ICタグ市場と価格動向 ( 凸版印刷が低価格化技術を開発 )

日経新聞の平成29年9月9日付記事です。RFID機能を持つICタグの市場が拡大しているそうです。アパレル用の簡単なタグだと一個10円を切ったとのこと。その原因は人手不足から作業効率化を急ぐ企業が増えて、量産化が進んでいるからだそうです。以前から書類管理等で採用している金融機関などが使うタグは、通信性能や耐久性が要求されるので、一個当たり数十円から数百円しますが、最近は製造や物流でも利用され、こちらも量産化による価格低下が期待できるそうです。

先日、経産省が大手コンビニと共同で、25年までに年間1千億個のタグを使って小売業の業務改革を進めると打ち上げていました。「またまた、経産省が大風呂敷を広げている。何十円もするタグを使えるのは、高額商品だけだし、そもそも、誰が手間のかかるタグ付け作業をするのか?」と思いつつ記事を読みました。

やはり9月9日付の日経に、凸版印刷が一個5円程度の価格を実現する製造技術を開発したとあります。台紙、接着剤、回路を書き込むアルミニウムなどの張り合わせ作業を大幅に効率化したとのことです。その結果、簡易型タグ一個10円を5円程度にできるそうです。大日本印刷も一個1円を目指した技術開発を進めているそうで、なんともわが国印刷業界が頼もしく見えてきます。

凸版も大日本も一般には印刷会社というイメージですが、実はIT企業としても活躍しています。この両社は何度か訪問したことがあります。印刷部門を訪問した時の最初の印象は、主要な顧客層が役所なものですから、時代錯誤と思えるほど、保守的というか明治時代のような組織風土と職場環境だと感じたものです。この数年は、ニューメディアやITをコアとしたハイテク部門を訪問することが多いのですが、様々な自社技術や提携先技術を組み合わせた製品やサービス、ソフトを開発しています。こちらの組織文化は、まるでベンチャーのように柔軟でチャレンジ精神にあふれています。感心するのは、この両極端の組織が一つの会社に併存していることです。経営者はさぞ、大変だろうと思うのですが、新旧文化を併存させながら、時代の変化に合わせていく経営は、金融機関にも必要な経営スキルだと思います。

随分と久しぶりにRFIDタグが話題になってきました。最近はスマホとの組み合わせでQRを使った決済サービスばかりがニュースになっています。以前、このコラムでも紹介したカラーコードも医療関係では普及しだしたそうです。磁気を使わないのが良いのだとか。QR、バーコード、カラーコードと違って、RFIDのICタグは、最大で数メートル離れていてもデータを読み取れますし、一度に複数の読み取りも可能です。ですから、スーパーなどでバスケットに商品を入れたままレジを通過するだけで精算が可能です。問題はタグの価格とタグ貼り作業、そして精算済み商品の磁気消去です。

タグには商品の個別番号だけ照射記録してサーバー側で価格管理する方法や、ブランクのタグに小売店で磁気を照射記録する方法等も開発されているそうです。精算時点でタグの磁気を消去する機器も簡単に作れるでしょう。ということは、タグを再使用することもできます。米国や北欧では、社員の手にタグを埋め込んで、認証デバイスにする実証が行なわれています。どうやって、タグを埋め込むのかと聞きましたら、注射器のようなもので、埋め込むとの回答。判ったような気がしないでもないが、どうして注射器でタグを注入できるのかはまだ調べていません。

こうして見ると、数年もたてばと我々の身体と周辺は、いろいろなタイプのバーコードだらけとなるでしょう。それらが、IoTと称して移動も履歴も管理できる。実に便利ですが、何となく怖いような気もします。30年以上も前に、財団法人流通システム開発センターの所長の話を聞きました。バーコードを普及させたいという熱意に圧倒されました。日本にバーコードが入ってきてまだ、数年という時期で、ITコストもまだまだ高い時代です。コードを貼る手間や読取装置つきのPOSも高額でした。コードの採番取得にも費用がかかりました。しかし、この所長は、日本の流通合理化にバーコードは不可欠だと信じて、通産省や関連団体、そして関連機器メーカーを説得して廻っていました。バーコードの発明は、1949年で米国フィラデルフィアにあるドレクセル大学の学生が考えだしたそうです。こうした先人の努力に様々な技術革新と普及努力で、2020年代には、第4次産業革命を支えるインフラとなる。何とも夢のある話です。

さて、金融サービスにおいては、RFIDタグやQRコードをいかに使いこなすか?まさにアイデア次第です。フィンテックにも使えますし、内部事務の効率化にも使える筈です。金融の世界では、ペーパーレス、キャッシュレス、カードレス、印鑑レスが進み、時間や場所の制限もなくなっていきます。最近はデバイスAIと称して、簡易式AIエンジンをチップに搭載してエッジ・デバイスに組み込む動きになってきました。データをつなぐバーコード技術と組み合わせると、金融業務が大きく変りそうな気がします。ICタグの低価格化と高機能化はその契機となるでしょう。

                      (平成29年9月12日 島田 直貴)