高齢者のSubMEサービス実証実験 (日本総研など)


金融経済新聞の令和3年2月15日付記事です。日本総研が広島銀行や三井住友銀行などの協力を得てサブミー・サービスの実証実験を行なっているとのことです。サブミーとは、もう一人の自分という意味合いで、それをデジタル化することで個人のデジタル・ツィン化とも言われるそうです。筆者には初耳の概念です。この実証実験では、高齢者のタブレットを配り、毎日朝夕2回の対話プログラムを実施します。主催側のオペレータが、対象者に価値観や生活のメリハリに繋がるような話題を振り、高齢者が自分の希望や疑問・質問、やりたいことなどを入力してコミュニケーションする。お金、身じまい、住まい、健康などの学習コンテンツも配信する。この対話、学習、共有・相談の各サービスを一体化してサブスクモデルで提供しようとする試みです。ポイントは、この対話などの内容をサブミーに蓄積して、個々人の行動様式を把握することで、対象者のQOLを向上させる支援が可能となることです。

年寄り相手というと、見守りと認知症対策、相続しか頭に浮かばない金融機関に筆者は強い不満を抱いています。(筆者自身が団塊世代なので。)ですから、このテーマになると銀行マンに向かって「あんたらは、いつも俺達を殺すことしか考えてない。」と噛みついてきました。そこで、「同世代の仲間達と団塊世代による団塊世代の為のジェロントロジー」をテーマとするサークルを創ったのです。さて、皆の希望や願望や悩みをパターン化できないかと発言を求めると、20人近くが勝手放題を言いだし、際限がありません。事務局はまとめる方向付けしたいのですが、参加者個人は他人の話を聞いて自分との差異を並べ出します。キリもなく話は拡がり、飛びます。時間切れとなって、次回はもう少し整理して集まりましょうとガイドします。ところが、次回となると、田舎の老親が亡くなったとか、40代の息子に末期ガンが見つかったとか、とにかく周辺環境の変化が激しい。下手にセグメント化しても個々人の時々の状況やニーズが変化する。この変化は60歳以前のスピードとは比較にならないほど速いし複雑なことに気付きました。では、ワンツーワンしかないのか?ある程度のパターン化というか、SOA化ができないだろうかというのが、ここ数年、筆者の調査テーマの一つになっていました。

2月19日付ニッキンに「中国銀 生活の悩みをトータル支援」という記事がありました。これは従来の金融関連相談サービスを大きく拡充して、相続・終活、不動産、くらし、介護の4つのカテゴリー毎に6〜12のサブメニューがあります。現在は合計で33のサブメニューです。例えば、墓じまい、屋根・外壁の修理、庭木の剪定・除草、墓参り代行などです。各メニューの具体的な相談は中銀の店舗でライフプランアドバイザーが受けます。より専門的、具体的な相談になると中銀の選定したパートナー企業が加わります。このサービスは何度でも無料とのことで、高齢者としては銀行の支店に行った際に悩み事を話しながら、解決の糸口を見つけることができるでしょう。銀行としてもSDGs活動の目玉というか、場合によってはプラットフォーム化できることになります。

先程、高齢者のニーズは千差万別で大変な頻度とスピードで変化すると書きました。(とにかく高齢化に伴って時間が速くなるのです。)その上に高齢者は我儘で自分の都合を最優先しがちです。相談に応じる側は、相当に気を使わなければなりませんし、少し外せば、即刻、相談相手から外されてしまいます。個々の対象者の超短期、短期、長期のニーズと価値観や趣味嗜好に沿ったソリューションをいかにマッチングさせるかが、このサービスの成功要因です。ソリューションの品ぞろえやサービス品質を少しでも多く用意することと、利用者のニーズと意思決定パターンを効果的に組み合わせる必要があります。そう考えると、サブミーによる行動様式(意思決定様式と言っても良いでしょう。)分析は意味の深い作業となります。自分で理解して合理的に判断するパターンの人、他人の評価やメディアの評判を優先する人、決めた筈なのにすぐ迷いだす人、決めたら状況が変わっても変更しない人などといったパターン化(といっても無限にありそうです。)するとすれば、統計的な分析も良いですが、できれば非記号化データも扱える機会学習が有効に思えます。サブミーがAIを使っているかどうかは知りませんが。

コロナ禍の影響で世界的に金融資産格差が広がっています。日本でもそうです。増える層は個人金融資産1900兆円の60%以上を保有しながら、生活支出の少ない高齢者層ということです。これは、かつての個人から企業活動へというマネーフローの目詰まりが増幅することを意味します。急いで高齢者保有の不稼働金融資産を若年個人やNGO、新興企業などへという流れに変える必要があります。このルートは国内だけでは、量的に全く不充分ですが、起爆剤にはなるでしょう。単純な因果論的政策では実現は無理です。全国各地でボトムアップ型の多発的な運動にしなくてはならないでしょう。それはグローバルスタンダードの資本主義ではなく、日本的なローカルスタンダードとしての社会体制の変革になるかも知れません。金融機関がやるか?若い人のグループ活動でできるか?役所がやるか?消去法で考えれば金融機関しか主体的役割を担える事業体はないと思うのですが。エコシステムとかオープンイノベーションも良いのですが、まずは、主体者が出てこないと何も始まりません。金融界にその気になるところがあるでしょうか?または、誰かがその気にさせるのか?

 

                          (令和3年2月24日 島田 直貴)