コロナ下の米国でコインが不足


米国で深刻なコイン不足が問題となっているそうです。自粛生活でネットサーフィンしていたらこんなニュースを見つけました。令和2年7月30日付のマイナビニュースです。https://news.yahoo.co.jp/articles/65243ac5fc128cf2e367c4822f549bc6ad0dde58

感染防止の為に個人が代金の支払いをキャッシュレスで行なうのは米国でも同じですが。それでも現金払いはなくならない。特に、銀行口座を持てないために、クレジットカードもデビットカードもない人達の世帯が27%もあるそうです。この人達は、現金で生活必需品を買うしかありません。ところが、米造幣局は、ステイホームを理由に、硬貨の鋳造を止めたのだそうです。もともと、キャッシュレス化で硬貨を家にしまい込んで流通が損なわれていたところに、供給を絞ったのですから、現金通貨が循環しなくなってしまったということのようです。

6月17日付けWSJなど別のニュースでは、コロナ自粛期間中でFRBに環流するコインが半減したそうです。それが埋もれたままで、6月に自粛を解禁したので、一時的な不足となった次第です。FRBは増産に務めますが、要員手配や銅など材料の確保が間に合いません。メディアがソファーの下に隠れているコインを捜して下さいといったキャンペーンをはって国民に協力を呼びかける事態だそうです。海外との人的交流が激減している為に、米国などの草の根情報が途絶えていますが、実際にはこんなことが起きているのだと痛感する次第です。

当面の対策として、小売店では現金での売買を止める、釣銭をコインではなくポイントカードなどに加算する、非営利団体に寄付する、釣を切り上げて1ドルとするなど苦労しているそうです。銀行も、コインでの預金に金利を上乗せする、CoinBuyBackプログラムとしてコイン100ドルを105ドルで買い取るなど必死にコイン確保に努めているとのこと。この問題が長く続くとは思いませんが、複雑に組みあった経済活動において、その循環が一時的にも切れると大きな社会問題となってしまう。日銀が、CBDCの検討において金融包摂と災害や停電時など電子決済手段が止まったときの課題を重視していることの理由が良く理解できる話であります。

このマイナビニュースでは、一挙に現金廃止に向かうべきとの声もあると書いています。1セント硬貨の製造コストが1.99セント、5セント硬貨が14セント(米国では通貨発行コストが定期的に発表されており、100ドル紙幣などを除く、どの貨幣も流通額を発行コストが上回っています。それに流通コストを加えれば、現金通貨の非経済性は大変なものです。日本の貨幣発行費用は、最近の数字を調べていませんが、米国ほど酷くはなかった筈です。市場、銀行、日銀の間で効率よく循環しており、品質も良いので、きれいですし、ジャムでATMを壊すことも稀です。コインも電子マネーの普及で、殆ど新規発行せずにすんでいるようです。逆に、発行枚数が微少だった時の硬貨はプレミアムがつくと聞きます。

金融包摂の観点も重要で、NY、SF,フィラデルフィアなどでは、小売店や飲食店が現金支払いの拒否を禁止する法律があるそうですが、これは国が対応すべきで、地公体の問題ではないでしょう。米国では小切手による決済コストが長く国民的な問題でした。社会保険給付金など公金の支払いに膨大な費用と手間がかかっていました。それがここ10年程の間に一挙にスマホで解決しました。小切手のイメージを対象者に送る、受取人はそれをスマホで銀行に提示する、銀行は資金化した額を預金口座に入金する。まさにスマホカメラの威力でした。あっという間に、大手銀のモバイルバンク利用者が3千万とか4千万となりました。それも、ほぼ全てがアクティブ・ユーザーです。わが国とは根本的な違いです。

それでもアンバンクト世帯27%をどうするかは、重い課題です。国がチャレンジャーバンクを設立して、アンバンクト世帯向け口座を提供、それにモバイルバンクやデビットカードなどをリンクする。給付金などをプリペイカードに振込んでもよいでしょう。これは民間銀行にとっても負担軽減となりますので、官民が協力できる分野といえます。社会保証番号制度が定着しているから、できる話ではありますが。

その点で、わが国のマイナンバー制度はいかんせん中途半端です。個人番号の使用範囲を社会保証と税に限定したり、番号の守秘を必要以上に厳しくする。その結果、住民管理する自治体システムとの連携がまともにできない。自治体システムでは、同じベンダーに委託開発していても、コート体系やレコード体系がバラバラです。これでは自治とか自主とは言いません。支離滅裂なだけです。

これから、クラウドで標準システムを作り、各自治体システムを移行させると言いますが、何年かかる事でしょう?国は、積極的な自治体と消極的な自治体に対して、インセンティブに大きな差をつけて、標準化のスピード競争をさせれば良い。遅れる自治体の住民は、それが不都合であれば自治体に圧力をかける。首長の首を変えても良いでしょう。そうでもしない限り、わが国のDX化では、多少の補助金をばらまくだけで、何も変わらないと思うのです。キャッシュレス化は、現金通貨をデジタル化すれば良いという単純な話ではありません。

 

                         (令和2年8月11日 島田 直貴)