三井住友FGがOCR基盤でRPA

ニッキンの平成29年12月1日号にRPA関連の記事が複数掲載されていました。まさにRPAブームです。関心をもった記事は二つです。一つは、資産管理サービス信託銀行が、自社でRPAを開発して、低コストのソフトウェア・ロボットを量産している記事です。既に、16種類のロボットを開発し、10種類が稼動中ということです。それを開発したのが、現場の人達だというのです。各部門から10名を選抜し、集合研修とOJTを通じて、RPA開発スキルを習得させたそうです。今年度下半期にはさらに25人を育成する計画だとか。現場の実務に精通した人が、自身でRPAを作るのが最適だと考えたそうです。

意外に感じたのは、RPAを外販のツールでなく、内製するということです。(記者の勘違いか書き間違いかもしれませんが、確認していません。)わざわざ、内製しなくてもと思ったのです。しかし、考えて見れば、ツールを買えばその機能に合わせた自動化とせざるをえません。RPAといっても基本は、HTMLやExcelの行と列などを識別するだけですから、現在の作業手順を整理しながらソフトロボット化すれば良いとも言えます。頻繁に大幅変更される業務だとロボットの保守にかかる負荷が大きくなりますが、カストディを中心とした信託業務では大筋は変わらず、小さな仕様変更で済むものが多い。であれば、自分で業務組み込みのRPAを作ってしまえば良い。共通で使えそうな機能があれば、部品化して再利用すれば、より効率的なRPA化が可能となります。

サーバー型の高いRPAをベンダーに導入してもらって、ツールに合わせて処理手順を設定し、高いコンサルを雇って、単純な自動化で良いのに、やたら働き方改革だとか、全社的プロセスの見直しだとか問題を拡散させるよりマシなことは確かです。要は、Excelのマクロがシート内に閉じたものであるのに対し、Webや他のファイルにあるデータを連動処理できれば目的は達成できる。それをRPAと呼ぶか、ロボットと呼ぶかはどうでも良いという割り切りです。ベンダーの営業戦略に合わせる必要はない。改善や改革する時に一番の邪魔は正面からの反対論ではなく、賛成する振りをしながら、やたら問題を拡散させる動きです。

もう一つの気になったのは、三井住友FGがOCR基盤の構築を完了したという記事です。IBMのデータ・キャプチャ・ソフトと複数社のOCR認識ソフトを組み合わせたそうです。印刷文字だけでなく、手書文字認識ソフトも導入しています。自動帳票分類やテキスト分析機能によって、非定型帳票などから必要な情報を高い精度で抽出して、RPAと連動させるそうです。RPAへの期待が高まる一方で、紙の帳票やレポートがRPAの効果を減殺するという課題を解決できそうです。RPAとOCRの組合せは多くのベンダーが提案していますが、これほど本格的に導入するのはSMFGが最初だと思います。

少し気になるのが、OCRの精度です。銀行などに言わせると、精度が100%でないと困るそうです。1%でも間違って読み込まれると、間違い探しに大変な手間暇がかかるからです。直せば良いという簡単な話ではない。リジェクトしてくれた方が、はるかにマシです。IBMのOCRソフトがその機能を持っているかは知りません。先日、デモを見たサインポスト社のワンダーレジというAIレジは、商品を画像認識するのですが、当然、文字も認識できます。印刷文字は全く問題ないそうですが、手書き文字はまだ難しいそうです。それは仕方ありません。人間でも読み間違いがありますから。ただ、この技術だと読めないものは、読めないとリジェクトしてくれます。であれば、認識率が70%や80%であっても問題ありません。純粋に人手作業が減りますから。

音声認識して議事録に落すツールもあります。アドバンスト・メディア社などが代表です。昔は80%以下の認識率だったそうです。ディープラーニング技術によって95%程度にまで上がったそうです。ということは、今後も改善は続きます。95%の精度でテキストに落した原稿を、もう一度録音を聞きながら校正すると議事録が完成する。自治体の中には、議会の審議が終わって翌日には議事録が完成しているとか。これは大変な効率化といえます。要は、精度が人間のレベルになれば良しとすることです。二人かかりだった作業を、一人でできる。そして大幅な時間短縮となる。

RPAを活用することは大賛成なのですが、ユーザー部門がデバイス型RPAを使うと、ベンダーにとって殆ど商売にならない。特に大手ベンダーやコンサル会社には、商材として小さすぎる。そこで、いろいろな導入上の注意点を並べて、BPRを先にやろうとか、AIやBPMと連動しようとか、やたら話を膨らませる。理屈はその通りなのですが、現時点で人間がアナログ的に処理している業務がそうそう簡単にBPRで全自動化できる筈がありません。それはERPでも、さんざん懲りた筈です。人間の仕事には、やはりノリシロというか緩衝が必要です。ベンダーが言うような全自動化を進めるのであれば、まずは、理想的なプロセスを設計して、外部を含めた関係者の業務(処理とデータ)を全て乗せて、システム構築することです。それでも、全自動化はとても無理です。全自動を前提に新規に設立したネット専業の銀行や証券会社が、数年もすると外部からの紙に埋もれているのは何故かを考えれば、自明なことです。

                      (平成29年12月5日 島田 直貴)