キャッシュレス比率は6割 (JCCA調査)

ニッキンの令和2年3月6日号の記事です。クレジットカード協会(JCCA)が2月18日に公開した調査報告書を紹介しています。昨年7月に1千世帯から2万1千件の消費支出明細を収集、分析したものです。手段別決済額の構成比を算出して、それを個人消費総額193兆円に乗じて、決済手段毎の決済額を算出しています。クレジットが29.9%(57兆7千億円)、電子マネー3.9%(7兆5千億円)、QR決済0.8%(1兆6千億円)、口座振替21.4%(41兆円)、銀行振込5.2%(10兆円)となります。合計120兆円で、キャッシュレス比率は62。2%となったそうです。

政府の言うところの20%強とは大きな差があります。最大の理由は、口座振替と銀行振込をキャッシュレスに含めたことです。口振と振込は合わせて26.6%ですから、昨年3メガが実験的に算出した数字とほぼ同じです。クレジットカードの比率も、政府の試算は22%ですが、当調査では約30%です。我々、個人の生活感覚からすると、JCCAの調査の方が近いと思います。どうも、国が出す統計数値には、何らかの意図が反映されているように思えます。

筆者は、かねてより、キャッシュレス化そのものは重要であるが、決済にかかる国民経済的コストを減らすのであれば、件数を重視すべきだと主張しています。金額比をKPIとするキャッシュレス化であれば、取引の高額化を進めれば実現してしまいます。にも関わらず、高額取引の多い銀行振込や家賃などの口振を、国際比較を理由に外すのは余りに不合理というか、恣意的に過ぎると思うからです。今回、JCCAの調査で振込と口振を対象にしたのは、高く評価できます。

調査対象が1千世帯というのは、有意なアンプル数なのか?と思いますが、調査目的が、今後のキャッシュレス化を進める上での戦略ポイントを抽出することのようなので、文句は言えません。政府による大規模で中立的な調査を待つことにします。当調査では、結果に偏りがないように、回答の中から異常値を外すとか、調査対象のバランスを取るとか工夫がなされているようです。JCCAが野村総研に委託調査するにあたって、より正確な構成を把握しようとしたことが伺えます。

筆者が注目したのは、決済件数も調べていることです。調査対象1千世帯の回答から、回答の品質などを考慮して対象を870件ほどに絞って分析しています。店舗での支払件数が13,885件、定期的な支払が7157件、エレクトロニックコマースでの支払が261件となっています。合計で21、303件が昨年7月に870世帯で支払われた件数となります。うち、口振、振込を含めたキャッシュレス支払は、店舗で4664件、定期支払6367件、EC216件です。キャッシュレス比率は52.8%です。かなり納得のいく比率です。

合計の21,303件を870世帯で割ると、世帯あたり月間支払件数が出てきます。24.5件です。世帯当たりの人数は、2.3人ですから、一人当たり月に10.6回の支払ということになります。これには、子供や後期高齢者などを含みます。国全体としては、個人の支払件数は、10.6件x12カ月x1.2億人ですから、年間で153億件となります。200億件というイメージを持っていましたから、少々少ないように思いますが、これからは決済ビジネスの市場分析などで使うことにします。JCCAの調査から乱暴に計算すると1件当たり決済額は6500円、キャッシュレス決済比率を70%、決済手数料を1%とすれば、153億件x70%x6500円x0.01で年7459億円の市場となります。

この数字が大きいか小さいか?要は、設備投資と人件費をかけない仕組みでない限りは、薄利多売のコモディティ・ビジネスです。政府は、キャッシュレス化を促進する為に、手数料引き下げ、端末機の統一とコストの引き下げ、QRコードの統一、データ利活用を通じた新たなビジネスモデルなどを提言しています。しかし、どれも、消費者にとってのメリットが見えません。アリババのようなビジネスモデルはわが国では、受け入れられないでしょう。そこで、還元競争となりますが、これは自殺行為となりかねません。

JCCAは今回の調査結果を受けて、現金決済派の36%は当面、放棄して、キャッシュレス派と使い分け派(店によってキャッシュレスと現金を使い分ける層)の店舗での現金決済分をターゲットにする考えです。その規模は41兆円です。やはり1%手数料として、4千億円の小口決済市場となります。狙いとしては悪くありません。今の市場を53%も拡大する話です。その間に、データ利活用などの新しいビジネスモデルを発明できれば良い。ただ、そのように提供側ロジックでうまくいくかどうか。やはり、消費者視点が弱いという感じが拭えません。

                     (令和2年3月13日 島田 直貴)