仲介業の規制緩和へ (金融審議会がルール見直し)

日経新聞の令和元年10月31日付記事です。金融庁は金融審議会でインターネット販売などの金融仲介業者の規制を見直しています。業種別の登録制度を一本化し、元売り金融機関の業務・行為指導を受けずに販売仲介できるようになりそうです。この議論は、金融審議会の「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」で昨年から検討されてきました。今年度から正式テーマとして本格的な審議が行なわれ、この日経記事は10月30日に開催された第3回WGの審議から掲載されています。

金融庁は、新仲介法制に関して、@ワンストップの仲介業者という新しい類型を創設する。A複数の業種に関する仲介業を単一の参入規制で認める。B利益相反に留意しながらも、商品、サービスに応じた緩い行為規制を採用する。C新たなタイプの仲介業者には所属性を採用せず、顧客保護ルール(例えば、仲介業者の損害賠償責任の負担能力を担保する仕組み)を採用するなどを原則と考えているようです。

昨年来の審議から筆者は、海外のような独立フィナンシャル・プランナー(IFP、IFA)の創設をイメージしていました。これが実現すると保険や証券の販売代理人などだけでなく、銀行代理業者を含めて、総合的なIFAがわが国でも出現し、それまで特定の金融機関に所属していた営業員が、独立して殆どの金融商品・サービスを販売するようになると思っていました。この場合、今の銀行営業渉外などとバッティングするようになるとの見方が出てきます。

ところが、金融庁はそこまでは考えてないようです。この新類型の仲介業者は、「オンラインを念頭にする。」と言っています。更に「対面で仲介を行なおうとする事業者の参入がありうることに留意が必要。」とも言います。ということは、ネオバンクやチャレンジャーバンクが銀行を設立せずに、総合金融販売の仲介を行なう方法が有効になります。この場合でも、対面でアナログ情報を活用した対面セールスが当面は強いでしょう。ネットだけで販売できる商品は、単純で画一的なものになります。ロボアドや投信のネット販売等から判るように、ネットで完結する金融取引は現実にはありません。結局は、紙が溢れますし、それを減らしても電話は抑えられません。

金融庁は新しい仲介業者に対しては、日常的で単純な商品に限る、取引金額や契約期間等を限定する、代理(仲介には大別して代理と媒介がある。)は契約当事者間に直接法律効果が発生するので認めない、一定程度の財産的基礎を求めて賠償資力を確保するなどを検討する予定です。これは、利用者保護が目的ですが、結果として新規参入者にとって、仲介だけではビジネスモデルが成り立たない恐れが大です。結果として通信事業者やEC運営事業者などが、本業と組み合わせて、付加価値を高めるというインセンティブしか出てこないのではないか。

むしろ金融機関が、ネットサービスを使って、総合金融代理サービスを行なう方がメリットがありそうです。チャットや電話でインサイド・セールスを行ない、見込みの高い顧客には対面で詳細な説明を行ない、契約行為等の事務をネットで行なえば、コストを抑えながら高い確率で窓販ビジネスを拡大できそうです。

こうしたネット経由の金融仲介サービスが出現するとして、ITでは何を準備すれば良いでしょう。マーケティング、販売、契約・口座開設、取引などのプロセスをアンバンドルした上で、特定顧客向けにリバンドルする機能が必要です。同時に顧客毎の情報や取引履歴を蓄積してカストマイズ・サービスを提供する機能も必要でしょう。AML等コンプラ対応も不可欠です。こうしたサービスを仲介業者に一元的に提供するプラットフォームが出てくるでしょう。

それでも、全てネットで処理するというのは、自ら顧客層を限定することになります。顧客が特定の金融商品・サービスをネット検索するのは、一定のニーズが明確化している場合です。大半の顧客は、シーズはあってもニーズまでは自覚していませんから、検索自体を行ないません。その点、優秀な営業員は対面を通じて、顧客のシーズやニーズを把握できるスキルがあります。AIで代替できるとしても、それはあくまでも営業員に対する支援にとどまります。

最近、流行り言葉になったBaaSが実用化されれば、元受け金融機関は、ネット仲介業者に商品や事務の処理機能をマイクロサービスとして簡便に提供できますが、まだ、こうした仕組みの具体的な検討やスキームはありません。二人羽織の半デジタル・サービスで始め、その経験を積み上げて、デジタル完結するAI仲介に発展するというステップになるのでしょう。それに時間はどのくらい必要なのか?それまでに既存の金融機関や新規参入者は、新類型の金融仲介を活用した収益源を開発できるのか?伝統的な金融機関は、金融仲介の精度変更に対して無関心です。仲介という言葉に惑わされてはいけないと思います。金融機関のチャネル戦略として考えるべきです。そして、時間軸と行動が必要です。

 

                   (令和元年10月31日 島田 直貴)