在宅で私用端末4割許可 (セキュリティ強化急務)


日経新聞令和2年10月14日付記事です。日銀が13日に公表した調査レポート「金融機関における在宅勤務の拡がりとシステム・セキュリティ面の課題」を紹介しています。記事では、在宅勤務制度のある金融機関(日銀取引先239社が調査対象)は7割で、内4割で私用端末の利用が認められている。大手行10社と証券会社22社の全てで在宅勤務制度があるが、地域銀行では102行の54%,信用金庫20行などその他金融機関では46%のみです。地方では大都市圏に比して、コロナ感染が限定的だったことが地域金融機関での導入が少ない理由だろうとしています。

業務別の在宅勤務状況では、融資業務が78%、金融商品販売業務とシステム開発が64%、市場運用が56%、資金証券決済が51%ですが、口座開設・諸届業務などでは43%にとどまっており、業務によって差があることが明確となりました。

セキュリティ上の課題も浮かんでいます。93%が会社貸与の端末を使用していますが、私用端末の利用も認める会社が42%あります。私用端末ではセキュリティが一段と課題となりますが、その対策として、対策ソフトやセキュリティパッチの他に社内システムのファイルをダウンロードできないようにする会社が80%となっています。Web会議システムに関しても複数のソフトを採用するケースが多いが、セキュリティを重視する選択が行なわれています。そうはいっても、私用端末の場合は、統制しきれないことがあり、運用面を含めた徹底が不可欠としています。

日銀レポートの詳細は、日銀サイトでご確認願います。

https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsrb201013.htm

日経記事はセキュリティに焦点をあてていますが、日銀レポーートでは、在宅勤務というか働き方改革への影響も重視して、今後の活用方針や課題についても調査しています。働き方改革に結びつけようとの動きが見られ、その為にペーパーレス化やシステム環境を整備しつつ、全行職員を対象としてセキュリティの運用強化図ろうとする金融機関が多い。更に、リモート端末の社内システムへの接続方式としては、仮想デスクトップ方式が55%と多いが、VPNを使った会社端末持ち帰り方式が44%、リモートデスクトップ方式が42%となっている。パンデミック下で機器の供給が遅れて、会社端末の購入が難しかったことや、接続方式の選択においても導入作業や費用を抑える為に、取りあえずの接続を優先したのでしょう。今でしたら、社内稟議を通し易いので、システム面での手当ては進むと期待できそうです。

様々なメディアや調査機関がテレワークの状況と課題について調査して公表しています。ITベンダーも便乗とも言える論調でテレワーク関連商品の売り込みを図っています。しかし、金融機関としては、働き方改革とDX化を睨んで、リモートワーク環境の整備を進めることが重要です。

例えば、一般的な調査では、業種別のテレワーク採用率を比較します。これには殆ど意味がありません。例えば運送業のテレワークといっても配送業務がテレでできる訳がなく、対象業務は間接事務業務だとか、自動化された倉庫の運営などになるでしょう。対象業務で考えないと、具体的なソリューションと効果が見えません。

また、これまで、対面やリアルワークプレイスでないと無理とされた業務も、工夫と割り切りでテレワーク化できます。コールセンター業務や対顧客折衝などが代表例です。その際に必要なことは、全てをテレワークできなくても、リアルとの組み合わせで、生産性を改善・改革できることがあります。All or Nothingの考え方から離れることが必要です。そうしないと、生産性向上に結びつかない。

ある調査はテレワークで生産性が70%も上がったと言い、別の調査では30%が上がって、70%が下がったと言います。この30だとか70だとか言うのは、具体的にどんな分母と分子なのか?いい加減なレポートが蔓延しています。その点で今回の日銀レポートは、回答の前提をしっかりと提示しています。金融機関が取り込み中なので、詳細な回答を求められる状況にありませんでしたが、コロナが落ち着いたら、具体的なリモートワーク化方法や課題の解決策を調べて欲しいものです。

筆者のようなコンサル業務を行なう立場からは、在宅テレワークの効果は、通勤時間が減るだけとも言えます。資料作りは、資料原典やスペースや機器類などが理由で、オフィスに比べると生産性が半減です。クライアントや仕事仲間とのWeb会議によるコミュニケーションは、時間的には生産性向上なのでしょうが、質的には本音や言葉以外のコミュニケーションになりません。事務連絡など縦型ルートであれば全く問題ないのですが、口に出せない願望や二人だけの本音トークは全く無理です。つまり、リアル会合における縦、横、斜めのルートや、説明者のプレゼン中に他の参加者と本音の感想交換という多重コミュニケーションが、今はできません。ベンダーには、このコミュニケーションの多重化機能を作るように頼んでいます。

新型コロナの感染騒動が多少は収まりつつありますが、在宅勤務を義務ではなく、推奨とする企業においても、出社する人が7割以上いるそうです。朝の通勤混雑などを見ると体感的にも頷けます。他人との接触を求める人間(日本人?)の本能が根底にありそうです。

ジョブ型雇用などとメディアは煽ります。筆者が長く務めた外資系企業は50年前からジョブ型でした。しかし、根底にはチームワークがあり、業績評価にも反映していました。チームワークは集団の知やスキルの融合だけではありません、モラルの源泉でもあります。そのチームワークの枠組みを壊したら、途端に業績が悪化一途となってしまいました。

損保ジャパンがテレワーク先進企業として注目されていますが、同社は並行して働き方改革や人事制度の改革を進めています。金融機関としては希有な動きです。成功して、多くの日本企業の模範となり、わが国の生産性が大幅に改善する先駆者になって欲しいものです。

 

                         (令和2年10月14日 島田 直貴)