みずほシステム統合コストが4千億円台に (静岡銀は250億円)

平成29年5月15日付の日経FinTechのWebニュース記事です。翌5月16日付日経朝刊にも気づかないほど、小さく報道されていました。決算会見の後に開催された投資家向け説明会で、佐藤FG社長が明らかにしたそうです。同時に「ようやく開発完了がみえて、三度目の延期はない。」とも言明したそうです。

移行の成功が見えているのであれば良いのですが、プログラムが出来あがっただけでは、開発完了とは言えません。昔、よくあったのが、オンライン用プログラムばかり頑張って作ったのですが、バッチの手当てを忘れていた。半年、稼動を延期してその間に既存プログラムを活用しつつ、突貫でバッチ・プログラムを作って稼動させたが、連日、バッチ・トラブルで朝のオンライン・スタート突き抜けを繰り返したケースがありました。別のケースでは、移行プログラムの品質が悪くて、ブロック別移行の都度、大量の作業やり直しや手作業が発生。半年の移行期間予定が1年半となり、全行員がその間、土日なしの生活を強いられたなどの話もありました。この時はベンダー側の対応が問題視され、その頃に部店長だった人達が役員になった次期システム検討においては、当初から当該ベンダーは外され、システム部門の発言権も殆どないという結末でした。今でもみずほの開発完了という言葉の意味と必要条件が皆目不明です。

投資家向け説明会に出席するアナリスト達はIT素人ですから、ITの技術面に関する質問はしません。投資額と効果算定額しか関心がないのでしょうか?筆者の知るアナリスト達の中には、プログラムこそ書けないが、いろいろなプロジェクトを見てきて大規模プロジェクトのポイントを押さえている人も結構います。しかし、彼等はIR説明会などでは厳しい質問をしない。必要であれば、個別面談を要請する。ですから、IR説明会は多くの場合、静かに主催者説明で終わってしまう。裏では、何故、4千億円もかけて作り直す必要があるのか?延期を繰り返し、長期間かかるのは、元々が無理なプロジェクトではないのか?今のように技術が短期間に大きく変る時代に、古い技術で作り変えて何年もつのか?などといった疑問を持っている。その疑問をIT専門家にぶつけてきますが、我々IT屋は、前提置きで推測を話すことはありますが、結局は「それは当の銀行に聞いて下さい。」としか答えようがない。

4月17日に静岡銀行は、システム・インフォメーション・ミーティングを東京大手町で開催しました。アナリスト向けのIR説明会の前に、IT関連のメディアやコンサルも招聘して、同行のIT戦略と次世代システムのロードマップを説明しました。次世代システムの柱である勘定系は名称を記帳決済システムと改め、(その理由は説明されませんでした。)稼動時期を平成31年1月としています。当初予定は平成29年初頭ということでした。次世代への総投資額は250億円で稼動後、毎年50億円前後の償却が発生するそうです。この250億円の内容も説明がありませんでしたが、3年前に発表した頃には、次世代勘定系の総開発コストは280億円で、静岡銀負担が80億円で200億円は日立が自社製品開発費として負担するという未確認情報が飛び交いました。それが事実だとすると、80億円が250億円になった理由がアナリストは知りたい筈。しかし、IR説明会でも、これに関する質問も追加説明もなかったそうです。

アナリストとは、随分と投資先に優しい職業なんだと思います。金融庁が最近、機関投資家に株主責任を求める理由はこのあたりにあるのでしょう。メディアは上記の疑問を抱いているのですが、記事にする程、十分で確かなネタがない。海外の機関投資家が、日本の金融機関におけるIT投資は、想像を絶していい加減で時間も金額も効果も信用できないと幹事証券に噛みつくのは尤もなことです。

5月の連休は正月休みと並んで、大型案件が稼動する時期です。今年は大垣共立がNECからユニシスのBankVisionに移行させました。10行目の稼動で、これまで技術上の問題で稼動時期を延期したケースがありません。これは凄いことです。実績のあるパッケージなのだから当り前だと思ってはいけません。元がバラバラな現行オンラインから、銀行毎に移行をしてきたのです。裏で支えるバッチも膨大で複雑です。それを整然とこなすのですから、凄いと評価すべきです。中国銀行もTSUBASA共同に移行を成功させたそうです。千葉、第四に次いで3行目です。こちらも凄い。両社ともに、よほどしっかりしたプロジェクト管理チームがあるのでしょう。

東京TYFGは、一時、新システムを構築して都民銀と八千代銀のシステムを統合する検討をしていたようですが、最終的に勘定系はNTTデータのBesta共同に、融資オンラインは八千代銀のシステムとすることに決着したと報道されました。(日経5月12日)外部から見る限り、妥当な結論だと思います。今時、新規開発できるベンダーも銀行も見当たりません。危なくて仕方ない。金と時間と人材の浪費になるだけです。それに八千代のIT技術者を残せることは、将来の大切な財産となるでしょう。

みずほ銀システムに話を戻すと、移行はなんとも複雑になりそうです。元々が旧DKB、興銀、安田信託の3システムです。それらを新システムに店群毎に移行させることになります。事務規程や操作マニュアルの作成も大仕事。移行前の研修も大変ですし、帳票類の差し替えや通信回線の準備もあります。それぞれが、バッチ・システムとも密に連携する。そのバッチも大幅に変更されるでしょう。小さなトラブルでも、連鎖現象を起こす危険性がある。全体移行計画や個別作業のチェックポイントなど、全てコア・チームが設計していろいろとシミュレーションし、移行リハーサルを通じてリスク・ポイントをつぶしていくのでしょう。大変な作業です。

メディアはトラブルを期待して余計な騒ぎをしないことです。経営陣が現場の作業を邪魔することに繋がりますから。それにしても、とんでもないプロジェクトになってしまいました。合併時の統合費用4千億円と合わせて8千数百億円が統合費用となります。期間は15年超。今回のシステム統合では、新規案件の多くが凍結されたまま。これだけの資金と時間を活用できたら、どれだけ素晴らしいサービスを開発できたことか。やはり株主は、銀行のIT投資を気にしない方が精神的によさそうです。

                       (平成29年5月16日 島田 直貴)