義を大幅に短縮できますし、実装段階での手戻りを減らせます。

ASPを使うことの限界は既存システムとの連動が出来ないこと(技術的には可能でも、経済合理性に欠けるため)です。相当の手間暇を要しますが、既存データの取り込みにはCSVなどで対応する必要が出ます。一般的には、ASPに登録したデータのダウンロードにはベンダーの許可・サポートを有料で受けなくてはならないことにも注意が必要です。また、最も重要な顧客情報を外部に蓄積することで、ベンダーの営業政策変更や事業継続性から大きな影響を受ける可能性も考慮する必要があります。

salesforce.comOracle 8を使用しており、データのダウンロードもユーザーの自由にしているようです。とにかく制約が極めて少ない上に、通常IT部門が行なうべき作業は全てサポートしています。自社で大規模なCRMを導入する場合に比べれば、稼動後に必要な保守費用の範囲内で数百人の営業担当者が使えることは魅力的でしょう。

難点を指摘するとすれば、

@ 全てがWebベースなので、顧客情報流出の防止策を組み込む必要が出る場合がある。

A   キーエンティティについては、定義や表現の変更不可のものがある。ユーザーの割り切りが必要となる。ただし、このような些細な点に拘るようでは、もともとCRMを使いこなせないと思いますが。