AI 使いこなす人材育成 (文科省がカリキュラム策定)

日経新聞の令和元年8月28日付記事です。文科省が10の大学と共同でAI活用人材の育成カリキュラムを策定し、公開する計画だそうです。連携する大学は、東大、京大、滋賀大など国立大が6行、他に理工系、農学、医歯学、人文科学など専門分野に強い大学を選定します。策定したカリキュラムには、特定分野での具体的課題や解決策を作る内容を盛り込み、その際には実データを使用する。策定したカリキュラムは公開し、全国の大学などが利用できるようにする。初級レベルのカリキュラムは今秋にも公表したいとしています。

政府は6月にAI戦略を公表しましたが、その中で25年までに年25万人のAI利用可能人材を育成する方針を掲げています。教育対象は、大学と高専の学生の総数50万人の約半分です。AIリテラシーを学ばせる為に、残りの大学生、高専生25万人と全高校生100万人にもAI基礎の教育を行なうとしています。文科省の計画は、政府方針を受けて、できるだけ早期にAI教育の具体化を図ろうとするものです。

当コラムの今年6月5日付で、政府のAI人材育成目標につき、実現性を危ぶむコメントを書きました。多くの方から、同感だとの反応を頂きましたが、ではどうするかという議論からは、やはり企業が動かないと駄目だとなりました。下手をすると数学や英語のように、AI嫌いを大量生産したり苦手意識だけを植え付けないかと心配する声が多かった。とはいえ、文科省が具体的に動きだしたことは大歓迎です。拙い点は逐次直せば良いという前提付きですが。

筆者は、最近、金融機関に全行員プログラマー化を提唱しています。数年前にGEが出した経営方針をマネしたのです。一方で、東京の大手ベンダーを頼っていては、地方の経済の生産性向上が進まないとして、各地域にIT専門学校を作って、それを地方銀行などが資金や就職などで支援することを提言しています。その専門学校のコアがAIやデータサイエンスだろうと思っています。

そう叫んでいますと、地方のIT企業組合からの講演依頼や、金融機関行職員のITスキルがこれからの戦略的要素だと考えるメディアからの取材が増えてきました。筆者の説明は以下のようなことです。

AIのエンジン、アルゴリズムを作るようなスキルは放棄しよう。というよりは、実現不可能だし、米中印の質量には到底太刀打ちできないので、ここはあきらめる。応用利用技術を身につけて、AI純テク・ビジネスよりもAIを活用したアプリで生産性アップや営業強化を実現しよう。その為に全社員がAI利用スキルを身につける。Excelと同じように使う。それを、「車を作らないで良いから、運転は自分でしましょう。」という言い方をしています。

地域密着型IT専門学校により地域特化型のITエンジニア集団、それもAI関連スキルを持つ人達、これをどのように育成するか。地銀など地域金融機関、地元IT学校、大学、地公体、経産局、財務局などの支援は得られます。ただ、肝心の主体者を誰にするか。それとカリキュラムと講師をいかに確保するか。これが課題となります。主体者は地銀になってもらえる可能性は高い。役所では駄目。主体性がないから。講師はいろいろな企業やIT企業OBなどが助けてくれるでしょう。インセンティブがあればですが。最大の課題はカリキュラムです。本当に使える人材を育てようと思うと、収集がつかない程にカリキュラムの範囲が拡がってしまう。

今、考えているのは、AI基礎研修の次に、何かのツールを使ってみる方法です。そのツール利用したら効果のありそうな企業の担当者も一緒に研修を受ける。ツール・ベンダーにとっては販売促進の手段にもなりますし、利用者ニーズを吸収する場にもなるでしょう。学生にとっては、実業社会の人の作り方やチェックポイントが参考なりそうです。企業には、簡単ではありますが、ツール評価とPOCになる。それを繰返すと、歴代の参加者によるエコシステムの土台になるかもしれない。

こんな妄想をしているのですが、この妄想の契機になったのが、DataRobotです。3年ほど前に知りました。米国のIT企業であり、同社の製品名でもあります。機械学習・深層学習のアルゴリズムで主要なものが組み込まれています。数理統計機能も入っています。作っているのは、世界トップクラスの数理プロ、データサイエンティス達です。頻繁に機能が追加されます。利用者がデータを投入するとツールが該当しそうなアルゴリズム数種類で処理します。アルゴリズム別の結果を見ながら、利用者が設定を調整します。それを繰返す。画像認識AIではありません、そんなことは構わない。グーグルやアマゾンにやらせておく。こちらは、その成果を利用すれば良い。DataRobotは、自然言語処理AIと数理統計の組合せAIとでもいいましょうか、それがオンプレでもクラウドからでも使える。

AI利用の課題は学習データとビジネス知識ですが、DataRobotの場合も同じです。ですが、使ってみることで、利用する時のポイントを学習できる。そのポイントを深堀する。それが済んだらポイントを変える。その繰り返しがカリキュラムではないでしょうか?英語教育と同じで、文法や暗記から入るとつまらない。旅行英語、生活英語をコミュニケーション・ツールとして実践で繰返す。ある程度進んだところで、スペルやボキャブラリを学び、更に進んだら文法でそれまでに学習したことを整理する。この順番の方が、楽しく実践的なカリキュラムになると考えます。

8月2日付の日経新聞に、「AI教員育成 企業が支援」という記事がありました。DataRobotがAIを教える教員の育成や授業支援を始めるとありました。プリファード・ネットワークスが初心者向け教材を無料で公開とも紹介しています。ソニーもAIソフトの研修プログラムを社外に提供とあります。私の友人達は、PFNの公開教材やツールを使っていますし、中には米国の大学が提供するオンライン講座を受けている人もいます。近視眼的な金儲けにはなりませんが、社会貢献として研修機会やツールを提供してくれる企業が増えることを期待しています。文科省もウォーターフォール式カリキュラムだけでなく、アジャイルでオープンな研修カリキュラムと教材を開発して欲しいものです。

                                          (令和元年8月30日 島田 直貴)