5地銀、汎用システム共用 (横浜銀など24年に移行)

日経新聞令和3年4月1日付記事です。NTTデータ社の地銀共同オンラインMEJAR参加5行が基幹システムをオープン系に切り替える。24年1月にLINUXで稼動させ、30年をめどにクラウド化する案もあるとします。NTTデータはBesta共同やSTELLA CUBEへの展開を念頭においていると思われるといった内容です。地銀のシステム経費は年数十億円で全体の3割を占め、対預金残高のシステム経費率は、0.18%と信金の0.12%や信組の0.11%を大きく上回って効率性に問題があるが、オープン化することで、ベンダーロックインを避けながら経費削減とシステムの柔軟性を確保したい。「現行とほぼ同じプログラム言語を使うので、移行費用を抑えながら安定的に切り替えられる」と横浜銀ICT推進部長の説明も紹介しています。

記者は、バンキング・オンラインやオープン系を理解していないようです。この記事を読む時には注意が必要です。オープン系を汎用機と称したり、SBI現行が開発予定の共同システムをNTTデータの競合としたり、意図してかしないでか、読者をミスリードする記述が多い。困ったものです。ところで、MEJARのホストは、富士通製の汎用機です。(参加地銀は、ももともが富士通で自営オンラインでした。) それを今回は、RedHatのEnterprise Linuxにします。言語は恐らくCOBOLでしょう。富士通COBOLからNet COBOLに変えるのでしょう。COBOLは数世代前の言語だと思われていますが、Web環境でも日々進化しています。

記事はベンダーロックインから開放されるかのように書いていますが、確かに富士通製サーバーでなくとも、RedHatLinuxが動けばよいのですからハードベンダーからの自由度は増します。しかし、所詮はSIerというかOutsourcerであるNTTデータに丸投げですからロックイン解除にはなりません。

このプロジェクトは、ミッションクリティカルな銀行基幹系システムのレガシーマイグレーションとなります。最近ではモダナイゼーションなどと呼ばれています。バッチならまだしも、リアルタイム・トランザクション処理のレガマイは一筋縄ではいきません。様々な移行ツールがありますが、自動移行率が80%あれば良いほうです。中には90%というケースもありますが。問題は、ツールで移行できない残り10%とか20%のプログラムです。オンライン・プログラムが2000万ステップあるとして、200万〜400万ステップ(数千本のプログラムに相当するでしょう。)は、業務とプログラミングに精通した技術者による精緻な分析と再設計が必要です。その時に、BPRなどと称して業務仕様を変更しようものなら、収集がつかなくなります。

ですから、大規模システムの場合は、まずは、言語を含めたシステム環境基盤の変更だけに留めることが多い。それでも、移行対象規模によっては数百億円になるのが、これまでの相場です。それも殆どが中国などのオフショアとなります。つまり、稼動後、戻ってきたプログラムやドキュメントは自分では管理保守できないことになりがちです。恐ろしいことです。

MEJARは、2010年1月に横浜銀行で稼動して11年になります。その間、経営環境も業務手順も大きく変わり続けています。BPRせずにインフラ更新だけとはいかないでしょう。そんな時間と資金の余裕はないはずです。地銀にもNTTデータにも難しい選択だったと同情します。MEJAR5行は、2019年5月からNTTデータとオープン系移行の検討を進めてきました。どんな調査や研究をしてきたかは全く知りませんが、他のケースで筆者が見聞きした事例では、オープン系の是非よりも移行の確実性が肝だということです。その確認と整理ができていて、対応できる態勢が用意できるのか?やはり、NTTデータ頼りとならざるをえないでしょう。つまり、ベンダーロックインが更に進むともいえます。

NTTデータとしては、難しい案件を抱え込むことになります。パートナーが日立であれば、静岡銀などでの経験が役立ちますが、MEJARだと富士通です。同社に大手銀行のレガマイ経験があるとは聞いていません。サーバーベンダーと開発パートナーをいっそ日立などに変えたらと思いますが、地銀5行が嫌がるでしょう。ここらへんに、真のレガシー問題があります。

NTTデータの地銀共同は、MEJARの他にいわゆるBesta共同(2004年京都銀で稼動)とSTELLA CUBE(2011年10月東京都民銀で稼動)などがあります。総ユーザー地銀数は30を超えます。メディアは最大のシェアだとしますが、大規模銀だけでなく中小地銀も多いので資産規模からするとIBM系地銀共同に劣ります。つまり、NTTデータにとって一行あたりの売上げは比較的小さい。そこに、地銀共同は高いという行政やメディアの圧力がかかっています。

ユーザー地銀からは、次世代はどうするのだと質問が来ているでしょう。机上で整理した次世代フレームワークを提示すれば、そんなきれいごとはどうでも良いから、何がよくなって何時動くんだ?うちの移行はどうなるんだ?費用は?等々の質問が続くでしょう。まだ、何も決まってないし、作ってもいないのですから、答えようがありません。逆に銀行さんはどうしたいのです?と聞きたい。するとそれはベンダーが考えろ・・とくる。ガバナンスも何もあったものではありません。

MEJARの次期システム開発以上にNTTデータにとって悩ましいのが収益管理でしょう。Bestaに最近加入したのが山陰合同で2020年1月、STELLA CUBEが名古屋銀で2021年1月です。これらの銀行には稼動後10年間はサービス提供を約束していると聞きます。それは当然でしょう。すると、新MEJARが希望通りに2024年に稼動したとして、それに順次、BestaとSUTELLA CUBEの地銀を移行させるとします。何年かかるでしょう。少なくとも山陰合同と名古屋銀の契約満了の2031年頃までは現共同を動かし続けなくてはならない。恐らくは、そのはるか先の話となるでしょう。並の企業なら存続が危なくなります、例えば10行のユーザーが1行減っても運用費用はさして減りません。その間、運用費は新旧で重なり、収入は減ります。この収支予測をすると寒気がしそうです。それとも移行プロジェクトで収支を確保しようとするのでしょうか?それでは、ユーザーが減る一方となります。これに近い経験を、筆者も30年ほど前にしました。ユーザーロックインを避けないと我が身が危ないと痛感したものです。

 

                         (令和3年4月7日 島田 直貴)