群馬銀行がTSUBASAに加入(地銀の包括提携が進む)


令和2年11月10日付けの日経新聞が、金融欄で小さく報道していました。「群馬銀、地銀連携に加盟」との見出しで、12月11日付けでTSUBASAアライアンスに加入し、手始めにマネロン対策の共同実施を手始めに業務提携するとだけの内容です。この記者は地銀のことを全く判っていない、編集長も同じレベルなんだと思いつつ紙面をめくると、同紙の千葉版に「群馬銀 地銀広域連携に参加、経費削減、サービス充実」と深井頭取の記者会見での発言を紹介していました。

それによると、当面はTSUBASAアライアンス株式会社(TSUBASAアライアンス参加行の共同出資会社)に出資してマネロン対策の共同化やM&Aの情報交換プラットフォームへ参加する。2022年に更新時期を迎える基幹システムについてはTSUBASA共同を含めて検討するとのことです。群銀は資産規模が8.4兆円で地銀10位の大手です。TSUBASAアライアンス参加10行で総資産が72兆円ですから、そこに群馬銀が加わると80兆円を超えます。共同通信は、本件の報道をしながらSBIとの勢力争いが激化しそうだと書いていますが、規模が10倍以上も違います。メディアはSBIが絡むと大きく報道しますが、

TSUBASAの意味と影響力が判っていないのでしょう。

システム面でみると、もう一つ面白い観点が出てきます。地銀の富士通ユーザーは減る一方なのですが、最後の有力地銀ユーザーである群銀すら富士通を見限るのかということです。静岡、東邦、滋賀と毎年のように脱富士通の地銀が出てきますが、ついに群銀もか?という驚きです。富士通は、既存銀行から撤退して、デジタルバンクに特化したいように見えます。ただし、深井頭取がTSUBASA共同に参加したいと言っても、実務面で検討した結果がそうなるかはわかりません。

地銀同士のアライアンスは、勘定系の共同化で始まりました。それが、経営環境の悪化や地域経済再生支援の要望が強まると、地銀単独では規模やネットワーク効果に限界が明らかになりました。様々な組み合わせでの業務提携が増えています。しかし、実効性のあるアライアンスは数少ない。理由は、各行の期待するところと、実態が合わないことにあります。うまくいくケースは、例えばTSUBASAや四国アライアンスが代表的ですが、その要因はいくつかあります。

第一は経営トップの関与です。頻繁にトップ同士が交流し、電話などでも情報交換をします。そして、案件毎に適任者を派遣します。参加メンバー行のコミットメントの問題です。

第二は、やはり銀行文化があります。千葉銀は、首都圏の大手地銀で地銀協会長行になる銀行ですが、偉ぶらない。言動に乱暴な点もありますが、ざっくばらんな風土の現れなのです。若手行員でも頭取や役員に率直に意見を言います。また、地の利を活かして情報を集めて自分達で深堀する。それを提携先にも開示する。情報過疎にある多くの地銀にとっては誠にありがたい。やはり、日本橋に活動拠点を持つメリットは大きい。TSUBASAへの参加を検討する地銀は、半年とか一年くらいかけて、千葉銀などメンバー行と面談します。そこで、一緒にやれる体質か否かを互いに判断します。

第三は、具体的ソリューションに柔軟性があるかです。参加行の要望を最大公約数か最小公倍数で整理して、費用を按分負担する方法では、参加各行には常に不満が残る。それは議論では解決できません。まずは、案件毎にリーダー行が具体案を出す。それに、個別行ニーズをオプションとして追加する。または、カストマイズできるようにする。TSUBASA参加行はITを内製する力を持っている銀行ばかりです。丸投げしておきながら文句ばかり言うメンバーはいません。実際にはいろいろあるのでしょうが、メンバー行からの悲鳴は殆ど聞こえてきません。

つまるところ、リーダー行とメンバー行の意思疎通とソリューションの自由度が成功ポイントとなります。こうして見ると、群銀は現在のTSUBASAメンバー行とは少し違うような気がします。筆者が群馬出身なので、よく判るというか、心配しすぎというか。

10月28日に静岡銀行と山梨中央銀行が包括提携を発表しました。日経新聞は大きく報道して、「持続的成長へ」とか「100億円の効果めざす」と書きました。こちらも頭取級の会議体の下に役員級、部長級の分科会を10ほど設けるそうです。狙いは経費削減もありますが、収益増強が中心だそうで、まずは、金融商品仲介や仕組み金融などがテーマだそうです。山中銀にはメリットがありそうですが、静銀はノウハウの提供だけなのか?山梨に多い富裕個人や企業などへの販売が狙いなのか?

この静岡・山梨アライアンスでも、山中銀は、来年1月に稼動予定の静銀次世代勘定系の採用を検討するとしています。山中銀は昨年春に、ユニシスBankvisionの継続利用を決めて契約期間を延長したばかりです。数年後に静銀次世代への変更を検討するとして、その頃には技術も地銀の経営環境も全く変わっています。TSUBASAなどの共同勘定系は、数年後には次世代の開発中でしょうし、ひょっとすると稼動しているかも知れません。そもそも静銀と日立が山中銀に魅力的な価格を提示できるのか?当初計画を大きく超過した開発費を取り戻す意図があるとすれば、山中銀は相当に注意しなくてはなりません。

地銀のアライアンスでは、情報力の差が大きな影響を与えます。ハンディキャップがあるとはいえ、大半の地銀の情報収集力と解釈力は低過ぎます。IT予算の5%くらいを情報収集に投入して、適切な情報に基づいて戦略的選択をすれば、ITの場合で20%は費用を減らせると思います。情報過疎の中で、表面ヅラしか書かないマスコミに左右されていては、戦略オプションは見えてこないと思うのです。

 

                            (令和2年11月12日 島田 直貴)