メルペイのOrigami買収額は0円だった。

令和2年2月5日付けの日経XTEC記事です。1月23日の両社経営統合の発表時には買収額が公表されなかったので、メディアの取材ポイントはOrigamiの財務状況と買収額に絞られていました。各紙の取材チームは、同窓生などあらゆるルートで取材したようです。日経BP社では複数の関係者から、0円という情報を得たとのことです。0円では会計上の問題があるので備忘価格1円という説も流れていました。

2月6日付のDIAMOND onlineが、売却価格1円で株数259万株に対して259万円での買収額になったと報じています。また、社員185人の内、9割は退職となり、事実上の経営破綻だ。日経新聞社は、NEXTユニコーン調査でOrigamiの企業価値は417億円だと算定していたと嫌みも書き加えていました。

確かに、フィンテック企業自身が自社の事業戦略を評価しきれていないのに、どういうロジックで417億円を算出したのか?と思います。投資というか投機というか、算定方法のいい加減さが判ります。フィンテック・バブル崩壊かなどとも書いていました。

筆者は、Origamiに資本参加して積極的に加盟店開拓していた信金業界での講演では、「QR決済はセキュリティに問題があるので、早晩、別の決済手段に置き換えられます。今は簡便さが求められますから、Origamiでも良いですが、ポストOrigamiかOrigamiの決済手法の改善を、今からお考えになっておく方がよろしいでしょう。」と繰返して提言していました。まさか、経営問題でこうなるとは予想していませんでしたが。信金業界としては、メルカリとよく調整して、加盟店や利用者に迷惑をかけないような、メルペイへの移行を通じて、禍を福に変えるべきです。信金中金は、既に、そのように動いていると聞いています

時々、危ない銀行はどうやって見分けるのかと冗談で聞かれます。経営トップがやたらとメディアで出たがり、派手な本店を建てるような銀行は注意した方が良いでしょうと答えます。フィンテック企業の場合ですと、増資などで巨額資金を集めて、それをケバケバしいオフィスの高い家賃に使ったり、やたら派手なキャリアの人材を集めているところは注意なさいと答えます。できたら、数名の中堅社員と面談して、彼等の職業観や人生観を確認なされば、ほぼ確実に判断できるでしょうとも付け加えます。Origamiにしろメルカリにしろ、筆者は殆ど何も知りませんし、関心もありませんから、こうした確認はしていませんが。

そもそも、ITベンチャーへの投資ブームがおかしいと思います。ユニコーンとか称して、成長期待だけで赤字企業に巨額な投資を行なう。資金を受ける側は、途端に金銭感覚がマヒして、根源価値と違うところに金を使う。所全、他人の金ですし、借入ではないので期限付きで返す必要もない。こうなってしまうと、お客が払う対価に対する配慮も薄らいでしまう。これは、人間として仕方ない流れですが、余計なあぶく銭は持たないことが大切です。メディアは勝手に企業価値と称して、高くつけたり、崩壊させたりします。所詮、他人の金ですし、記事にもなりますから。米国でも、ようやく、フィンテック投資に対する視線が本来の事業性に戻り始めています。日本でも同じでしょう。

キャッシュレス決済サービスの成功要因は、加盟店数と加入者数です。これは鶏と卵の関係にあります。ポイント還元策で加入者を増やし、そのブランド力とアナログ販売で加盟店を増やすのが、今の流れです。加盟店手数料は下がる一方です。これは資金力勝負となりますので、業界再編は時間の問題です。Origamiに限らず、メルペイだろうがペイペイだろうが同じです。生き残ったところにあるのは薄利多売のビネスモデル。これではブルーオーシャンとはとても言えません。最初からレッドオーシャンです。決済データが宝の山とされます。筆者は資金決済事業者と会話する際に、「決済データから宝の山が見つかったか?」と必ず聞きます。皆さん、「まだです。でもその内に」と言います。筆者は腹の中でそんなものある筈がないじゃないか。アリペイのマネをしたら途端に加入者が消えるぞと思っています。学者、メディア、役人の話よりも、自分自身、家族、友人の声を聞くべきです。

加盟店開拓ですが、遠からず、QRコードは統一されるでしょう。すると加盟店は、統一コードで全てのQR決済に対応できる。今のように、タブレットなどから、該当カードのアプリを起動したり、複数の決済端末を置く必要はなくなります。シンガポールが良い例です。ポイント還元もマイナンバー普及策として今年から出てくるマイナポイントに集約することができます。政府は、取りあえず25%の還元を予定しています。際限のない還元競争は、早晩行き詰まります。実際、利用者は賢くて、還元期間だけ使って、後は全く使わない。こうなると、スマホ決済は何をもって差別化するのでしょう。

最終的にはアプリの勝負になるだろうと思います。高齢者、自宅療養者、未成年などを含めて、誰でもどこでも、いろいろなアプリと決済サービスを合わせて、手軽に安全に使える。ひょっとすると日銀が発行するデジタルマネーすらも、紐付けられる。そういう世界が何年後に出現するか?そう遠くない将来だと思うのですが、そこに至るまでに、何段階もの進化を経ることでしょう。Origamiのようなケースはこれからも続く筈です。一喜一憂する必要はなく、経験の一つだと思えば良い。90%の社員が解雇されると言いますが、彼等の持つ技術と経験は有益ですから、それを自分のものにする人達なら再就職の心配はないでしょう。社会のDX化に避けて通れない道だと思います。

                                         (令和2年2月7日 島田 直貴)