人材の育成遅れ、DX進まず

日経コンピュータ2019.12.26の特集「断絶のDX」(1500人調査で判明、経営層と技術者のズレ)特集記事です。わが国でDXが進まない原因として@経営層と現場に溝 A自信過剰の経営層 B人材育成の遅れ CAI人材に給与の厚遇はあるが、ITインフラ・スキルが圧倒的に不足 というレポートです。詳しくは同誌を参照して下さい。

金融業界を見ても、納得のいく記事です。経営層から、しばしば、DX組織やDX人材の悩みを相談されます。内容は、「自分はIT素人ではあるが、DXの重要性は理解している。いろいろとやりたいことがあり、DX組織を立ち上げたが、思うように進まない。要は人材の問題だと思うのだが、社内に適材がおらず、外部から折角採用しても、2、3年で転職してしまう。」と言います。

その銀行の中間管理職や担当者から話を聞くと、「ウチのトップはDX、DXとやたら騒ぐが、何の目的でいつまでに何をして欲しいのか、腹落ちしない。必要な人、権限、予算はろくに手当てしてくれない。ITを判っていないので、最新技術を使えば短期間に少ない費用で銀行が変わると思っている。」と言います。まさに、当記事と同じ状況です。

とはいえ、DX部署が組織横断で編成され、社内公募や中途採用などで人材を手当てした銀行が多い。何かしないと拙いので、他行でやるような新サービスのPOCを始めて、メディアに発表する。そこで、一息ついて、数カ月もせずにPOCすら休眠となる。この繰り返しです。メディアは銀行の発表を受けて華々しく記事にしますが、その後のフォローは一切しません。米国アメリカンバンカー紙などは、発表時だけでなく、一年後の成果を取材して、失敗だとか好調だとか、成功だとか、その理由を含めて報道してくれるのですが。メディアのレベルは、我々読者のレベルを反映しているようです。

組織はいつでも簡単に創れますが、スキル人材には時間と金がかかります。中途採用は、時間を稼ぐには良いのですが、続くことが少ない。そもそも、ITスキル、金融業務知識、ビジネス・スキルを合わせもつ人材がわが国に多くはない。分業化し過ぎました。法外な報酬を出すか、楽しくて仕方のない案件や職場を提供できなければ、来てはくれないし、騙して採用しても続きはしない。

そこで社内の優秀な人材(銀行員としてだけでなく、イノベイティブでリーダーシップのある)をトップ自らが選抜して、外部に武者修行に出向させます。本人は、出世コースから外れたような気になりますが、頭取に因果を含められて、とにかく頑張って早く戻ろうと考えます。出向先では、それまで知らなかった人達や仕事、情報に接します。途端に面白くなって、いろいろなアイデアを出し、オープンイノベーションに走り廻ります。そこで気付くのは、「銀行に戻って以前のような仕事をやるのか?DX組織に配属されたとしても、あの古い考えと仕事振りの人達とはやっていける自信がない。」ということです。

最近は、銀行が何か新しいことを始めようとして社内公募をかけると、大勢が応募してきます。それも、各部署で期待される若手が多いそうです。では、誰を選抜しようか、その基準はどうしようかとなります。どうしても、スキル、経験、意欲で決めてしまいます。筆者の経験では、その成功率は3割未満。思考方法、行動パターンなどを含めた数値化が必要となります。米国には、それを計測する公開メソッドが数多くありますが、日本には少ない。あっても知られていないし、業者に頼むとやたら費用と手間がかかる。

加えて、一人では何もできませんから、チームが必要です。同じタイプばかりを集めると、チームとして機能しない。旨く組み合わせたいのですが、それにも計数化が必要になります。筆者は、コンサル・チームを編成する時には、案件によって様々な思考・行動パターンの人材を組合せましたが、その時に血液型や長男か末っ子かなども組み合わせました。親が自営業だとか公務員だとかも材料にしました。(今日ではご法度の個人情報ばかりですが。)自分で驚くほど効果的でした。

11月1日付の日経XTECHで住友生命のDX人材発掘の新手法を紹介しています。有料記事ですがhttps://tech.nikkeibp.co.jp/pdf/NOS/20191101/4551378/?ST=nxt_chargeで閲覧できます。

内容は大きく、@イノベイティブ資質 A仕事の実行力 BDX関連専門知識 の3分野で、細かな質問への回答を計数化します。DX塾と銘打ったワークショップなどでトレーニングすることで各資質に磨きをかける仕組みも作っています。一般的に保守的とされる生命保険社員でも刺激を受けたり、自らの弱点や強みを認識するなど目に見える効果があるそうです。同社の主力DX商品であるVitalityの開発、デリバリーを通じて得た知見を活用しています。線香花火のような瞬間的なDXが多い中、住生はDXでビジネスモデル改革を進めています。DX人材はその中核資源であり、持続的な差別化手段です。

このメソッドを開発した情報システム部の岸担当部長が参加する日本イノベーション融合学会が、DX検定を始めました。https://www.nextet.net/kentei/ifsj-itbt/ 自分自身のDX資質を見える化して、強化する手段を考える際に有益でしょう。技術や知識の資格だけでは、AIに勝てません。

 

                                (令和元年12月27日 島田 直貴)