BPOサービス (証券事務アウトソーシング)

日経金融新聞1月10日号に日米の証券事務BPOに関する情報が二つ掲載されました。

一つは、パーシングをBONYが買収するというニュースです。パーシング社は日本では余り知られていませんが、米国で証券会社850のクリアリング業務を受託する大手BPOサービサーです。数年前にクレデイ・スイスに買収されましたが、300名(約10年ほど前の記憶で定かではありませんが)の社員で、ITを活用した極めて効率的な業務処理で有名でした。効率の高さを支えていたのが、クリアリング業務とIT技能の双方を有するプロフエッショナル集団です。この会社のことを知った時に感じたことは、「金融機関は、ITに関して企画・業務設計・プログラム開発・運用を分離しすぎた。生産性のキーは、パーシングのように業務とITを一体化させることだ。」ということでした。

BONYの買収価格は20億ドルだそうです。米国債の決済業務No.1のBONYは、ふた昔前はNYを代表する商業銀行の一つでしたが、不祥事や経営の失敗から今日では、国債デイリーング業務に特化して生き残っています。特に国債クリアリングやカストデイでは、強みを発揮しています。最近のクレデイの業績低迷を受けて、買収交渉が成立したのでしょう。

強調したいことは、一見目立たない後方業務に金融のコア・コンピタンスがあり、充分なビジネス・チャンスがあるということです。日本でも、投資家や資金需給者を顧客とするビジネスだけでなく、他の金融機関の業務を受託するということが益々増加することでしょう。ITベンダーには業務の専門知識はありません。金融機関に業務知識とIT技能を併せ持つ部門があれば、それは大きな収益源となり得るでしょう。一般に、ITスキルよりも業務知識の方が希少価値が高いのです。

二つ目のニュースは、資産管理サービス信託銀行(TCSB)が、機関投資家向けに有価証券の保管・決済、仕分け、時価評価など管理業務のBPOサービスを開始したというものです。TCSBは、みずほ信託を筆頭株主(54%出資)として、第一生命・朝日生命・安田生命・富国生命によって出資された資産管理銀行です。マスタートラストへの新規参入を目的とした、大和銀行・住友信託による日本トラステイサービス信託銀行、日生・三菱信託・UFJ・明治生命・ドイツ銀行による日本マスタートラスト信託銀行(MTBJ)に比べて、設立が遅れたこともあり、マスタートラスト業務以外にも証券管理やカストデイ、401k資産管理をも事業内容としています。今回は資産管理業務のBPOを前面に打ち出してきたということになります。

マスタートラストは、理論的には高い成長性が期待できる事業ですが、制度対応が遅れていることや、経済合理性のみで一社に取引を集中できない日本的慣行もあって普及が遅れています。TCSBは、マスタートラストでドミナントになる可能性が低いため、逆に周辺業務を強化する戦略を取れたとも言えましょう。MTBJも昨年5月に、証券管理業務サービスへの参入を発表しています。

これからの金融業務は高度化・多様化が進むに連れて機能がアンバウンドルされて、業界構造の水平化が進んでいくことは間違いありません。一社で全ての業務分野に一流であり続けることは不可能となります。その時にITの技術水準のみでは継続的な優位性を確保することは無理です。技術は余りに早く変化するからです。変化の少ない業務、特に、現在ローテクと言われる分野こそが、最も収益性と市場規模を期待できる分野でしょう。

金融機関の経営者は、いたずらにIT至上のマスコミ受けするサービスばかりに投資せずに、自社の保有する本当に強い機能と資源を見直して、金融に関わる事業機会をゼロサムで考え直すべきでしょう。規制を理由として参入できない場合は、MBOのような形で別会社化すれば良いでしょう。従業員削減とBPO活用によって、充分な合理化効果が期待できます。会社にとっても、従業員にとっても有益な話の筈です。該当部門の従業員が自信ないと言うのであれば、それは市場価値のない部門であることが明白となります。将来、規制緩和で金融機関自身が事業化できるようになれば、その時には買収するか、出資すれば良いでしょう。金融機関も従業員も、会社の名前や歴史というしがらみに拘っていられる時代ではありません。企業の寿命は、個人の就業期間よりも、益々短くなっているのですから。