会社分割 (埼玉りそな銀のシステム分離)

あさひ銀行によれば、3月に分離設立が予定されている埼玉りそな銀行用の基幹システム再編を完了したとのことです。日経新聞1月7日号の記事です。

以前にも当コラムで触れましたが、合併に伴うシステム統合と同様に会社分割に伴うシステム分割も大変な作業となります。基本的には、現行システムと同じものを、少なくとも論理的に、もう一つ作ることになります。全部コピーで良いわけではなく、最も触りたくないコード体系を全面的に再編成する必要があります。銀行コード、店番、口座番号が変わることで、通帳・カードの再発行やATM・窓口端末制御の変更が必要となります。総振・給振・口振データの仕訳けも必要となります。まさに統合の際と同様な修正作業が必要です。

システムの移行としては、ATM/窓口端末、ネットワーク、アプリケーション、データベースを物理的に分離することになりますが、データベースの分離が大変でしょう。取引全体を埼玉りそなに移す顧客もあれば、りそな本体との重複取引を続ける顧客もあるでしょう。取引情報は口座別で再配置すればよいですが、基本情報や属性情報は顧客毎に判断する必要があります。同じグループなのですから、顧客情報は全体で一本とすれば良いではないかとも思いますが、個人情報のみならず、企業顧客の情報すらも異企業間での共有は規制されています。昨今のように、マネロン対策として本人確認情報の厳密なチェック・保管を義務付けられますと、複数の証拠書類を受け取る必要も出てくるでしょう。顧客にとっても大きな負担の発生するケースも出てくると思います。

りそなグループは、昨年の4月にグループ傘下の体制を決定しました。つまり、今回のシステム分割の準備期間は、最大で9ヶ月ということになります。多少は時間的なゆとりがあったと思いますが、順調に、かつ、予定通りに準備が完了したということでしょう。担当者の苦労の割には、新聞報道は小さなものです。システムというのは、うまくいって当り前。失敗すれば、完膚なきまで、叩かれます。当然と言いますか、気の毒と言いますか。

銀行の広報部門とマスコミとの関係の良し悪しが、記事の扱いに歴然と出てきます。

りそなグループのITプロセス管理は、極めて明快です。まずは、基本方針を定めて、些少なことには目をつむります。決定が早いのと、決めたことはブレません。あさひグループは、もともと細かい検討を好む傾向がありましたが、大和グループの方法を参考にしたのか、大きな案件が目白押しなので、細かい検討を行なっている時間がなかったということでしょうか?

私は、大和銀行がアウトソーシングに踏み切った時に、「戻れぬ川を渡ってしまった。ITケイパビリティーを失ってしまうに違いない。」と危惧したものです。しかし、その後の近畿銀行や大阪銀行、奈良銀行、信託分離などの再編成では、大過なくシステム対応を済ませています。ITガバナンスがしっかりしている証です。メガ・バンクのようにIT部門が巨大化しすぎておらず、分業化も極端でないことも幸いしているのでしょう。基本となる戦略が一元化されて、ビジネス・インフラと適合していれば、通帳やカードの仕様、事務処理手続きの若干の相違など大きな問題ではありません。それこそ「実害はない」と言えます。銀行やそれを取り巻く人々が、装飾にこだわりすぎているのでしょう。

一昔前、米国のリージョナルバンクでは、ワコビアとバンクワンが注目されていました。両行ともに、地域特化した複数の地域銀行を持ち株会社の傘下に収めて急成長しました。ITでは、ワコビアが本部主導型、バンクワンが傘下銀行主体型と両極端でした。りそなを見ますと、バンクワンのITガバナンス方式に類似しています。各地域銀行が独自性と密着性を活かして地域シェアを高め、一方では、持ち株会社が新商品対応や共有資産の有効利用を図っていけば、地域経済に不可欠で健全な銀行グループとなることでしょう。