地銀、ネット商談で海外販路拡大支援


日経新聞令和2年12月9日付記事です。山口FG3行、みちのく、沖縄、福邦、島根の7行が、コンサルのRCG社のオンライン商談システム「セーラス」を使って、中越など8カ国300社以上の売買情報とマッチングするサービスを開始するという内容です。RCG社がSBI系企業かと思ったのですが、そうではなく、みちのく銀等で働いていた個人が創業した会社だそうです。国内の市場が停滞する中、地方企業にとって海外市場は是非とも開拓したい。それを地域金融機関がサポートする。最も必要性の高い顧客支援サービスであり、地方創生事業です。

一般にオンラインマッチングは、実効性がとても低い。なぜなら、双方の開示する情報の信頼度に懸念がある。相手国企業との折衝に必要な言語、制度、社会的慣習など、知識経験不足もある。こうした問題に対して、RCG社は21人のコーディネータを各国に配置してマッチング支援するそうです。どんなスキル、経験を持つ人がコーディネータを務めるのかは知りませんが、こうした人材は海外勤務経験が長くて、現地に在住する退職者など、想像以上に多いのではないでしょうか?いろいろな失敗、成功を共有して日々進化するサービス・プラットフォームになることを期待します。

海外との取引支援を行なうマッチング・プラットフォームの創設に関するニュースが最近増えています。ニッキンの12月11日号には、信金中金が、東南アジア・台湾で最大のECサイト「ショッピー」(シンガポール)に法人取引先による日用品や雑貨などを出品販売を支援する計画だそうです。信金中金は、東京のビークルーズ社と提携して出品支援を行ないます。同社は、ショッピー向けに、商品情報の翻訳、配送、決済、顧客対応などのサービスを提供します。当面の対象国は、シンガポール、台湾、メレーシア、タイです。このサービスは年内に出品者を募集し、来年3月から販売を開始、順次、出品者や対象国を広げる計画だということです。

同じ発行日のニッキンで、ジェトロが、商談やピッチイベントを行なうプラットフォーム「J−Bridge」を来年2月に稼働させる計画だという記事もありました。既に国内企業380社が登録を希望しているそうです。まずは、ヘルスケア、モビリティ、小売、アグリテックの4分野から始めます。当面は、シンガポール、インド、インドネシア、イスラエルが対象国です。マッチングは国内外のジェトロ拠点に常駐する各分野の精通者が担うそうです。国内の連携金融機関は大手行や地域銀を想定しており、中堅企業などに遠隔商談の場を提供することを狙っているようです。

こうした様々なチャレンジを通じて越境ECが普及すると、国内の中小零細企業にも海外市場(販売先、仕入先)開拓のチャンスが広がります。共通な課題が貿易実務や資金決済となることは明らかです。日経新聞の12月10日号が、ブロックチェーンを使った貿易金融サービス「コントゥア」が10月にサービス開始したと報道していました。これは、3年ほど前に構想が発表され、HSBCやBNPパリバが中核となり、欧州の大手銀8行が創ったコンソーシアムが推進しています。現在は27行が参加し、31カ国で利用可能だそうです。貿易取引には煩雑な規制等制度対応があり、金融面でも複雑な手続と規制対応が求められます。まさに、ブロックチェーン技術が新サービス開発に効果を発揮しそうな業務分野です。わが国でも、NTTデータ社がみずほグループや大手企業と組んでサービス開発を進めつつあります。地域金融機関が規模の問題から、こうしたプラットフォームに参加できないとすれば、共同子会社(例えば地域商社の連合体)でコントゥアに参加しても良いでしょう。親密メガバンクに貿易金融を依存していると、地元取引先の支援に不都合が続くことになります。

越境ECは、地域金融機関の取引先支援、地域経済支援に強力なツールとなる可能性が高い。とはいえ、地域金融機関単独では、荷が重すぎる。とすると、越境ECプラットフォーマーと提携したり、ジェトロのような汎用プラットフォームと連携することになります。金融庁は高度化会社が扱える業務分野を大幅に緩和する制度変更を検討しています。自行にないスキル、技術、チャネルなどは外部を利用する。まさにオープン・イノベーションです。八方塞がりの経営環境下、短期で実現できる新規収益源が見えない。地域金融機関にとって、最も優先順位の高い新規分野ではないでしょうか?

 

                            (令和2年12月24日 島田 直貴)