三井住友銀、システムに500億円 (フィンテック連携へ大改修)


日経新聞令和2年11月12日付け記事です。記事ではグループ内外の連携強化を主目的として、24/365化も行う。その為にオープン系で連携基盤システムを構築し、それにデータ利活用のインフラ機能を持たせるとあります。2002年合併時の勘定系統合600億円以来の投資額ということです。

勘定系システムの全面刷新にしては投資額が少なすぎる。API基盤を造るには、贅沢しても50億円未満です。2016年のACOS更新とツィンセンター化では300億円強を投資しました。この時も、ハード入れ替えとツィン化だけで300億(当時は350億円と言われました。)はバカ高いと感じた覚えがあります。その稼動が2016年ですから、実際の機器設置は2014年頃から始めている筈です。つまり、今年2020年頃から、5、6台のMFは償却切れとなり、製品寿命の期限が見えてきます。前回更改の直後には、コストや保守運用の問題から、次回更改ではACOSは使わないとの声がSMBC関係者から聞こえてきました。ベンダー変更すれば、みずほほどではなくても5年はかかりますから、もう時間がないのにどうするのだろう?と他人事ながら心配していました。

日経記事では納得できないので、SMBCのプレスリリースを見てみましたが、やはり、投資額の過半は機器更改でそれにオープン系での連携基盤とAPI、無障害停止と保守作業の無停止化しか投資対象が見当たりません。以前から行内データを統合・連動して活用できないとの課題が言われていましたので、データレイク基盤も作るのであれば相応の費用が必要と思いましたが、そこまでの話ではないようです。2025年までの5年間で2万人月を予定していますので、全てを外注(銀行内部にはプログラム開発者は殆どいませんから、日本総研などグループ会社とNECなどへの外部委託になるでしょう。) すれば200億になります。であればハード、ソフト、DC関連ネットワークで300億といったところでしょうか。

同じ住友グループで同行勘定系ベンダーのNECがSMBCに合わせて、本プロジェクトの受注を発表しています。発表内容は銀行と念入りに調整している筈で、NECの構築する領域を説明しています。詳しくは、同社リリースをご覧いただくとして、4つの領域を明示しています。

@     後継ACOSをNOAH−7として開発し、連続稼動性強化、セキュリティ強化、オープン系とのシームレス連携、省電力・省スペース化を図る。

A     REST APIを使って勘定系との内外API基盤の構築。

B     勘定系の一部としてオープン系プラットフォームを構築し、階層型DBの勘定元帳をRDBに変換・複製する機能の開発。

C     開発プロセスをMF、オープン系で共通化し、DevOps等が可能な開発環境の高度化。

これを見ると、要は現在の勘定系で使えるものは再利用しながら、モダナイゼーションを図るということになります。これなら、5年500億円も理解できます。ただ、それだけでは、顧客サービス向上などが外部から見えないので、SMBCはAPIだのフィンテックだの並べて、判らなくしてしまったということか。ネット上では、SMBCのリリースをリファーするサイトは殆どなく、圧倒的にNECのリリースが参照されています。それだけNECのほうが説明に納得性があるということでしょう。

NECは13日に、AWSとの戦略的協業契約を締結したと発表しました。政府がITインフラにAWSを採用決定したので、官公庁に力を入れる同社としては尤もな提携です。どうせなら、SMBCのモダナイゼーションにAWSの利用を少しでも入れておけば、もっと素人にもわかりやすいSMBCの発表になったことでしょう。

筆者は、勘定系をクラウド化した方が良いと考えているわけではありません。特にMF勘定系であれば、オープン系に全面的に書き直すことがクラウド化の前提となるので、その費用、労力、時間、リスクを考えれば、とても投資効果を期待できません。ましてや、メガクラスになれば、パブリック・クラウド化は到底無理なので、プライベートクラウドかオンプレミスにせざるをえません。MFよりはるかに高いシステムになってしまうでしょう。ですから、MUFGが10年以上前から進めているように、勘定系の周辺システムを手始めに、勘定系アプリのうち、Web処理に向いたアプリから順次、オープン系に移行させておき、残るMFアプリはとことん使い倒す考え方のほうがはるかに合理的だと思っています。

ですから、現行勘定系の維持保守負担に喘ぐ銀行が、オープン化したいと相談にきても、「今、そんなことに金と人と時間をかけている時ですか?もっと優先すべきことはないですか?」と問いかけます。皆さん、「そうですよね。他に優先すべきことがたくさんあります。」と返してきます。問題は、現勘定系とWebオンライン(オープン系オンライン≒ネットバンキング・システム≒他システム/サービス連携システム)とのサービス連携が効率的に可能かとなります。まず、連携基盤の構築が必要ですが、勘定系アプリの修正も必要となるでしょう。この方法でデジタル化対応を進めているのが、MUFGやみずほですし、最近、注目されている伊予銀行などです。伊予銀はこの連携基盤を2年弱、費用も外部APIを含めて4、5億円(推定)で実施しています。安く抑えられるのは、ベンダーが連携基盤の機能を製品化しているからです。

SMBCの5年で500億円の追加投資は、はるかに高いですが、SMBCにとって、それほどの金額ではありません。現時点の年間IT 予算を10%弱追加するに過ぎません。ただし、それだけでは顧客価値が見えない。この間に新たなサービス展開に支障がでないかという懸念もある。今は、過去にない激変の時期です。インフラ整備だけをやっている訳にはいきません。5年で2万人月ですから、このプロジェクトには3、4百人を常時投入することになります。それも基盤技術の分野です。技術者の手当てが難しいと思います。システム全体を見渡せる天才的な技術者が何人かいれば良いのですが。わが国、金融IT課題の縮図のようなプロジェクトになりそうです。

 

(令和2年11月16日 島田 直貴)