三井住友銀がデジタル取引比率4割を目指す

日経新聞の平成30年2月13日付記事です。SMBCがPCやスマホによるネットバンキング取引を加速して、デジタル取引の比率を今の20%から2年で40%に高める計画だそうです。狙いはキャッシュレス化とペーパーレスによる人件費削減だということです。

推進策として、3月から口座開設時にネット取引契約をセットとする、本支店間振込の手数料を9月末までに無料化するなどです。キャッシュレス化にはSMBCポイントを4月に新設し、デビットカード利用を促進するとともに、SMカードと連携したポイント交換を可能とする。対象は2002年以降に口座開設した1100万人の個人客です。2002年以降というのは、本人確認法によって口座開設時に厳密な本人確認手続きを行なった顧客ということでしょう。それ以前の顧客は、支店やネットで別途、手続きが必要となります。

大手銀行のネットバンキング利用契約者は全個人客の20%程度というのが相場です。月1回以上使うアクティブ客はその10%というのも共通です。この3、4年変わっていないそうです。銀行にとってネット戦略展開のアキレス腱です。FinTechどころではありません。そこで、SMBCはアクティブ客を増やそうというのでしょう。こうした促進策とは別に、同行は最近、リアル・チャネルのサービスレベルを静かに(顧客からすると不意打ちですが。)落としています。店舗の廃止、ATM台数の削減、ATM手数料有料時間帯の拡大などです。SMBCが不便になったと感じた顧客が、利用を止めようか (といっても口座を解約するわけではなく、塩漬けにして他行の利用を増やすだけですが。) と考えているところに、ネットだとお得ですよとアピールしたいのでしょう。この順番は難しいところです。

個人客にとって、SMBCの支店があるところには、ほぼ必ず、BTMUやみずほがあり、多くの人はその3行全てか2行と取引している。つまり、よいとこ取りができるのです。リアル・チャネルはBTMUを使い、ネット・チャネルはSMBCを使うといった具合です。どちらの方が、預かり資産が多いでしょう?個人ローン獲得の可能性が高いでしょう?小口取引はネットで、大口取引はリアルでというのが自明です。1800兆円という個人金融資産の過半をシニア層が握っていることを銀行は一時も忘れるべきではありません。

では、これから新規に口座開設する人はどうでしょう。主に若い層で、スマホの料金引き落としや初任給の振込先登録などの時に開設するのでしょう。または、メガの支店がない地域から転入してきた人かもしれません。この層の顧客は、ネットバンクとの厳しい奪い合いになるでしょうし、預かり資産営業という面からするとおいしい顧客層とは言えません。

デジタル取引推進が悪いと言っているのではなく、ネット・チャネルだけを優遇すると顧客が離れると言いたいのです。ネットバンキング先進国とされる米国でも同じです。個人取引のスマホ取引比率が上がったからと、店舗とATMを減らした大手行がありました。少し急ぎ過ぎたようです。顧客は隣の大手行にシフトしてしまいました。そこで、その銀行はリアル・チャネル削減を一旦止めて、SNSやチャットなどで顧客とのワンツーワン・チャネルを強化しました。その上で、昨年から改めて、店舗とATMを減らし出しました。

ポイントは顧客に選択肢があるかということです。メガバンクが中心の大都市圏では、顧客には複数の代替策があります。SMBCでは、今回の目標のデジタル取引比率40%を実現することはできるでしょう。コストも減るでしょう。収益がどのくらい減るかが勝負の境目となります。競合するメガ2行がどう動くか、楽しみに待つことにしましょう。同じ動きをするようだと、がっかりですが。SMBCのシニア客を狙い打ちするようだと、日本のリテール金融市場が活性化するでしょう。

大都市圏以外ではどうでしょう。地銀が圧倒的なシェアを持ち、信金信組が緻密な支店網を展開しています。どちらも店を減らす気配はありません。減らせられません。しかし、他行やコンビニ、ゆうちょ銀などと提携しながらATMを減らし出しました。営業店内の事務要員を減らして渉外に移しつつあります。タブレットを使って、現金扱い以外は支店の機能とほぼ同じです。シニア客は店にいかなくて済む。現金に関してはデビットカードや地域マネーなどでキャッシュレス化を進めようとしています。

問題はネット取引が普及しないことです。ネット取引顧客を増やして、そのアクティブ率を上げないと、FinTech戦略の展開ができません。メガのように手数料を操作して顧客を誘導することは危険に過ぎます。有料でも使ってもらえる新サービスを出すか、地公体や勤務先と連携して、使わざるをえない、使うのが当り前のサービスを始める必要がある。

地域金融機関からFinTechをテーマとする講演依頼を受ける時に、話す相手が変わりだしました。昨年までは、役員会や支店長会が多かったのですが、今年は、法人取引先を集めるので話をしてくれという依頼が増えてきたのです。地域金融機関のオープン・イノベーションが始まったと感じています。地方では、個人と法人、ミレニアルとシルバーなどといった供給側論理のセグメンテーションに余り意味はないようです。

                                    (平成30年2月20日 島田 直貴)