地銀のスマホ決済開始&電子マネーで地方貢献広がる

ニッキンの平成29年7月14日付記事で、横浜銀が7月3日に“はまPay”を開始したと報道していました。スマホ・アプリを使ったデビット方式で加盟店には翌営業日には売上が入金されます。浜銀は公表していませんが、加盟店が払う手数料は1件50〜150円(件数や金額による)とされています。当初の加盟店はハンドバック店など9ケ店で来年3月までには50ケ店、利用者3600人、決済件数1万5千件が目標とのこと。立ち上げたばかりではあるが、9ケ月で銀行の受取手数料は、最大で75万〜225万円。社会実験と思えば安いということか。

同記事では福岡銀がAlipayを予定しているとあります。中国からの観光客の多い地域銀はどこもAlipay導入を考えています。メディアとしてはインバウンド客向けサービスがやがて国内利用者に広がり、小口決済プラットフォームの変革につながると見ているようです。ただ、決済サービスにはブランドがとても大切です。または、飛び抜けたポイントサービスか。

百五銀行が、ビリングシステム社のスマホ決済「PayB」を使って、7月7日から各種料金・税金の収納サービスを開始したとあります。こちらは、既存の仕組みを利用して収納代行を簡便に実現しています。地銀協の関連会社CNSが提供するWeb口振受付サービスでPayBと銀行口座を連携させ、PayBはコンビニ収納の一種として扱われます。納付書のバーコードをスマホカメラで読み込めば、アプリで簡単に納付が可能です。銀行としてはPayBだけ導入すれば、加盟店開拓も収納委託者との折衝も不要です。その上、銀行が地公体から受け取る収納代行料金50円がコンビニ収納扱いの150円になる。何故コンビニが銀行より高く取れるかというと、銀行窓口は9時から15時までしか受け付けないが、コンビニは24時間だからだそうで、銀行が地公体に長年改善を求めてきたけれど受け入れてもらえなかった。ビリングシステムは大手銀出身者達が設立した決済代行会社なので、銀行都合を熟知している。地銀としては公金収納の赤字を減らせますし、コンビニに奪われた顧客を取り戻す契機ともなりえます。

日経新聞の、7月15日号には、「電子マネーで地方にエール」とトップ記事がありました。楽天Edyと飛騨市が組んで、飛騨市ファンクラブ会員証というEdyカードを発行し、その利用額の0.1%が飛騨市に寄付され、0.5%が利用者に還元される。Edyとしては割に合わないかもしれないが、一種の販促手段なのでしょう。3月に発行を開始して6月末で800枚を発行したそうです。飛騨市から会員には名刺が送られ、知人に配ってもらう。それを持って飛騨で買物すれば特典があるという。何とも、手軽な仕組みですが、利用者にはふるさと納税よりも地域貢献の意識が芽生えるそうです。飛騨には、飛騨信用組合という先進的取り組みを進める金融機関があります。単純だが斬新なのは、この地域の特性なのか、本件のアレンジに飛騨信組が動いたのか。

イオンも全国130種のご当地WAONを発行しているそうです。全国34万ヶ所のWAON加盟店で利用すれば、その一部が地元に寄付される。2009年開始以来、寄付額は9億8414万円だといいます。イオンのカード戦略は、本業の小売りチャネルを活かして、ずば抜けたパワーを持っています。割引やポイント優遇制度などもあり、WAONもクレジットも利用件数、金額ともに急成長しています。地銀が「イオクレの利用は凄い、他のカードの月額支払額をはるかに上回る金額だ。」と驚いています。主婦の使う日用品購入や小遣いに使われています。その利用状況から住宅ローンやカードローンの審査をすれば、極めて堅実な与信判断が可能となる。とても銀行が太刀打ちできる話ではありません。

日経記事では、ゆうちょ銀のプリペイドカードmijicaも紹介していました。VISAとの提携カードですが、発行は仙台と熊本だけだそうです。その地域内の指定店で利用するとポイントが2倍になるとか。地元での消費促進を図る目的だそうです。いかにも腰が引けてるというか、利用者目線も自社ビジネスの視点も感じられません。新サービスを発表することが目的なのかと因縁をつけたくなります。

地域振興と決済を結びつけるアイデアはまさに百花繚乱です。ただ、地域を限定した途端に規模のメリットが期待できず、範囲のメリットを追求することになる。多様なプレイヤーが関係する為、複雑で遅い意思決定に悩まされる。利用者や加盟店を含めた全当事者にメリットをださなくてはいけない。そこに頭の固い地公体でも加えようものなら、いない方がはるかにマシ。地公体を巻き込むのであれば、トンガッタ首長のいる市町村に限る。そして、様々なバリューチェーンを考えて、当事者を具体的にイメージしながら、サービス設計する。その上で、決済プラットフォームとユーザーインタフェースを決定する。

Edyは2012年に楽天Edyとなりましたが、当時7千万枚以上発行していながら事業性に悩み、楽天に身売りしたほど難しいのが電子決済ビジネスです。楽天のように膨大な顧客基盤を持ち、幅広い事業分野と柔らかい発想・経営判断があればこそ、今のEdyがある。新しいテクノロジーを使っただけでは駄目で、人間関係や既に存在する仕組みを活用することも重要です。

こう考えると、上記に紹介したケースでは、WAONと百五銀の仕組みが面白そうです。筆者個人としては、飛騨のような小規模だが、なにか人間味のあふれるサービスを応援したい気持ちが強いですが。

                                 (平成29年7月21日 島田 直貴)