みんなの銀行が事業方針を発表(BaaSもビジネスの柱)


みんなの銀行が令和3年1月14日に5月開業予定の事業方針を発表しました。どういう訳か日経新聞など全国紙での報道は見当たらず、ニッキンが1月22日号、金融経済新聞が1月25日号で大きな記事を掲載していました。事業開始3年で全国の若年層対象にスマホ完結サービスで、口座数120万、預金2200億円、融資800億円を目指す。創業費用として130億円を見込むが3年で黒字化を図るとのことです。

システムは1月4日に稼動しています。当初のサービスは、個人向け口座開設と振込み、セブン銀ATM経由での入出金、バーチャルデビットカードで、その後、アカウント・アグリゲーション、収支管理、消費者ローン、資産運用、リコメンデーション機能などを追加する予定です。サブスク型の手数料体系を想定しているようです。

3年で黒字化としますが、単年度黒字のことでしょう。創業費が130億円だそうですが、システム開発に100億円以上を要したと聞いています。Googleクラウドを使いますので、開発費の殆どはソフト開発費でしょう。前述のアプリに100億円とは随分とふんだんに金を使ったものです。その償却費と開業後の運用費、システム以外の人件費や事務所費用などを合わせると軽く年30億円以上の経費が見込まれます。それを単クロ化する為には30億円以上の収入が必要ですが、収入源は個人ローンなどの金利収入だとします。800億円の融資から30億の金利収入だとすると単純計算で3.75%のローン金利です。個人ローンとしては妥当な金利水準と言えるでしょう。

物理カードはコストがかかるので発行しないそうです。ニーズが強ければ有料で発行するとしますが。基本的にはスマホに様々なアプリをビルトインしてスーパーアプリ化を目指すようです。ジャイアント・キリング(大物食い、大番狂わせという意味か)を目指すとして、単に親銀行グループの補完が狙いではないと言います。

その有力なツールとしてBaaS事業を予定しています。同行の金融機能をAPI経由で非金融業者に提供するのです。既に約90社と検討しているそうです。ただし、BaaSからの利益貢献は殆ど期待しておらず、データビジネス化の手段と考えているようです。今回構築した勘定系システム「ゼロバンク・コア・ソリューション」を外販する計画ですが、既存の銀行ビジネスには使えない(アプリが少なすぎる)ので、海外からの進出を含めたスマホ・バンク事業者への提供に限られるでしょう。既存の銀行やネット専業銀行には迷惑な話となります。みんなの銀行からすれば、金融の先を見たビジネスを狙うとういうことなので、自社グループを含めた既存銀行とのカニバリズムなど気にしないということか。背景には、Bankingは残るがBankは消えるという考えがあるのかも知れません。

各種の報道やコメントを見ると、みんなの銀行のチャレンジに期待する声とそんな理想的なことを言ってもねという声が入り混じっています。そんなに単純な話なら、誰でもできそうです。膨大な顧客とその取引情報を持っている企業グループが貸金業登録して、みんなの銀行からローン・アプリをBaaSで借りて、参入すれば良い。早晩、供給過多となって金利が崩れ、下手すると本業すら危うくなるかも知れません。みんなの銀行がそんなことに気付かない筈がありません。結局は金融の先とは何か、バンキング・サービスに人々が求めるものは何かの勝負になるでしょう。

BaaSは欧米でも普及しだしています。これまでは小規模銀行が使っていましたが、昨年12月にコミュニティバンクのCoastalFinancial(資産規模2千億円)が自社開発したBaaSを他のコミュニティバンクに販売を開始したそうです。つまり、銀行顧客ではなく、同業他社を顧客にするということです。日本でも金融庁は銀行にシステム・ソリューションの販売を認めるようになっています。昔、セブン銀が参入した時に、儲かる筈がないと言っていたら、猛烈な勢いでATMを増やして、それを他の銀行に提供しました。ビジネスモデル・チェンジというか、対象市場の変更でした。まさか、これほど儲かるようになるとは思いませんでした。将来は判りませんが、現時点ではサクセス・ストーリーであることに間違いありません。

セブン銀のATMビジネスが何故成功したのか、それと今言われるBaaSと何が違って何が同じかをよくよく考える必要があります。メディアはBaaSを少し、楽観的というか、表層的に解釈しているように思えます。最近の流行り言葉にSDGs経営があります。お客の集合体をニーズで見るのか、デジタルネイティブという属性で見るか、地域で見るか?確実な答えがあるわけではありませんから、結局は撤退条件を決めておいた上で、チャレンジしてみるしかない。最終的に儲かるのがITベンダーだけだとすれば、デジタルバンクを創る苦労をするより、デジタル・バンク・ソリューションを作って外販した方が確実に儲かる話となります。ゴールドラッシュで儲けたのは、金堀人ではなく、その人達に金ダライを打った連中という昔話もあります。

 

                                     (令和3年1月27日 島田 直貴)