副業者を地方に紹介 (JOINSが八十二銀と連携)

ニッキン令和2年3月20日号の記事です。八十二銀行がJOINS社とマッチング契約をして、地方向けの副業・兼業プロ人材仲介サービスを始めるとのことです。JOINSは大都市から地方への人材環流マッチングを手がけています。他に5地銀がJOINSと提携予定だそうです。人材不足の地方企業にとって、専門技能を持つ大都市の人材はパートタイムといえども戦力になりそうです。金融機関の取引先向けサービスのプラットフォーム戦略という視点で考えてみたいと思います。

記事を見ますと、記者が取材訪問して記事化してはいますが、明らかにJOINS社の投げ込み記事です。JOINSには大手企業の30〜50代社員1500人が登録しており、副業を解禁した銀行の行員もいるそうです。実際に成約した人の平均年齢は47歳で、ITツールの導入支援や人事評価制度の見直しなどを行なっています。時給制(2千円〜5千円)、月額制(10万円程度で週末・夜間に週8時間のリモート勤務と月一回の現地勤務)があり、契約期間9カ月が平均だそうです。ネット受注のフリーランスは多くが月収5万円未満だそうですから、まずまずの副業になりそうです。

JOINSが企業から一人当たり月4万円の手数料を取って、一部を仲介する銀行に支払う仕組みです。採用希望企業はJOINSのWebサイトに募集をかけ、面談等で採否を決める。銀行が仲介するといっても、JOINSへの加入を斡旋するだけのようです。地銀が企業の要望を聞いて、JOINSの登録者から候補をリストアップしても良いと思いますが。八十二銀は八十二ビジネススクエアという中小零細企業向けの情報提供・経営支援Webサービスを月額2750円で提供しています。こうしたサイトで会員にJOINSを紹介するのでしょう。

この仕組みはクラウドソーシングそのものですが、人材需要者の開拓を銀行に依頼することに特色があります。ふと、思い出したのが八十二銀とJOINSは既に提携関係にあった筈です。調べたら、2017年12月に八十二キャピタルがJOINSと提携していました。この時は、八十二銀が設置した八十二地域産業クロースサポート投資事業有限責任組合という地域活性化ファンドが出資する企業に、JOINSが人材を派遣するという内容でした。この時は、地銀がソーシャルビジネスに資金だけでなく人材支援も行なうということで注目されたようです。

今回は、働き方改革で副業を認める動きにあることでニッキンも記事にしたのでしょう。とはいえ、年に何人の紹介が成約できるでしょう。20人か30人が良いところではないか。JOINSが一人につき月4万円受け取り、その一部を八十二銀に支払っても年間で3、4百万円が良いところです。地銀としては地元企業への人材支援をしているとアピールできる程度の話です。

そこで思いだしたのが、長野銀行が参加するココペリ社の金融機関連携プラットフォーム「BigAdvance」です。2018年4月にサービススタートしましたが、今では30前後の都道府県で50行近い金融機関が採用しています。このサービスの肝は中小零細企業が必要とする社員福祉・コミュニケーションや財務、人材手当て、制度融資、オンライン貸付など豊富なサービスを金融機関が仲介するプラットフォームだということです。昨年来、急速に参加金融機関を伸ばしています。その理由は、オープンであることです。会員企業の月額会費は3,300円、その半額を金融機関が受け取ります。APIを使って他のクラウドサービスや銀行が独自開発したサービスを載せても構わない。このBigAdvanceの勢いに対抗する為にJOINSも八十二銀も自分達のサービスをアピールする必要があったのでしょう。そこでメディアに記事を投げ込んだのかと。

金融機関が顧客との間でデジタル・チャネルを構築する際に、最大の武器となるのが個人向けではスーパーアプリであり、法人向けにはプラットフォームです。どちらも金融機関が単独でカバー仕切れるものではありません。また、プラットフォームは接続性と検索やコミュニケーション機能だけでは差別化できませんから、搭載するサービスを多様に揃える必要があります。例えば会計処理でも、freee、Zaimu、弥生、MoneyFowardなどから顧客が選べるようにする必要がある。

リンカーズという中小企業の独自技術を大企業とマッチングさせるサービスがあります。このサービスも単純に、特定技術のマッチングを行なうサービスではありません。それぞれの技術に精通し、その適用や応用方法も考えられる多くのプロ集団とエコシステムを構築しているから、始めて技術の需要者と提供者の仲介が可能となります。プラットフォームというと、電気通信設備で考える人がいますが、マッチングにはきめ細かな配慮と高度なノウハウ、経験が必要でして、それがエコシステムとして形成されていない、使い物になりません。それは決済機能をコアとして金融サービス・プラットフォームを作る場合でも同じです。多くのフィンテック企業が赤字から脱却できない理由も同じです。一人で走ると利用者が限定され、早晩、継続できなくなる。

エコシステムとして必要な機能を提供するプレイヤーを最初から集めることは、現実的ではありません。まずは、何かのコアサービスで利用者を集め、採算ラインまでもって行ければ、後は、自然とエコシステムができてくる。金融機関は最初から必要な機能を全て揃えようとするので、時間と費用に耐えられなくなります。

まずは、キラーコンテンツとそのプレイヤーでテクニカル・プラットフォームを構築することです。このプラットフォームを無理して自分で作らなくとも良い。ココペリでもJOINSでも、使い勝手や費用で選べば良いでしょう。ただし、自行の顧客が離れないように、各種条件、ユーザビリティ、サービスの独自性と改善を図る必要があります。金融機関は、この改善に必要なリソースを計画に盛り込むことが不得手というか、全く考えない。新規構築よりはるかに難しく、手間暇コストがかかるのです。これを理解しないと、サービスビジネスはとても無理ということです。

 

                                 (令和2年3月26日 島田 直貴)