IT大手、試練はコロナ後


日経新聞の令和2年5月22日号Opinionの記事です。Financial Timesのラナ・フォルーハー氏の論説です。今回パンデミックにおいて、接触追跡アプリやウィルスに感染すると光るマスクなど先端技術が活用されており、GAFAなど巨大テック会社が活躍している。しかし、この活躍が結果的にこれら企業の衰退の原因になるかもしれない。なぜなら、巨大IT企業の社会における重要性が高まり、蓄積したデータの価値が明らかになることで、こうした公益性の高い技術を私企業に任せて良いのかという意見が強まっているからである。実際にプライバシー保護やデータの利用目的制限などを目的に規制の動きが強まっている。その規制も、今回パンデミックを受けて高まりつつある国家主義により、国ごとに異なる。単一グローバリゼーションが逆流すれば、グローバルIT企業には大きな足枷となるかもしれないとの論調です。

筆者もこれまでのグローバリゼーションは、見直されると思います。サプライチェーンだけでなく、市場範囲の再定義やビジネスモデルが変わって、グローバルとローカルの組合せも変わるでしょう。わが国を含めた一定規模の市場を持つ国と自国だけでは市場規模が不足する国との格差は広がります。グローバリゼーションに乗り遅れた日本としては悪い流れではないかも知れません。

4月以降、ウィズコロナ、アフターコロナ、ポストコロナが頻繁に論じられています。今後、第二次、第三次の感染が起き、収束(終息)するのに2年とか3年とか言われますが、強制的な接触遮断と緩和を繰り返しながら、特効薬とワクチンができるまで3密回避するのが新たな日常となるとされます。ハーバード大学倫理センターのRoadmap to Pandemic Resilienceが、わが国でも広く参照されています。

その後にやってくるポストコロナにおいて、金融サービスはどうなり、ITの使い方はどうなるのか、我々は考えておく必要があります。誰も確たることは判りませんが、変化要因とその影響を予測しておくことは、とても重要です。ドラッカーがいてくれたらと思うのですが、残念ながら代わりになる人は見当たりません。多くの有識者がいろいろと意見を述べています。それを羅列するだけでも整理に役立つでしょう。ただ、もう会社に行く必要はない。テレワークで充分などといった極論は排除します。わが身にとっての常識で取捨選択すれば良いでしょう。例えば、

◇グローバリゼーションが見直され、中国などの統制国家と資本主義国家の分断が進む。

◇自由主義国家においても国のBig Brother化が進む。

◇企業は越境サプライチェーンの見直しを急ぎ、生産の国内回帰が進む。

◇経済は世界的にデフレ基調となる。

◇一次産業や医療健康産業、運送産業が相対的に成長する。

◇大量の中小企業が統廃合で減少する。

◇中小企業取引への依存度の高い企業(含む金融機関)は持続可能性が急速に劣化する。

◇労働人口はサービス業から一次産業にシフト、かつ、マルチプレイヤー(例:ITに強い漁師)化が進む。

◇テレワーク、在宅労働、副業者(含むギグワーカー)、在宅学習が増える。彼等をサポートするビジネスが拡大する。

◇個人生活では、会社中心から地域や趣味への時間配分が増える。

◇ウィズコロナ時期に離婚が、ポストコロナ時期には結婚が増える。

◇ネット取引、キャッシュレス化が更に進み、提供事業者は寡占化する。

◇密な対面サービスへの需要が増し、付加価値が高まる。

などなどです。これらの事象というかトレンドの波及範囲、影響の程度、進行速度などを、評価項目や基準などを仮置きしながら、各金融機関はロードマップを作る必要があります。時間軸が重要です。

現時点で金融業界は、資金繰りに困った企業や個人への支援に奔走しています。行職員のモラルは極めて高いようですが、物理的にいつまで続けられるのか。業績としては、融資額は膨れ上がりますが、一方で不良債権化への備えで収益は悪化一途です。ウィズコロナ時期においては国のバックアップがありますが、ポストコロナになった途端に、自社単独で存続と成長の努力が必要となる。その準備をいつ行なうのか。

ITに関しては、経産省やIT企業がいろいろな夢を並べています。ITソリューションを、妄想に止めず、無駄金にしない為には、全行職員のITリテラシーが前提となります。コスト削減にとどまらず、収益増のIT化にはITリテラシーは必須です。普段なら数年かけるITスキル研修を3ヶ月で終わらせるなど急ぐ必要があります。特にカストマーエクスペリエンスを高めるコンテンツ作成のスキルが重要です。カストマーインタフェースは、IT部門が企画設計してクラウドを利用すれば、短時間でインフラ準備は可能です。3カ月と言いましたのは、8月頃にはウィズコロナの第一フェーズが終わりそうだと聞いているからです。

                                                          (令和2年5月22日 島田 直貴)