北洋銀行が日本人材機構と地域企業向けコンサルティング事業

北洋銀行が、政府系の日本人材機構の子会社「北海道共創パートナーズ社」へ49%出資する資本提携をして、地域企業向けの経営コンサルティングを開始すると発表しました。11月21日の両社取締役会で提携を承認したそうです。その前日には日経新聞が大きく報道し、21、22日には各紙が報道していました。興味深いのは各紙の報道内容で、基本は両社発表に沿っているのですが、背景や両社の狙いなどがバラバラなことです。これは、プレスリリースで余り詳細な記述がなく、記者が個別に当事者から取材したことを表しています。報道とはこれで良いのだろうと思います。金融機関は、報道の正確性を目的に、個別取材に対応しなさすぎです。

提供するコンサルティング内容は、経営戦略立案、M&A、事業構造改革、組織設計、経営幹部採用などを含みます。当面、組織や人事に関する案件は人材機構が担当するそうです。北洋銀の石井頭取は「銀行員は経理、財務のアドバイス、融資の案内に走りがち。本来、お客が求める経営目線で顕在化している課題にどう取り組むか、潜在的課題をどう掘り起こしていくかが、課題だった。」そこで、人材機構と組んで、伴走型支援サービスの本格展開をすることを決めたと言います。

昨年までは、いろいろな会合で「金融機関はもっと顧客の事業目的達成を支援することに力をいれるべきだ。結果として金融ビジネスがついてくる。その際には、顧客の顧客を良く見て、そのニーズを掴み、解決策をビジネス・ソリューションとして提供すべきだ。殆どの産業はそれがビジネスの基本だ。」と主張しますと、多くの金融関係者はニヤニヤしながら無視するか、率直な人は、「それは銀行の仕事ではない。」と言い切ります。筆者は、腹の中で「あなた方のいう銀行とは単なる金貸しか?その程度なら、20年前のサラ金の方が、もっと顧客のニーズや都合を考えていたぞ。」と言いたいのを抑えたものです。

金融庁は数年前から、金融機関に持続可能なビジネスモデルの再構築を提言しています。「今の収益構造やコスト構造では早晩行き詰まる。顧客との共創を通じて、テーラーメードで付加価値の高いビジネスを展開すべきだ。さすれば、融資においても自分の首を絞めるだけの金利競争から抜けだせる。」と言うのです。それに対して、地銀からは「自分達は銀行法で出来ることが制限されており、地域展開も限定される。独自性のあるビジネスモデルを作れといわれても無理。」という声があります。そして、「もっと規制緩和してくれ。」と。すると金融庁幹部は、「何をしたくて、法にどんな制約があるのですか?なさりたいことが、趣旨として賛同できるのであれば、法を改正しますので具体的に言って下さい。」と返します。その通りだと思います。銀行法が邪魔ならば免許を返せば良い。(ただし、銀行でなくなった銀行員に何ができるのかという問題は残る。)このやり取りを聞いていた他の銀行の人達は、無意味な質問をするものだという表情で、とても冷やかでした。

決めて動く銀行もあります。本件のようなコンサル・サービスでいえば北国銀行です。経営管理、ICT、イノベーションなどに多くのメニューを掲げ、60数名の専任部隊を持っています。直近では年間6億円前後の収入だと聞きます。6億円の内容は判らないのですが、単純に見ると一人年間1千万円の売り上げとなります。大手コンサル会社だと4、5千万です。1千万では、とても独立事業にはなりませんが、その延長で融資や資産運用に結びつけば良いということでしょう。(この点は、独禁法とのからみが出てきますので、要注意ですが。)同行のICTコンサルには、ユニシスが支援しています。ユニシスは顧客である北国銀行の顧客を支援することで、北国銀行の付加価値を高めようとしているのでしょう。地域金融機関が開催するビジネスマッチングなどにも人員派遣を含めて多大な貢献をしているとも聞きます。同社は、現在、働き方改革も進めていますが、売上が多少減っても、社員の福祉と効率を追求した方が、結局は会社の為になると社長は決算発表の時に明言していました。

先日、10数年前には世界のベスト・エクセレント企業と言われたIT企業を訪問しました。社内ですれ違う皆さんに活気も意欲も見られません。短い間に、随分と社風が変わるものだと思います。上場などするから、株主から儲けろ儲けろと言われて会社を壊してしまうのだと思ってしまいました。

銀行のIT担当者が、支店の依頼を受けて取引先企業にIT関連の相談で訪問すると大歓迎されると聞きます。営業目的でなく、中立的で、技術も判る人が来て、親身に、かつ、具体的に相談に乗ってくれる。普段、ITベンダーから営業トークばかり聞かされて、何をどう判断して良いか判らなくなった中小企業経営者にとっては、暗闇に灯りが見えたような心地なのでしょう。この灯りがコンサルの極致です。

銀行が、コンサルティングを自行のバリュー強化と位置付け、ITスキルのある行員がICTコンサルを始めると、このベンダーはこんな営業をするのかと見えてきます。それは、その銀行の次のIT選択の際にかなりの影響を与えるでしょう。更に、銀行が具体的なソリューションとして、より安く、効果的なソリューションを紹介するようになると、何が起きてくるか?銀行員がコンサルとして外海へ出ていくと、ベンダーの品格や戦略、技術力が見えてくる。これもオープン・イノベーションと言えば言えます。

金融業界が、オープンでグローバル・スタンダードの世界に向かいだしました。わが国IT業界は、クローズで労働集約でOECD平均の60%しかない労働生産性です。銀行のコンサルが月間売上100万にも満たないのに、大手ベンダーの技術者は超長時間労働で顧客から月に百数十万円とる。IT産業を金融庁の所管にしたらどうかと思うのですが。

                         (平成29年11月22日 島田直貴)