システム統合 (広島総合・せとうち銀行)

10月3日の両行の発表(日経金融10月4日号)によれば、両行は2004年5月の合併と新勘定系システム稼動を予定していたが、新勘定の稼動が間に合わないので広島総合銀行のシステム(NTTデータへの委託システム、機種は日立)に片寄せすることで合併を図るということです。

これまでは新システムの稼動予定を明示していたものの合併時期は曖昧でした。NTTデータによる新勘定稼動が予定を大幅に遅れたので、合併時期を発表したと言っています。意味を理解しかねる理由付けですが。広総の森本社長は記者会見で「一年前に片寄せを決断していれば一年早く合併できた。一年間、無駄な金と時間を使ったと言われても仕方ない。2007年頃までに新システムに移行していく。」と語ったそうです。

極めて率直に経営判断の甘さを認めておられて好感が持てるのですが、何とも無責任とも悠長とも思えます。せとうち銀行の前田社長は第二地銀の中ではITを知ったトップです。このようなトップ陣に判断ミスをさせたのは誰なのか?

両行の経営統合は決して余裕をもった積極的・戦略的なものではありませんでした。再編方式も持ち株会社方式と合併方式にゆれました。時間も費用も一切無駄に出来ない状況の中で、どうしていい加減な新システム稼動時期を前提に経営戦略を考えたのでしょう?

数年前に地銀と第二地銀の合併構想がシステム統合の技術的制約を理由に頓挫したことがあります。多くの銀行経営者から「こんなふざけた話があるのか?技術の制約でシステム統合が出来ないとはどういう場合なのか?」と質問されました。私は「純技術的にはシステム統合に不可能はありません。ただ、ソフトは人が作るものであり、彼らが嫌だと言えば、強制して開発することは出来ません。人の統合ができないのであれば、合併なんてもともとが不可能なのです。」と答えていました。今回の件はIT部門とITベンダーが「やります。できます。」と言っていたことが出来なかったということでしょう。つまりプロジェクト管理の失敗が原因ということになります。経営が責任を問われるとすれば、プロマネの能力を見損ねたか、プロマネが力を発揮できる環境を作ってやれなかったかのどちらかということになります。 

不良債権処理を始めとした金融関連の大案件は先延ばしが続いています。もみじグループの一年の無駄は、致命傷にはならないでしょう。ただ気になることは、我が国金融機関(銀行だけでなく、保険も証券も)全てが、本気で改革する気が見えないことです。皆が他人任せで、何かあれば他責にしているように見えます。IT部門は「最後はベンダーが何とかしてくれる筈」ベンダーは「合併は千載一遇のビジネスチャンス、幾らでも金が取れる。」くらいにしか思っていないように見えます。ダメならプロマネを変えておけば言い訳できるとでも考えているのでしょうか?

地域金融機関で共同化やアウトソーシングが大流行です。しかし、二年もプロジェクトを進めてきて、今頃になって「稼動が間に合いません。二年ほど延期させて下さい。」などと言ってくるベンダーやそれを唯々諾々と受け入れるIT部門の話を立て続けに聞きました。緊張感も責任感もないものだと思いますが、それ以前に「コイツラ、本当はシステムもプロジェクト管理も素人ではないのか?」という疑問が湧いてきます。失敗を責めるのではなく、やる気と能力を責めたいのです。

しかし、今更ながら責任を追及したり、某大臣が言うようなハードランデイングを行なうには、もう時期を失してしまったかもしれません。世界で最も成功した社会主義国家である日本では、市場原理にもとづいた金融ビジネスやそれを支えるITビジネスは肌があわないのかも知れません。共同化やアウトソーシングが、「皆で渡れば恐くない。」という集団無責任体制の逃げ道になることが残念です。

プロであれば、出来ないことは理由を明示して出来ない旨を明言すべきです。もし、途中で出来ないことが判ったら、一時も早く報告すべきです。それが損害を最小化する唯一の方法です。

また、会社のブランドや肩書きで自社のシステムを委ねるような愚かな経営判断も止めるべきです。プロマネは個人技と生き様の世界です。社名や資格では判断できません。経営トップ自らがプロマネ候補とじっくり話し合って、人間として信用できるか判断すべきです。そして全面的な協業関係を作る必要があります。