デジタル通貨取引インフラ (IIJが合弁会社を設立)

平成30年1月25日にIIJが新会社ディーカレットの設立を発表しました。日経新聞やNHKなどが報道していました。様々なデジタル通貨を一元管理する仕組みを作るということです。1月10日に合弁会社ディーカレットを設立済みで秋頃に営業登録を目標とするそうです。

営業登録とは聞きなれない用語ですが、通貨交換機能を持つ為に取引所を開設するそうですから、金融庁への登録のことだと思います。多様な業界のトップクラス企業20社が出資する見通しで、金融からはBTMU、SMBC、野村証券、大和証券、日本生命、第一生命、東海日動、SOMPOホールディングス、MS&ADなどが名を連ねています。IIJが慣れない金融の分野で随分と大きく出たものだと思いつつ、ニュースを聞き流していました。正直なところ、仮想通貨ブームに乗って、新しい仮想通貨取引所ができるくらいにしか思わなかったのです。

ところが、その翌日の26日夕方にコインチェックから500億円以上の通貨が盗まれたとの情報が飛び交いました。金額からすると驚きですが、国内取引所にもサイバー攻撃が繰り返されていることや、中にはガードの甘い取引所のあることも聞いていましたので、「あ〜、やっちまった。ブームに乗って金儲けばかり考えているから、ガードが甘くなったんだな。確かここは、登録申請しても金融庁がなかなかOK出さないところだっけ。」と思ったところで、「IIJも間の悪い時に大風呂敷を広げてしまったのか?」と改めて同社の発表資料を見てみました。IIJよりも出資する金融機関への悪影響が気になったのです。

筆者は、デジタル通貨は、いろいろ出ては消えていくが、MUFGコインとJコインのような信用度の高い発行主体を持つ通貨が基軸となり、交換・流通制度がブラッシュアップされていく可能性が高いと思っているので、ディーカレットへの出資企業にみずほが加わらないのは理解できるとして、MUFGが加わる理由が知りたいということもありました。意外だったのが、発表資料を見ると、よく考えたサービス構成であり、目指すところはキャッシュレスとスマートコントラクト社会だという夢を語る内容だったことです。仮想通貨ベンチャーの金儲けビジネスとは異なり、ソーシャル・ビジネスを目指すイメージが伝わってきたのです。IIJも昔とはかなり変わったようだと感じた次第です。

10年程前からブロックチェーンの可能性を確認すべく、FX取引プラットフォームや仮想通貨流通プラットフォームなど実験を重ねており、IIJの根幹技術であるインターネット関連技術と組み合わせることで、新たな社会インフラを開発・育成できると言います。ウォレットという口座管理機能(マルチ通貨管理、決済・送金、KYCなど)、種々のデジタル通貨交換機能、各種事業者間の連携機能、オープンAPIの三つの機能で24・365の通貨交換機能を実現するというストーリーです。要は、デジタル通貨経済のスタンダードを目指すということでしょう。セキュリティ技術者も充分な筈です。

マネタイズをどうするかという点では、加盟店手数料ではなく、システム利用料という形を想定しているそうです。つまり、プラットフォーム使用者から利用料を取るが、具体的サービスは皆で作りましょう、そのプライシング・モデルも各々考えて下さい。我々はインフラに徹します。プラットフォーマになりますので、その上で出資各社はPaaSなりSaaSなり自由に展開して下さいということのようです。クラウド事業者ならではの発想だと思います。

とはいえ、具体的なサービス・メニューはまだありませんので、誰からいくら取るなどは見えません。発表資料では、2022年に500万の会員・利用者から年100億円程度の売上をめざしている。個人の利用者だとしてしても一人当たり年2千円の売上で100億になります。余り難しくなさそうです。ただ、売上の3割程度が決済関連、7割程度が通貨取引関連だとしています。この通貨取引というのは、デジタル通貨間の交換取引だと思います。まさか、今の取引所のような投機取引ではないと思いますが確認していません。また、決済で20億円というのは少々甘過ぎという印象です。

金融取引では、取引当たり扱い金額による手数料の差はあまり大きくありません。ほぼ定額料金だからです。ですから、少額送金取引では手数料が高く感じられます。デジタル通貨はその割高感を改善できるツールなのですが、それをシステム手数料とすると、CAFISのような定額利用料になりかねない。この辺りは今後の検討なのでしょう。まだまだ詰めなくてはならない点が数多く残っていそうです。ヒット&エラー&アウエイを繰返す必要があります。それには、技術力、資金力、ビジネス発想力、サービス開発力が求められます。わが国には、これらを備えたIT企業はまだありません。IIJが日本のGoogleやAmazonになり得るか、楽しみに待つことにしましょう。出資する金融機関には機会を見つけて、資本参加して何をしたいのか聞いてみます。会員カードを集めても、競争力には結びつかないと思うので。

                     (平成30年1月30日 島田 直貴)