TSUBASAアライアンスが共同出資会社

日経新聞の令和2年7月22日付千葉県版の記事です。TSUBASA加盟の10地銀が共同出資会社を設立し(7月22日)、各行に共通する業務や機能の集約を図る為のプラットフォームにするとのことです。10月1日より業務を開始し、1号案件として同月にAMLセンターを開設し、アンチマネロン・プログラムの運営実行を行なう予定です。社名はTSUBASAアライアンス株式会社です。

AMLは負担の大きい業務ではありますが、銀行間で共通の範囲が広いので、期待効果が大きいと思います。これまで、余り共同化が進まなかったのは、目指すところは同じであるが、各行の顧客層の違いからくる逼迫感やその結果としての態勢に差が大きい為です。

このグループには、既にT&Iイノベーションセンター(T&IIC)という有名なフィンテック会社があり、TSUBASAアライアンスのIT関連施策を展開しています。T&IICと別に新設する理由は何か?と疑問に思いました。というのは、伝統的な銀行がフィンテックなどオープンイノベーションを図る際に、組織文化の違いなどをカバーする為に、専門の別会社を設立することが多いのですが、率直なところ旨く言っている所が殆どありません。その中でT&IICが着実に実績を積み上げているのに、更にアライアンスの受け皿として別会社とはどういう考えかと思った次第です。

業務範囲ですが、T&IICがフィンテックの調査・研究、企画開発ですが、新会社は、各行共通の業務や機能の集約となっています。T&IICは基幹系オンラインの共同化、APIを含めたフィンテック関連の共同化を進めてきました。その過程で基幹系は共同に参加しないが、他の周辺業務のIT化や地域創生支援などビジネス面でのアライアンスに対するニーズが拡がりつつあります。武蔵野銀行や琉球銀行などがその例です。IT関連部門以外の連携進化が必要になったということでしょうか?

そうなると、営業部門や企画部門、管理部門間の連携がますます必要になります。これまでは、テーマに応じて担当部門が集まって、調査企画など行なってきましたが、より機動性と実行力を持ったエンジンが必要になったということでしょうか?それは、新会社の役員を見ると納得できます。T&IICは千葉銀IT関連部門の部長、取締役クラスが中心ですが、新会社はメンバー地銀10行の頭取が勢ぞろいです。資本金はたかが900万円ですが、事務所は千葉銀東京本部内ですし、スタッフは恐らく各行からの出向者でしょう。つまり家賃も人件費も殆ど不要です。先行投資が必要になったら、都度、調達すれば良い。

筆者はこれまでの共同化はコストをシェアする共同化だったが、これからは、情報、スキル、知恵の協同化の時代だと考えています。新会社はまさに協同化を目指した動きなのかも知れません。また、フィンテックは取引先とのフロント業務のデジタル化が中心ですが、昨今ではデジタライゼーションにテーマが移っています。デジタライゼーションには、フィンテックも含みますが、銀行内業務のデジタル化やそれを推進する為にも取引先内部業務のデジタル化も必要です。それを進める為には、地域の経済・生活活動のデジタル化が前提となります。そうして始めて、銀行も地域もSTP(ストレート・スルー・プロセシング)が実現でき、データ活用やAIなど先進技術の活用基盤が出来ることになります。フロント業務の一部でビッグデー解析だのAIだのと言っても、それでは殆ど付加価値を生みません。

TSUBASA加入10行を合わせると預金量で56兆円、行員数で2万4千人の規模となります。相当な規模です。人材や投資も調達が楽になるでしょう。東京に窓口を置くことで、多様な外部から提案や情報提供を得られます。協同化が旨くいけば調査研究活動も進み、より効率的な共同化も可能になるでしょう。千葉銀が勘定系の共同化に拘らなかったことが良かったのだと思います。贅沢を言えば、参加メンバーに東海地区と九州地区の地銀がいません。遠からず、どこか参加する地銀か第二地銀、信金で出てくるかもしれませんが。

アライアンスとは耳触りは良い言葉ですが、実際に継続運営するとなると幹事の負担と気遣いは生半可ではありません。事実、勘定系の共同化ではリーダー銀行や主催ベンダーからの悲鳴が聞こえてきます。「メンバーはみな勝手なことを言い、自分では何もしないどころか考えもしない。」という悲鳴です。その一方で、勘定系共同の機動性欠如、スキル消滅、コスト高止まりというマイナス面が目立ってきました。このデメリットは共同化がブームの時点から判っていたのですが、主催者が改善しようとしても、参加行内に変化を嫌がる意見が想像以上に多かった為に、今日のように身動きが取れない状況となりました。再編成には自然災害並みのショックが必要となってしまいました。

協同化においては、ルーズリーなアライアンスが不可欠でして、それを維持するのは現場レベルでは無理です。経営トップ人の自覚とプリンシプル実践が不可欠です。WHOなど国際組織と同じだとしみじみと思います。

 

                              令和2年7月22日 (島田 直貴)