金融系IT関連会社 (三井住友がIT部門を分離)

日経新聞3月15日号によれば、三井住友グループは、傘下の銀行、リース、カード会社のシステム部門を分離の上、日本総研に統合する予定とのことです。移管業務は基幹系、国際系、市場系など全ての業務に関する企画・開発・運用という全面的なものです。4月から500人の技術者を出向させ、センターも三ヶ所(現在は五ヶ所)に集約する計画です。この結果、年間90億円程度の経費削減が可能になるそうです。

日本総研は、売上高900億円程度で営業利益率も10%以上と、我が国システムプロバイダーとしては、健全で高い業績を誇っています。現在の社員数は2500人前後ですが、これに500人が600億円の持参金をもって合流しますので、大変な事業拡大とも言えます。

日本のシステムプロバイダー市場は、富士通、日立、NEC、IBM、NTTデータの5社が寡占的なシェアを抑えています。ハード中心時代の名残です。金融業界では、これら5社の支配力が更に強い状況です。少しは透明で公正な市場原理・競争原理を増さないと、金融界そのもののIT競争力が劣化するというのが、かねてから私の不安であります。

三井住友FGの今回の組織再編は、ベンダーに対するバーゲニング・パワーを強める効果が期待できるでしょう。更に、集中化による経費削減効果のみでなく、人材強化によるITケイパビリティ向上も期待できます。是非とも、金融ITを支える新勢力になって欲しいものです。

懸念されることも幾つかあります。

@ 総研というシンクタンクは、どこもリサーチ、IT,コンサルの三つの組織が微妙なバランスで運営されています。率直に言うと、組織文化、人事制度、ビジネス・モデル全てが異なります。ここに、親会社から大量の要員と売上高が合流するとバランスが急速に崩れます。マイナスに働くと、業績を大きく傷つけることが多いのがこれまでのケースです。

A 金融系IT会社は実質的にどこも赤字です。市場水準とかけ離れた賃金体系、品質重視による開発コスト・期間の上方硬直、親会社依存の営業体制などが原因です。メガバンクといえども、しばらくはIT予算を縮小する時期が続くでしょう。コスト削減と新規分野開拓の時間競争となります。

B 金融業務におけるITの重要性は更に高まります。FGとしてはIT戦略を、日本総研に100%依存する危険を避け、競争原理を導入しつつも日本総研をITラストリゾートと位置付けるでしょう。日本総研としては、ITベースの新しい金融グループを創業するくらいの意識で事業展開する必要があります。つまり、親会社グループをITで牽引するくらいでないと、見放されることになります。

C 今後のIT利用やベンダー戦略には急激な変化が起こるでしょう。ハードでは利益が出ないことは衆知ですが、SIやアウトソーシングにも限界が見えてきました。旧来のビジネス・モデルでは長期的な存続は無理です。国産コンピュータ・ベンダーの現状が証明しています。IBMが提唱するオンデマンド・コンピューティングやソフト・ベンダーのビジネス・プロトコル標準を基盤とした業務パッケージやASPなどが普及するでしょう。ITベンダーとしても、ユーザー企業としても分岐点にさしかかっています。今回の分離統合によって、新しいビジョンを描けるのか?それとも旧来ビジネス・モデルの追求で、短期的なコスト削減効果だけで終わるのか?

私はこれまで、数多くの金融系IT関連会社を見てきました。共通する最大の欠陥は、ITビジネスを理解した経営者がいないことです。銀行での経験や制度を前提とするなら、銀行内部のIT部門の方が合理的です。また、日本の金融という狭い視点で考えてしまうと、ITというグローバル・ビジネスに生存することはできません。

新生日本総研には、優秀な人材と収益源の追加が行なわれます。草食恐竜化した既存大手ベンダーの模倣ではなく、新しいビジネス・モデルを追及して、他の金融機関にベスト・プラクティスを示して欲しいと期待します。