日経 13/10/11

口座情報集約サービス(アグリゲーション・サービス)

日経(平成13年10月11日号)によれば、全銀協は、ネット上で複数の金融機関の口座情報を集約するサービスを容認するという。顧客の委任を受けたサービス業者が、金融機関の合意を得ずに情報を取り出すことに金融機関の反発が強かったようである。一般的には顧客より預かった暗証番号等で顧客になりすまして情報照会をするスクリーン・スクレーピングという技術が使われる。金融側としては、暗証番号を他人に教えてはならないという取引規約を根拠にサービスの停止を希望したようだが、協会は顧客の委任を受けており、法的には拒絶理由がないと判断したとのことである。協会が以前とは異なり、顧客視点でものを考えるようになったことを歓迎するとともに、このような問題を協会で検討するという業界の体質が変わっていないことに驚きを感じる。下手にこじれると、独禁法関連の騒動になりかねない動きである。

昔、ある私鉄が他の鉄道会社と駅を一緒にすると顧客を奪われるとして、敢えて自社の駅を離したという。結果として周辺地域の発展すらも阻害したという事例がある。ネットワークは、本来オープン性を求めるものであり、移転コストの上昇による顧客囲い込みとは性質を異にする。オープンにし、他との連結を推進し、市場規模を拡大することにネットワーク本来の価値がある。ネット上で、付加価値を提供して顧客ロイヤリテイを確保するのは、別次元のテーマである。ネットを使って、移行障壁を作ろうというのは、他に差別化の手段を持たない弱者の論理とも言える。

当社の調査では、インターネット・バンキング利用者の38.5%は、複数銀行のネット・サービスに加入している。日本人は一人平均で銀行口座を4件程度保有し、目的によって使い分けている。アグリゲーション・サービス利用者は、現在1%程度であるが、今後増加するのは間違いない。フアームバンキング開始直後に、マルチバンク・レポートを要求されたのと同じことである。

現在、ネットでアグリゲーションを提供する業者は、予定を含めて4社である。今後は、金融機関自らが、このサービスに参入してこよう。但し、複数口座の取引情報を集約する程度では、差別化にはならないし、顧客もさしたる料金は払うまい。また、自分の金融資産状況を他人のシステムの中に保存することへの違和感・不安という問題も大きい。自分の保有するデバイスの中に保管するのが自然であろう。つまりPC・PDAにアグリゲーション・ソフトを搭載するニーズが高まる。そのソフトには、単なる口座情報集約機能だけでなく、市場情報受信・シミュレーション・予約処理・プログラム取引などの機能が付加されるだろう。金融機関がどう考えようと、顧客の側の高度化は進む。アグリゲーション程度のことで、腰が引けるようでは金融機関がデジタル・デバイドの敗者となりかねない。

金融機関としては、CMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)で対抗するしかあるまい。CMSでは、銀行だけではなく必要とされる他の金融関連及び付随機能の商品・情報を網羅する必要がある。その際には、ネット・アグリゲーション・サービスや各種ポータルが好都合な部品となるだろう。これらの新規サービス・プロバイダーとオープンに協業していくことが、銀行業界の革新と発展につながると考えている。