オリガミが銀行口座と連動したスマホ決済

日経新聞の平成30年4月24日付記事です。スマホ決済のオリガミが、みずほ銀行、三井住友銀行と連携して、預金口座と連動させるアプリを開始すると発表しました。同社は、すでに大垣共立銀行、青森銀行との間で口座直結型のスマホ決済を提供しています。リアルタイムで代金を引き落とします。ダイレクトデビットですので、クレジットを持たない人でも使えるようになります。銀行でFinTechを担当している人以外には、クレジット払いだけでなく、預金口座からも引き落とせるというだけのことでしょうが、この意味は大きい。

まず、クレジットカード会社への加盟店手数料が不要となります。ただし、加盟店は顧客の口座と同じ銀行に口座を持っていないと使えないか、他行振込の手数料がかかります。この振込手数料は大きいですから、加盟店は自分の口座のない銀行口座からの支払いは受け付けないでしょう。メガバンクですと首都圏であれば、個人の口座保有率は20〜30%でしょうか?加盟店は、大手企業でしたら、3メガに口座を持つでしょうが、小規模零細店舗ですと、メガの口座保有率は高くありません。

その点で、地方銀行は圧倒的に有利なポジションにいます。個人、法人ともに50%以上の口座保有率です。当該地域No1地銀でしたら、70%以上となるでしょう。手数料なしで口座から口座に代金を移せます。ただし、オリガミに支払額の3.2%の手数料が必要でしょうが。その点、茨城県の常陽銀行の口座直結型スマホ決済は、手数料が支払額の1%だそうです。スマホ決済プラットフォームは銀行が提供します。決済代行会社は、最終的には、1%でも成り立つビジネスモデルを作らないと生き残れません。最後は銀行にひっくり返されるリスクがあります。ネットワーク・ビジネスはまさにオセロ・ゲームです。

オリガミは2月にユニシスとの提携で地域金融機関の勘定系APIとの連動するダイレクト決済基盤を発表しています。両社ともに良いところに目を付けています。銀行にとっては、CAFISやANSERといった決済関連プラットフォーム経由でスマホ決済を提供する方法があります。ただ、この方法は、取引毎にNTTデータに対する処理手数料が必要となります。決済仲介手数料に、この決済データ送信料(30円前後)を払ってまでスマホ決済を行なって採算の取れる取引がどのくらいあるのか。メディアは書きませんが、わが国の他人使用、共同使用のネットワーク・サービスは、大昔の技術とビジネスモデルで、昨今の利用環境には全く適応できていません。多くの銀行が、CAFISやANSER抜きのサービス設計に走っています。

ユニシスが提供する口座ダイレクト決済基盤ですが、ここにも面白いポイントがあります。通常のFinTechでは、預金口座と連動する場合でも、当該口座はインターネットバンキング・システム(IB)にあります。このIBも曲者でして、みずほや殆どの地域金融機関はITベンダーが提供する共同IBを使っています。そのIBは法人用と個人用とに分かれていて、どういう訳か、ベンダーを使い分けている。IBを提供するベンダーは、NTTデータ、日本IBM、日立の寡占です。このIB経由で口座ダレクト決済を処理すると、ここでもベンダー向けの処理手数料がかかります。それも、個人IBからの引き落しと法人口座への振込の両方です。このコストを銀行が負担できる筈がありません。その点、ユニシスは共同IBをやっていない(やっているかも知れませんが、筆者は知りません。)ので、カニバリズムを気にしないで勘定系APIを提案できます。

オリガミに対する地域金融機関の関心と評価はとても高い。理由は初期投資が不要、加盟店に顧客を送客するような仕組みを提供する、優遇策の効果評価などの支援もある、何よりも設備費用や手数料がないか、安い、そして透明性が高い、インバウンド用にアリペイも使えるなどが理由だそうです。

そのアリペイは日本上陸を目指していましたが、決済プラットフォームを使うと通行料をそこら中で取られる。ですから、銀行預金口座直結方式にしたいが、銀行が色良い返事をしてくれない。理由は、中国政府の個人情報保護政策にあります。自国のデータを持ち出すのは許さないが、他国のデータは何でも取り込もうとする。何をされるか、銀行としては顧客に責任を持てない。日銀や経産省が折ある都度に喧伝するアリババの顧客データ囲い込みビジネスモデルは、個人情報保護政策によって、いつ梯子が消えるかわかりません。メディアはわが国銀行の閉鎖性がアリペイの日本上陸を阻害しているかのように書きますが、全くの筋違いです。

もう一つ、QR決済がいつまで続くのかという問題もあります。QRは加盟店には良いですが、利用者の操作性はかなり劣る。電子マネーなら懐から引き出して、サッとすかすと完了ですが、スマホQRだと何回、操作が必要か。それと、QRの信頼性の問題もあります。QRコードとそこに書いてある購入商品、価格、加盟店名が一致していることをどうやって確認するのか?先日、中国政府(人民銀行)が一定額以上のQR決済を規制する通達を出しました。偽QRが多すぎることが理由です。1千円払うつもりが1万円、コンビニに払うつもりが正体不明の送金先なんてことが頻発しているそうです。

わが国では、3メガがQRの使い方やデータ様式を統一すべく調整中だそうです。石橋を何度も叩く人達が考えるのですから、中国のQRより数段安心できるQR決済になることでしょう。その時に、オリガミや楽天ペイなどがどう対応するのか。アプリの修正で済むとすればQRの仕様変更もさしたる問題ではありませんが。

                              (平成30年4月26日 島田 直貴)