中銀発行のデジタル通貨研究 (日銀・欧州中銀など連携)

令和2年1月22日付け日経新聞の記事です。日銀や欧州中銀など6つの中央銀行がデジタル通貨CBDC(CentralBankDigitalCurrency)の発行を視野に新しい組織を作るという内容です。前日1月21日の日銀発表を受けての記事です。参加中銀は、カナダ銀行、イングランド銀行、ECB、スウェーデン・リクスバンク、スイス国民銀行など6カ国中銀と国際決済銀行で、知見と情報を共有するグループを設立しました。日銀とECBはブロックチェーンに関して、イギリスとカナダはクロスボーダーの相互運用についてノウハウを提供します。年内にも報告書をまとめるそうです。議長はBISの局長とBOE副総裁が共同で務めます。つまり、BOEが仕掛け人ということか。

FRBと中国人民銀行は参加していません。中国は、自国が先行しているので、今更ということもあるでしょうし、迂闊に西側諸国と連携すれば抑え込まれて、自国中心の経済圏運営が損なわれるので、参加しないのでしょう。または、声すらかけなかったか?デジタルマネー先進国のシンガポールも加わりませんが、同国としては勝手に素早くやりたいということでしょうか。米国が参加しないのは何故でしょう。単なる情報交換だけならFRBにとって悪い話ではありません。実現すれば、国際通貨覇権を犯されるので、潰しておきたい話なのでしょうか?日銀はBOEやECBなどとの良好な関係を活かしているという感じです。

日経新聞はすぐにでも、グローバルなCBDCが出現するような論調で記事を書いていますが、日銀としては、進めているECBとの共同研究の枠を広げるくらいのつもりなのかも知れません。近未来に実現するような話であれば、政府や与党幹部の同意を得ずに進められるレベルの案件ではありません。政治家に打診すれば、即座に漏れることになります。そんな情報は全くありません。23日に自民党がデジタルマネーに関する制度案を取りまとめると発表しました。しかし、これは、民間企業によるデジタルマネー発行に関して、個人情報保護やAML対策を求める法制化を想定しています。CBDCの話ではありません。今回の新設グループは、これから、いろいろと調査研究し、各国内で根回しが行なわれ、徐々に(例えば国内銀行間取引やクロスボーダー取引など)に採用されることになるでしょう。その場合は、SWIFTや全銀ネットなどへの影響が先に出てきます。

日経新聞は強く反応して23日の朝刊にも大きな記事を二つ掲載しています。利便性や効率性などのメリットを並べるとともに安全性や匿名性などの懸念も述べています。中国の通貨覇権を目指した動きやリブラなど民間大手ITによるプライベート通貨発行の動きなどからして、中銀としては準備を進めておく必要があるのは間違いありません。記事を書いている記者名を見ると、仮想通貨ブームを煽った社会部や産業部(IT関連)の記者ではありません。かなり冷静な書き方をしています。年末に報告書が出てくるまでは、憶測記事に留まるでしょう。何せ、中央銀行員の口は固い。

安全性や匿名性に関しての懸念は、割り切りというか運用ルールと技術でなんとでもなります。CBDCを民間銀行経由で発行するのか、中銀が直接発行するのかによりますが。匿名性に関しては、資金移動データに個人を紐付けするかしないかという問題で、決済仲介業者の場で、個人特定キーを外してしまえば良いでしょう。わが国のマイナンバーは中央管理システム内では素のマイナンバーを使いますが、それと接続する利用機関では別の番号を使用しており、両番号の紐付けには人間は関与していません。(建前ですが。)こうした方法も可能です。全体主義国家としては、匿名性は認めたくない筈です。

安全性ですが、今のブロックチェーン前提の暗号通貨では、危険極まりないことは事実です。しかし、量子暗号技術などを使えば、問題を解決できるかも知れません。仮にCBDCが普及すれば、GDPの20〜40%と言われる各国の地下経済にとって大きな打撃となります。犯罪資金が回らなくなります。そうなるとマネロンを支援する金融ビジネスが出現します。これは儲かること間違いない。それを専門とする銀行を創る国が出てくるかも知れません。

筆者は、仮想通貨が出てきた時から、中銀がデジタル通貨を発行すべきだと考えてきました。経済活動の効率化というか変革が可能となります。高齢者や病人などの弱者も助かる。数字4桁のパスワードではなく、生体認証などやキー入力ではなく音声入力も可能というのが前提ですが。大きな問題は、民間銀行が不要になるのではないかということです。決済、送金はシステム上で完結します、CBDCに利息をつけたら、預金も中銀一つあれば済む。すると、銀行は貸付に必要な前提機能を失ってしまい、単純な貸金業になってしまいます。そうなると資金調達力のある銀行が一人勝ちしますので、産業として消滅してしまうでしょう。信用創造機能がなくなれば、資本主義経済活動がなりたたないという意見がでてきます。その代替策として何が考えられるのか?面白いテーマです。

今年末に出される当グループの報告書がどこまでの内容をカバーするのか予見できませんが、そこから国民的な議論が始まるでしょう。すると将来(20年後か30年後か)の銀行業、銀行機能は何を求められるのかが見えてくる筈です。やはり、金融業のDX化は待ったなしです。

                                            (令和2年1月23日 島田 直貴)