銀行API契約締結状況 (金融庁が調査結果公表)

金融庁は、令和元年11月15日付で、銀行と電子決済等代行業者との契約締結状況を調査した結果を発表しました。当件に関しては当コラムの8月22日付でも触れました。フィンテック事業者などが、銀行の要求する接続手数料が高すぎると悲鳴を上げていることから、メディアが銀行の姿勢に批判的な記事を書いていることに関連してコメントしたものです。銀行の都合も理解すべきだという論調で書きました。この金融庁調査は、公取が10月23日に、事務総長談話として、キャッシュレス事業者と銀行の接続契約等に関する実態調査をするとの発言の後だけに、注目されると思ったのですが、メディアは何の反応も示していません。要は、調査結果を見ても記事にできるような内容がないということなのでしょうか?

金融庁は、来年5月のスクレイピング禁止期限を控えて、期待通りに両者間の接続が進まないことに焦りを感じているようです。折角、銀行法まで改正したのだと、幹部達が銀行トップに対して、事あるごとに接続促進を要請しています。それでも、進まない理由が理解できないようです。そもそも、前提がずれていると思います。フィンテック事業者などは、銀行との接続を切望している。銀行に、接続を努力義務化すれば、一挙に進展する筈だとの前提があったのではないか。

確かに銀行としてはスクレイピングなど、危険極まりない接続形態を法律で禁止してくれたら、有難いことは確かです。しかし、銀行にとって一文の収入にもならず、ネット・トランザクションの90数%を占める残高照会は、ネットバンキングの外部委託手数料や決済ネットワーク手数料などの負担が増すだけです。この問題への対応は、両者間の契約で解決しろとなれば、銀行としては嫌なら止めろと言える立場ですから、コストの受益者負担を求めることになります。

加えて、金融庁は登録事業である電代業者に対するコンプライアンスについて、銀行ほどのレベルは要求していません。銀行としては、対顧客において電代業者のコンプラ違反であっても、顧客から非難される可能性がある限り、電代業者に許容レベルでのコンプラ遵守を求めるのが当たり前です。それができないのであれば、法的に銀行の免責条件を明文化し、社会に周知してもらうしかありません。その動きは全くありませんから、自分の身は自分で守るということになります。メディアが書くように、「敵に塩を送れるか?」などと考える銀行員を見たことがありません。そうすれば自分が埋没することになると銀行は理解しています。要はコストの受益者負担とコンプライアンスの問題でしょう。

公取事務総長は、銀行に独禁法違反の疑いがあるとして調査するとの発言だったのでしょうか?メディアは、銀行は戦々恐々とか、やぶ蛇をしたとか書いていました。発展途上国のマスメディア並みの書き方でした。しかし、公取が公表した事務総長発言内容は「未来投資会議などで、キャッシュレス事業者に要求されるチャージ手数料が高いとの指摘に対して、キャッシュレス決済や家計簿アプリに関する実態調査を行なう旨を説明した。これら取引の実態について公取としては、良く把握していないので、まずは実態を調べて、取引慣行や規制等が新規参入の妨げになっているかどうかを把握したい。」ということです。実態を調べれば、銀行が独禁法に違反する行為をしていないと逆証明できることでしょう。むしろ、ネットワークでトランザクションの仲介サービスを提供する事業者の価格や、フィンテック事業者のコンプラ不備があぶり出されるかもしれません。そもそもが、さしたる利用者が自行顧客にいないのに、何故、高いコストとコンプラ・リスクを負担しなくてはならないのか?公取も説明できない筈です。

金融庁の契約締結状況調査を見ると、面白い傾向が見て取れます。5〜9の電代業者と契約している銀行は7行です。3メガと住信SBIネット、ジャパンネットのネット専業銀行2社(他のネット銀も3、4社)、そして地銀の中国、北洋の2行です。地銀では、きらぼし、第四、伊予、福岡、親和、富山第一、熊本が4社と契約しています。3社と契約しているのは、東邦、武蔵野、千葉、京葉の4行です。名前をあげた13行のうち、TSUBASAアライアンス参加行が7行、FFG傘下行が3行です。単独で対応しているのが、きらぼし、京葉、富山第一の3行です。それぞれ、NTTデータ、日立、富士通をメインベンダーとして、頑張っていることですが、これからのデジタライゼーション化に対応するには、アライアンスの重要性が高まっているということでしょう。

アライアンスの範囲が広がり、特に地域内の口座シェアの高い銀行の参加が増えると、アライアンスが決済ハブに進化したり、他社商品・サービスの販売ハブになり得ます。預金口座間でダイレクトデビット/クレジットが可能になります。外部の仲介ネットワークへの支払もありません。地域通貨やマイナポイントなども、余計な手数料を払いながら、ハブと称する迂回ルートを通らずに済みます。

狭域高密度ではなく、サイバー上で広域高密度のチャネルが構成できると、様々なサービス展開が容易となります。フィンテック事業者だけでなく、幅広い一般事業会社にとっても、付加価値の高いサイバーチャネルが実現することになります。ヤフーとLINEの経営統合だとか、QR決済網の過当競争だとか、飲み込んでいく可能性を感じます。

モバイル・ユーザーのアカウント数で競争する状況が、いつまでも続くとは思えません。決済を通じて、顧客の情報を集めるなどと近視眼、自己中のネットワーク化は、早晩、行き詰まると思います。遠くない将来、信頼を基盤に深いリレーションシップをコアとするエコシステムができることを期待しています。

 

                    (令和元年11月21日 島田 直貴)