邦銀連合で仮想通貨 (みずほFGのJコイン構想)

日経新聞の平成29年9月17日付けの記事です。みずほFGが9月14日にJコインの準備会合を開催し、ゆうちょ銀や地銀70行などが参加したそうです。みずほはこれまで、単独でのデジタルマネーを検討してきたが、プラットフォーム提供に変更して、8月から他金融機関にも広く参加を呼びかけました。MUFGコインとの統合も提案しているとのこと。実現すると、SuicaやNanacoなど電子マネーを包含する全国的な電子マネー・プラットフォームとなる可能性が出てきます。消費者は、目的や用途別に多数の電子マネーカードを携帯して、管理する必要がなくなります。記事では仮想通貨と表現していますが、実態は電子マネー(デジタル・マネー)です。

Jコインの仕組みは、以下のようなことです。Jコインの口座を作り、円と等価で常に交換を可能とする。つまり預金口座と連動させる。Jコインは、消費者の購買における支払いに使え、Jコイン口座保有者間での送金にも使える。その際には、割り勘の精算など様々な支払い方法に対応する。Jコイン管理会社は、決済や支払いデータを集約して分析することで、利用者や加盟店などに付加価値のある情報を提供する。個人に限る必要はないので、企業にも発行して業務上の支払等にも使えるようになるでしょう。みずほFGがコインを発行管理して自行顧客にプライベート・コインを提供するのではなく、オープン・コイン化してそのプラットフォームを構築する計画です。

筆者はみずほの方針転換は正しいと思います。今更、新たな電子マネーを発行してもSuicaやNanacoやEdyに勝てっこありません。むしろオープン化することで、先行する電子マネーを包含する方がシェアを確保できる。そもそも、電子マネーを有料とすることはできないので、誰からフィーを貰うかという問題があります。グーグルなどのビジネスモデルと同じです。具体的なサービス・メニューはこれから検討するようです。

当構想の主体は、株式会社BlueLabです。同社は6月に設立されました。米系ファンドのWill社が55.1%を出資して、みずほFGは14.9%です。他に伊藤忠、損保Jなども出資します。みずほの出資比率が低いのは、銀行法の出資比率規制に配慮したもので、実質はみずほFGが主導します。今回の準備会合を勉強会と称して、短期間の間に多くの地銀を招聘できたのは、みずほ銀の金融法人部門がフル稼働したからでしょう。しかし、これから大勢でワイワイガヤガヤと構想を練るとすれば、いつになったらまとまるのか、参加者全員が満足なんて構想ができるのか。

その点、MUFGコインの方が先を行っているようです。22日付日経は、21日のFIN/SUMウィーク2017で、MUFGがオールジャパンでプラットフォームを創る方針を表明したと報道しています。MUFGが何か発表する時には、殆ど構想が固まり、具体的な準備事項と担当者も決まっていることが多い。既に相当数の地銀から出向者を集めているとも聞いています。

こうなると、電子債権の時と同じように、メガ毎に全国版のデジタル・マネー発行となります。使う側の利便性を考えると、いずれは3メガのデジタル・マネーを連携させることになるでしょうが。それまで、地域金融機関は3つのデジタルマネー・センターと接続しなくてはなりません。そこで、NTTデータのCAFISかANSERで対応しましょうなんてことになると笑い話にもなりません。と言っても、3メガが共同でデジタル・マネーを発行するとなると、先行する電子マネーは存続すら危うくなります。つまり、独禁法と銀行法の他業禁止規定の問題が出てきかねません。

全国版でオープンなデジタル・マネーは、いかにもFinTechを象徴するサービスになります。銀行界にとってBRP推進上、最大の障害である現金の扱いを画期的に減らすことができます。ATMの価値は激減しますし、全銀システムの扱い件数も減るでしょう。商流決済・支払いのデータ入力も省けるでしょう。消費者は複数の電子マネー・カードを持ち歩いていますが、スマホ1台でアプリを使い分けることで店毎の優遇サービスを受けられます。家計簿管理もほぼ、全自動化できそうです。おつり貯金やイベント保険なども、一挙に普及するかもしれません。

しばしば、対比される仮想通貨は、支払い決済での利用はなくなるでしょう。単なる投機商品となってしまうかもしれません。仮想通貨口座とデジタル・マネー口座を連携させれば、決済機能を吸収できるからです。更に、デジタル・マネー事業者が仮想通貨取引所を兼ねれば、全て、ワンストップ化できます。そうなると、ブロックチェーン(BC)はどうなるか。デジタル・マネーをBCで作らなくてはならない理由は特にありません。SuicaやNanacoなどが使う既存技術の方が、安定しており、安くて速いかもしれない。ただ、スマートコントラクトのような機能で、多少複雑な処理を実装したり、情報を分散管理する必要が出てくるかもしれません。

いずれにせよ、JコインもMUFGコインもサービス内容、ビジネスモデルともに決まっていません。FIDOを含めたセキュリティや個人情報保護の検討も必要です。やはり、サンドボックスで叩くことが必要なようです。その際に、どの技術を使うか、どこまでサービスを広げられるかを見極めることができます。机上での議論だと、思いつきアイデアが百花繚乱で収拾がつかなくなる危険性があります。または、誰かがワンマン的に決めてしまって、多くの課題を引きずったままサービス・インとなる。こうした悪例は銀行界に数多くありました。

 

                          (平成29年9月25日 島田直貴)