金融のIT共同化 (十八・佐賀・筑邦の稼動延期)

ニッキン11月1日号によれば、表記3行は2004年1月の新システム稼動予定を2年ないし2年半延期すると発表しました。数ヶ月前から開発が相当遅れているとの話を聞いていました。参加行のある役員は「2年近くも作業してきながら、突然、2年遅れるというのは、一体どういうことか?」と憤っていたものです。

今回の発表は、みずほケースの反省を踏まえて慎重を期す・・ということです。しかし、銀行IT経験者からすれば、納得できる理由ではありません。慎重を期すのであればテストや移行方法の堅確化の筈ですので、2年以上も延ばす理由になりません。これほど大幅な遅延ということは、設計に根本的な欠陥があるか、根本的な業務変更により、全面的にプロジェクトをやり直すことを意味しています。みずほ銀行も、他社のプロジェクト失敗の言い訳に使われたのでは、何とも憤懣やるかたないことでしょう。

ブームに乗って共同化を決めたものの、共同化に必要な前提条件を整備していなかったので、共同作業が不調だったのではないかと思われます。「延期によって基本的に大きな障害はない」そうですが、ならば何故、時間・労力・費用をかけて新システムにするのかという矛盾が出てきます。また、地銀の共同プロジェクト遅延の際は、どういうわけか2年の延期とされます。アウトソーシングするとIT経費が20%節減できると、どの銀行も言います。本当に要因を分析して積み上げているのかと疑問に思うほど同じ数字が出てきます。経営者も堪らないだろうと思う反面、その方が経営の承認を得やすいのか・・などとも考えてしまいます。

共同化を進めている地銀の役員さん達の話を聞きますと、

・意見調整が出来ない、遅い。

・ITベンダーが業務を知らない、こんなに詳細に説明している位なら自分で作った方が早い。

という不満が共通しています。共同化が不調な理由を象徴しているようです。

まず、大前提である業務要件決定におけるガバナンスが不明確です。これは、担当者の責任ではありません。経営が、決定の基準と仕組みを提供していないことや、トップの参画が不足していることを意味しています。

次に、実際の開発をベンダーに丸投げしているのです。複数の顧客企業(それもプライドの高い銀行です)を仕切れるほどカリスマ性のあるPMは日本に何人もいません。ましてや、銀行員同等以上の銀行業務知識を持ったエンジニアがいるという幻想は捨てるべきでしょう。銀行員ですら、業務全体を熟知している人は稀です。

日経金融11月1日号の地域金融特集で八十二銀行を中心とした「じゅうだん会」のプロジェクトが紹介されています。開発案件は参加8行の協議で決定するものの、実際の作業は八十二銀行が一括して請け負い、各行の新システム対応(移行やカストマイズ)はIBMが個別に受託するという仕組みです。前述のガバナンスと開発主体が満たされています。八十二銀行は第三次オンラインを琉球銀行と共同開発しました。IBMは、同時期に信託銀行の共同開発も手がけています。その時の経験を活かしているのでしょう。

地方銀行は、IT費用節減という目標で安易に共同化を決定してしまう傾向があります。共同プロジェクトの怖さは、複数参加者の最も弱い部分で馬脚を現すということです。牽引する役割と、弱い部分を補完する役割を確保しておかないと、費用と時間を無駄にすることになります。