鹿児島銀行、次世代テレビで窓口業務試験運用


 金融経済新聞の令和3年1月11日付記事です。鹿児島銀がNCRの金融向け次世代テレビ窓口ソリューションを東京支店で試験運用するとのことです。リモート取引と対面取引の組合せは金融機関共通の悩みです。相談業務のデジタル化といっても、チャットでは面倒だし、ビデオ会議では真意が伝わらない。他人とのコミュニケーションにはラポールという気持ちの通じ合いがないと、下手すると逆効果となります。ビデオ会議での顧客接触ではベテランの優秀なセールスマンよりも、新人の担当直入な応対のほうが、数段に効果的だとの調査もあります。ベテランはどうしてもラポール構築を目的に、世間話から入ってしまう。ところがリモートで接触する顧客はそんなコミュニケーションを求めていないからだと言います。つまり、顔が見えても、ただ、それだけのことなのでしょう。であれば銀行側は顧客の好みに合った担当者を配置すれば良い。しかし、顔と話し方だけでは、長くて深い付き合いになりそうもありません。

金融機関で店などにテレビ窓口を設置するところは多いのですが、成功したという話を聞きません。筆者が出入りする都心店舗でテレビを設置する支店が多くありますが、顧客が使っている光景を見たことがありません。顧客はそんな対面式のコミュニケーションを求めていないのか?または、求める顧客は極めて限定されるのか?であれば、対面とリモート・チャネルの融合などと悩む必要はない。しかし、それではトランザクション処理ばかりとなり、金融機関はコモディティ化一途となってしまいます。

NCRの次世代テレビは、Interactive Teller Essentialsという製品で、遠隔地の窓口担当者と支店に設置した23インチの大型モニターを通じて会話します。顧客側にはカメラやタブレットなどが設置されており、窓口担当者は顧客の操作を見ながら、入力方法や記入内容をガイダンスするということです。正直な感想ですが、これのどこが次世代なのか?鹿銀の広報担当者は、店舗での応対に比べて遜色ないと言います。鹿銀東京支店は筆者の近い所にありますので、是非、次世代と呼ぶ理由を確認しに行こうと思っています。

同じ金融経済新聞に筆者が愛読する「海外銀行サービスはいま」と言う連載があります。330回という長期連載です。海外のメディア等から日本でも参考になりそうなフィンテックやDX化のニュースを紹介しています。1月11日付の内容は、米銀大手行が試行するデジタルプラットフォームとしての、ビデオ会議チャネルです。JPモルガン・チェースとシティの例を紹介しています。もともと、米国では広大な土地ということから、銀行店舗網は広域低密度です。つまり顧客にとってアクセスコストがとても高い。ですから、顧客はリモート・チャネルに慣れていますし、銀行員との折衝に予約制がほぼ当り前です。その前提で考える必要があります。

JPはFINNというチャレンジャーバンクを2018年に設立したものの、銀行本体との差別化が出来ずに、翌2019年6月にこの銀行を閉鎖してしまいました。ところが、FINN設立当時からビデオ・バンキングの試行を続けているのだそうです。理由は、顧客はトランザクション処理だけでなく、ガイダンスを求めているからということです。銀行は顧客に電話でセールス(いわゆるインサイド・セールス)し、口座開設後の各種取引や折衝は、電話とチャット、そしてビデオ会議で行なうそうです。現在、24時間サービスを150人体制で提供している。ここで、余計かもしれないインサイド・セールスと言ったのは、ただの電話セールスでは効果がなく、顧客に応じた折衝スキルが銀行側担当者に不可欠だと言いたかっただけです。

シティバンクでは、2019年に一部支店でビデオ・バンキングの試行を開始したそうです。(筆者の記憶では十数年前にTVバンキングを試行していました。)顧客との事務的なコミュニケーションを越えて、重要な関係を築くことができると確認したそうです。コロナ騒ぎを受けて、昨年10月から50支店、200人の体制で推進プロジェクトを立ち上げました。顧客とはZoomでコミュニケートします。遠からず、Zoomに独自機能を開発搭載することでしょう。ここでも、ハード機能だけでなく、様々な経験、ノウハウ、技術の組合せが必要になります。わが国銀行は、少々、ハードに依存しすぎです。ハードを重視するとしても、自社のアイデア機能をベンダーに作らせるか、自分で作るべきだと思います。特注品は高いというベンダーの言い草を信じすぎです。高くなる原因はマスプロだからです。結果、試行錯誤をしなくなる。米国では、いろいろとチャレンジして失敗すれば、即、撤退。その時に何を学んで次に活かすかが、最も重要との考え方です。

筆者は、対面営業の必要性を強く感じていますが、営業担当者の効率改善も重要だと思っています。効率アップは、顧客との接触時間を増やし、折衝目的の成功率がKPIとなるでしょう。ビデオ等を使ったインサイドセースルス(この専門職があっても良い。)では、対顧客折衝の前捌きと折衝スキルがコアとなります。その際に、ビデオ会議の準備や操作説明に時間を費やしていては何の意味もない。ようやく顧客とコミュニケーションできるとして、そこでラポールが繋がらず、セリングポイントを逃せば成果に繋がらない。対面営業というと、どうしても高齢者をイメージするようですが、そうとは限らない。世間話が重要な高齢者であれば傾聴スキルの高い担当者を据えれば良い。時間帯も休日、夜間などとなることも多いでしょう。銀行員に求められるスキルも働き方もどんどん変わります。伴って評価制度も変わります。DX化をデジタルデバイスの導入と考えると、とんでもない間違いを犯します。

 

                         (令和3年1月13日 島田 直貴)