ネット証券がクラウドファンディング本格参入

日経新聞の令和2年4月21日付記事です。カブコムがベンチャー企業のファンズと組んで、融資型CFに参入する。SBIが未公開株対象の株式型CFを開始、マネックスがCF大手のREADYFORと提携、松井が不動産投資のロードスターキャピタルのネット勧誘といった事例を紹介しています。各CFともに、投資先数は数十社以下、投資者数は100人以下、調達額は数千万以下、期間1〜2年で利回り2%前後と小規模です。国内CF調達額は一昨年で2千億円と4年で10倍(矢野経済研究所)と急拡大しているそうですがマグニチュードが小さすぎる。ネット証券としては、手数料がゼロに向かい、市況の荒さもあって個人投資家が引いている状況で、個人マネー向けの商品ラインを広げる狙いがあると書いています。

新型コロナにより中小零細企業の資金繰りが急激に悪化しています。粗利が数%しかない事業で、収入が限りなくゼロに向かうということは、60〜80%を占める固定費(家賃、人件費、償却費、光熱費、租税公課など)で事業を続ける限り、赤字を垂れ流すことになります。資金ストックのある企業は殆どありませんから、事業破綻は秒読みです。加えて、中小零細企業の40%はオーナー経営者の年齢が75歳超であり、60歳超を加えると70%近くが継承者問題を抱えています。これらオーナーは、銀行借り入れだけでなく、個人の資産を事業運営に投入しています。株だけでなく、個人融資も相当な額です。巨これがコロナショックで更に膨らむことになります。

この状況でオーナーが死去でもしようものなら、株式評価額と個人貸付金は、相続資産として大変な相続税に変身します。戻ってこないどころか、相続人には大変な負債となります。いつかは回収できると思って、自己資産を投入してきたが、コロナショックで裏目となっています。もっと早く廃業しておくべきだったと。今回の赤字を回収するには、ウィルス騒ぎが収まって黒字を続けても、赤字期間の10倍以上の時間が必要となります。高齢オーナーが耐えられる話ではありませんし、後継者探しはコロナ以前よりも難しい。M&Aなど資金を持つ買手が消えているでしょう。当然ですが、廃業を選択することになります。それも速い方が良い。これに該当する企業が、日本企業全体の3分の1にあたる127万社(中小企業庁)ほどありそうです。その半分が自主廃業すれば、仕入先や得意先を失う企業も膨大な数となります。日本経済が破滅しかねない。

政府は、資金繰りに窮した企業に100万とか数十万円の助成金や無利子の融資などで支援する計画ですが、これで事業継続できる計算は成り立たない。政府の予算には国民負担という制限があります。日銀が輪転機廻せば良いだろうという冗談も解決にならない。企業の集団失血死というパンデミックが発生することになります。

クラウドファンディング(CF)、特に株式型は融資型と異なり、返済期間や利子負担の制約がありません。ベストエフォートで許される。廃業しそうな企業の株をまとめて証券化して、SPC経由で国や地方自治体、取引企業、個人が買う。この段階でオーナー経営者の融資金を株式転換すれば、オーナーは全額とはいわないまでも資金回収できる。その時に、若い人を中心に事業運営を引きうけてもらえないか。当然、事業分野やビジネスモデルの変更などは任せる。新技術や企業経営、営業推進をアシスト、コンサルする専門家集団も組成する。その結果として企業の若返りやイノベーションに結びついて、経済活動の新陳代謝と付加価値を一挙に改革できないだろうか?

こうしたスキームを設計、構築、運営するのを国に委ねるのか?まずは無理だろう。国家公務員の知識と経験では、有機的に機能する絵が描けるとは思えない。お互いに顔を合わせて、共同体として機能分担する必要がある。資金調達にCFを使うのは、大変合理的だが、大勢の関係者と国民が資金と知恵とスキルと情報を出し合う仕組みが必要です。それはネット証券でも無理でしょう。やはり、銀行が主体となるのが、実現への道だと思います。

クラウドフアンディングや資金繰り助成など、小手先の対症療法では、ポスト・コロナの経済に繋がらない。各金融機関は、各自の得意とする顧客層を対象に、ゼロベースで産業設計をして、役者と舞台道具と観客を集めて欲しい。その間の資金は銀行貸出で賄い、新事業の基盤費用はエクイティでカバーする。企業別の支援策と並行して、地域産業を再編成するプロジェクトを並行して急ぐべきでしょう。クラウドファンディング、証券化、組成金融、事業承継、M&Aなどに精通した業務専門家とIT専門家が必要です。経済構造改革にも高齢者対策にも、労働生産性改革にも一挙に結びつけることが重要です。

 

                                     (令和2年4月28日 島田 直貴)