全銀XMLシステムの当初接続は88行

全銀ネットはZEDI(全銀EDIシステム)の稼動を今年の12月と予定していますが、稼動当初の接続機関は88行になると平成30年12月9日付ニッキンが報じていました。従来の固定長の為替電文だと請求の消し込みなどが自動化できず、諸外国では送金電文をXML化することで合理化を実現しているとして、大手企業や経済産業省、日銀などが銀行界にXML化を求めてきました。銀行界は、実際の取引先ニーズが見えないことと、全銀システムの改造に巨額の費用がかかる為に消極的な対応だったのですが、金融審議会の決済高度化に関する提言等に盛り込まれたことで、いよいよ実現の運びになったものです。

しかしながら、このZEDIに関する認知度が極めて低い。一般の国民で知っている人は殆どいない。企業においても、取引先の数が膨大な大企業の経理部門を除けば、関心がないのが実状です。名称が全銀EDIシステムとかXMLシステムとか馴染みのない用語であることも社会の認知を妨げているようです。金融機関の従業員ですら、一般の行職員は何のことだか知りません。そこで、全銀協は、ZEDI(ゼディ)という愛称をつけて、キャラバンで説明会を開いています。

そのZEDIですが、既存の全銀システムに組み込むと、43年間さしたる障害もなく稼動しているシステムの障害リスクを高め、改造コストも大きくなる。そこで、XML電文だけを別建てのシステムで処理することで、従来の全銀ネットに極力触らない工夫をしました。企業と銀行との間はXML電文で送信しますが、銀行のシステムで固定長の振込情報とEDI付記情報を分離したり結合しなおす電文変換を行ない、EDI付記情報はZEDI経由で送受信する仕組みにしました。要はバイパスを作っている。

ですから、企業側は従来方式で送金指図を行なってもXML方式で行なっても構わないのですが、銀行側はXML方式の場合に電文変換が必要となります。全銀側では驚くような費用が発生します。昔、政府系保険機関が全面的にXML化した時の予算が30億円でしたが、その数倍の費用だと聞きます。何故かは知りません。最近のベンダーは開発費の膨張をテストの所為にすることが多い。開発費用は高くしようと思えば、いくらでも高くできる。その費用ですが、正会員銀行だけでなく、全銀ネットに参加する他業態も負担します。XMLを使う大手企業との取引が少ない信金や信組などは、費用負担だけが発生し内部合理化にも顧客サービスにもならず困っているそうです。この追加費用を送金手数料に上乗せして受益者負担とする話は聞きません。

この費用を巨大な制度コストで終わらすのか、金融業界がペーパーレス化や商流ファイナンスに結びつけて、合理化や新たな事業機会につなげられるのか。より多くの企業がZEDIを使うことを契機に、XMLを使ったEDI化を進めることがポイントとなります。全銀協は、ZEDI開発ベンダーであるNTTデータと組んで説明会を実施しています。昨年9月〜11月にかけて東京、大阪で3回実施しました。商工会議所や経団連の共催や後援を得て、300社弱569名が参加しました。参加企業からアンケートを取っています。

当初から使いたいとするのが7%、取引先の状況次第が38%、同業者の様子を見るが20%、今利用中のパッケージ・ベンダーが対応すればが18%、懸念があるが6%、ニーズはないが5%でした。要は周り次第というのが大多数。いかにも日本的ですが、仕方ありません。全銀協としては、パッケージ・ベンダーのXML対応を頼ることになります。パッケージとはERPや会計ソフトです。

ビジネスコンテストなどを通じてアイデアも集めています。QR付きの帳票を利用して企業内業務の合理化とEDI化する案などが上がっています。経産省も業種別の電文フォーマットや用語の標準化を進めようとしています。もっとも、この経産省の動きは、30数年前のVANブーム以来、叫ばれ続けている方策ですが、一向に進展しません。上流に寡占的な大企業のいる業種でも試しました。その大企業に音頭を取ってもらうのです。しかし、中小零細企業に合理化を含めた効果はなく、殆ど反応がありませんでした。しつこい程、同じことを繰返して異なる結果を期待している。

中小零細企業の会計ソフトからXML化を進めようとの案もあります。主だった会計ソフトやクラウド会計のベンダーを集めて、共同でXML対応を進めようとの案です。1回、2回の会合は開催されますが、その後は自然消滅しています。誰も費用負担をしないからです。それだけのリターンが見込めない。新興国であれば、国が費用負担して一挙に普及させることも可能ですが、日本ではそうもいかないのか。日本は超大企業から個人事業までのピラミッド構造が出来あがっています。底辺が動かない限りは、上のメリットが消えてしまいます。発注元の大企業から妙な圧力をかけると下請法に抵触しかねない。

そこで、請求書のクラウド発行や電子契約書など、入り易いところから始める動きとなります。ただ、底辺企業からすると、経理担当の女性にクラウドの使い方を覚えてもらう煩わしさは、多少の印紙税削減だけでは比較になりません。中小企業数は約180万社、個人事業は約240万社です。個人事業で会計ソフトを利用するのは約25%63万、クラウド会計を使う企業は増加していますが、それでも3.8%9万社しかありません。他は、手作業やExcelなどです。仮にクラウド会計最大手の弥生がXML対応したとしても、個人事業全体の2%しかありません。この2%が先行して圧倒的な競争力を得ることが明白であれば話は変るのですが、それは期待というよりは妄想のようです。ところで、会計ソフトやクラウド業者が唱えるユーザー数は、どうも予備校が発表する合格者数程度の信ぴょう性しかないようです。

既存の商習慣が出来あがった世界でネットワーク効果を目指す新サービスを創ることは、いかにも難しい。個人相手であれば、マスコミやSNSで誘導できるかもしれませんが、零細といえども複数人が関わる組織体の場合は、レバレッジの効くサービスでなくては普及しないようです。マイナンバーも同様ですが、単純な置き換えサービスでは普及の速度が余りに遅く、提供者にとっては新旧併存コストが重くのしかかるだけとなりかねない。まさに、発明が必要だと思いますが、残念ながら筆者にもそのアイデアがありません。ZEDIで売上が急伸するようなアイデアがあれば良いのですが。

                         (平成30年2月14日 島田 直貴)