QRコードの活用 (西日本シティ銀、じぶん銀、常陽銀)

ITPro平成29年7月26日版の日経コンピュータ記事です。じぶん銀がセブン銀と組んでQRコードを使ったキャッシュカードなしのATM引出しを開始したということです。じぶん銀のスマホアプリにログインし、引出を選んで現在残高を見ながら出金額を入力する。次に、セブン銀ATMのスマホ入出金ボタンを押すとQRコードが表示される。それをアプリで読みとって、ATMにじぶん銀の企業コード4桁と暗証番号を入力すると現金が出てくるそうです。

筆者はじぶん銀に口座は持っていませんが、キャッシュカードは数枚を携帯しており、常々、スマホに一体化できたら便利だし、やがてはそうなると思っています。しかし、このスマホ出金はカードがなくて良いとは言うものの、操作回数は数段カードの方が少なくて便利です。全カードをスマホに乗せられるのであればまだしも、クレジットなどを含めた十数枚の内、1枚だけ減るだけでは、操作の面倒さと比較するとメリットを感じません。しかし、キャッシュレス化を目指し、デジタルネイティブを主要顧客層とするじぶん銀にとっては、戦略に沿ったサービスなのでしょう。ATMコーナーで携帯電話使用禁止云々は、セブンATMは関係ありません。

セキュリティを堅固にする為に、QRコードで使用ATMの特定や使用時刻を把握するとともに操作データなどを難読化している。キャッシュカードより安全ということです。じぶん銀が、BTMUではなく、セブン銀と組んだのは、じぶん銀の顧客が利用する他行ではセブンが最も多いということ、ATM設置個所が圧倒的多数だということだそうです。カメラでなくQRを使ったのは、読取エラーが少ないから。NFCを使わなかったのは、現行セブン銀ATMに回収費用が発生するからとのこと。

7月26日の日経新聞に、常陽銀が口座直結型スマホ決済の実証実験を行なうという記事がありました。同行本店行員が、ヤクルトの訪問販売における支払いをスマホtoスマホで行なうというスキームです。販売員が自分のスマホに請求額を入れるとQRが発行され、それを購買者のスマホで読みとって、支払い実行を押すことで完了です。購買者のスマホアプリは、銀行口座に直接つながっていて、代金が引き落とされます。

この方法だと操作は単純です。販売者には、販売履歴が残りますので、工夫次第では様々な販売促進の企画に使えます。途中に決済代行会社などは入りません。そこが、いわゆるFinTechサービスとは異なる。モバイル・バンキングの一環ということです。常陽銀は、個人IBユーザーが40万人と地銀の中ではトップクラスの利用を誇っています。それをみずみす、決済代行や他のポータル経由などとして、口座管理業者のポジションに自らを押しこめる理由はありません。いかにも銀行サービスの本流を行こうとする同行らしい設計です。今後、実験参加企業を増やして、経験を積むことで、サービス内容の改善と拡大を図るそうです。

銀行はQRが好きなようです。発行が簡単で情報量が多いしコストも安い。利用側も扱いに慣れてきたことが背景にあるのでしょう。と思ったところで、7月24日付ITPro日経コンピュータが西日本シティ銀の伝票作成Webサービスを紹介した記事を思いだしました。じっくり見直してみると、実に興味深い内容です。

同行窓口に持ち込まれる取引が月55万件あり、それもごとう日に集中する。その受付・入力作業を合理化することがこのサービスの目的です。同行口座保有の有無とは関係なく、伝票作成Webサービスに取引内容を入力すると、QR付きのPDFファイルが作成される。それをプリントして銀行に持ち込む。何件でも構わない。テラーはそのQRを読みとることで、顧客の処理依頼内容を入力できてしまう。法人は届出印を押し、個人は署名が必要ですが、この手間は敢えて残している。証跡保存ということもあるが、顧客の安心感や社内規定を重視した結果だとか。

手書き伝票のOCR読取もやっていますが、読取エラーが避けられない。それを見逃した時の後処理と担当行員の精神的負担は無視できないとのこと。ネットバンキングで済ませれば良いではないかという声もある。しかし、企業の中には、社内決済で紙伝票に複数者が捺印する文化が根強く、全てをネット化するにはまだまだ時間がかかる。電子記帳台も導入したが、法人取引先の多くは、自社内で事前に伝票記入を済ませて窓口に持ち込んでくるため、利用率が上がらない。5台導入したところで凍結したとのこと。

月55万件で取引中、4万件がこのサービスを利用するようになった。窓口では、手書き伝票だと5分を要したが、QR伝票だと3分で済む。窓口で受け付けた取引を集中処理するセンターは通常100人体制でピーク日には支店から20人前後の応援が必要だったが、応援は不要となり、各支店の締め作業も30分〜1時間短縮できたとのことです。

この業務改善は、革新とはいえず、地味なものです。一連の作業の内、全ての顧客にとって単純だが面倒な作業を自動化することで利便性を増している。それが、銀行側作業の効率化にも結び付くというスキームです。システム対応も、Webサービスの開発、QRコードと窓口システムとの連携だけです。4カ月で開発し、コストは同誌予想で1千万未満とのこと。

以前から、銀行事務合理化に小売業のようにバーコードやQRを利用すべきだとの声が多かったのですが、最近、QRが本格利用されるようになってきました。大げさに導入すると、途方もない請求がベンダーから届きますが、知恵とアイデア次第で、早く、安くできることがあると同行は実証しています。FinTechよりも、喜ぶ顧客がはるかに多そうです。

                           (平成29年7月28日 島田 直貴)