課題クリアで金利優遇 (山口FGがDeNAと次世代型カードローン)

融経済新聞の令和2年2月10日付記事です。山口FGがDeNAの開発した新型個人ローンRerepの取り扱いを始めたそうです。ローン当初の金利は一律14.5%だが、スマホアプリで毎週提示される趣味や携帯料金、起床時間などの課題に対する回答をスコア化して、適用金利を変動させます。スコアのステージは20段階あり、最終20だと金利は9.7%まで下がる。優遇に伴う利息過払い分が1千円以上になると、利用者の申請ベースでキャッシュバックされる。課題をクリアできないとステージは下がる。

融資限度額は一律50万円で、ステージ20になるまで3年半ほどかかります。課題は、山口FGとDeNAで協議しながら決めるそうですが、健康的な生活スタイルを求める内容になるということです。販売地域は、山口FG3行の地盤、山口県、広島県、福岡県の個人です。

従来の個人ローンと異なるのは、

・事前与信ではなく、利用者の行動によって信用を後から積み上げる

・日々の課題(ミッション)によって行動変容を促し、健康な生活スタイルに誘導する。という点です。

ゲーム感覚で、自分の行動で金利を後決めし、ステージを上げればキャッシュバックが得られる点が面白い。

似たコンセプトの金融商品に住友生命のVitalityがあります。DeNAが住生を真似したのかと思ったら、きっかけは、DeNA社員が住宅ローンを申し込んだ時に、勤続期間が1か月足りない為に審査を通らなかったことだそうです。勤続年数よりも、嘘をつかない、約束を守る方が、はるかに信用尺度として重要だろうと考えた結果の商品コンセプトだそうです。銀行は、返済能力で与信判断を下しますが、返済意思がもっと重要な基準です。しかし、画一化、機械化した銀行の融資では、返済意思は測れませんし、信用基準もかつての尺度が陳腐化してしまいました。結果として、今の審査基準は、銀行員の貸倒責任回避基準となってしまった。

筆者が驚いたのは、山口銀行がRerepの採用第一号となったことです。同行は、堅実経営、保守的経営で有名な銀行です。経営トップの若返りに伴って、隣県のもみじ銀と経営統合したり、北九州に新銀行を設立して、営業地域の拡大を図ってきましたが、商品やサービスで先駆的な動きは見られませんでした。その銀行が、個人ローンの基本ルールをひっくり返す商品に手を出したのです。

どうやって販売促進するのかも興味があります。3行のHPで広告しても気付く人は限られます。なんらかのメディア広告かWeb広告なのでしょうが、販売区域が3県だけというのが制約になるかも知れません。ただ、土地勘のない地域の顧客を勧誘すると、不良顧客の率が高くなってしまいます。そこで、山口FGは最初の一歩を抑えました。成功パターンが掴めれば、徐々に営業地域を拡大するのかもしれません。必ずしも、隣県とは限らず、飛び地営業も面白そうです。

一方のDeNAとしては、多くの地銀と提携したいでしょう。一県一行の原則があるかもしれません。それとも、山口FGが加入するChance共同行などに限定するか。地域No.1銀行が揃っていますし、MUFG親密です。できれば、全国のカードローン需要者からデータを集めて地域の特色を反映した信用モデルと与信判定アルゴリズムを構築すべきです。経済圏によって個人の信用モデルは相当な違いがあるので、全国一律は失敗します。DeNAの拡大戦略も楽しみです。

山口FGにとって、顧客が増えた段階に向けての準備も必要です。ネット完結を目指しても、それは銀行都合でして、必ず電話や紙を郵送してくる客が大勢出てくる。300万顧客を抱えるネット専業銀行では、紙と電話が莫大な労力とコストの原因になっています。AIチャット、コールセンター、RPAなどで必死に自動化を進めています。そのコストも実に大きい。ネット専業ビジネスモデルの死角です。顧客からのコンタクトは必ずしも、ローン商品に関することだけではありません。アプリが動かないとか、登録したのに反映されていないとか、スマホ機器操作に関する質問もあるでしょう。それに対応する態勢構築にもスキルとコストが必要です。有人店舗がないといっても、意外と手間暇コストがかかるのです。メディアはこうした実状は報道しませんが。住生のVitalityは順調に拡販しています。山口FG+DeNAのリリップはどうなるでしょう。半年後、一年後に結果を見るのが楽しみです。

                 (令和2年2月13日 島田 直貴)