全銀協がカードローン審査厳格化を促す

日経新聞の平成29年2月22日付記事です。全銀協は、3月にカードローン審査厳格化に向けた対応策を打ち出すということです。銀行には貸金業者やクレジット会社などに義務付けられる総量規制(借り手の年収の3分の一を貸出総額の上限とする。)がなく、従来、ノンバンクが提供していた個人向け融資需要が流れ込み、銀行カードローンは法改正前の1.6倍、5兆4千億円に膨らんだそうです。中には、年収の倍以上も銀行ローンを借りる人もあり、日弁連などが多重債務に繋がるとして、収入証明の確認など銀行に過剰融資の防止を求める意見書を金融庁に提出しています。

金融庁も、早くから銀行ローンの急伸に懸念を抱き、昨年から銀行の審査方法や宣伝広報について実態調査を開始しています。金融庁には苦情受付の窓口があり、多種多様なクレームが寄せられます。中には単なるクレーマー的なものもありますが、多くの苦情を見ていると、何か良くない流れになっていることは認識できるそうです。節度に欠ける銀行ローンの貸出しや不動産ローンなどに、金融庁は以前から強く懸念を示しており、全銀協と調整して自主規制を強化しようとしているのでしょう。

貸金業法改正では、最高裁のみなし利息や貸出利息過払い判決を受け、また、多重債務を防止する目的で、利息制限を20%とし、更に諸外国には見られない総量規制が導入されました。2010年の施行後、ノンバンクによる貸出額は激減して約半分になりました。利息収入が激減するだけではなく、それ以前の過払いを返済する為に、ノンバンク各社は赤字を続け、大手は殆どがメガバンク系列となりました。この時に、銀行を総量規制対象外にしなかったのは、銀行にもっと個人向け融資をして欲しいという行政の判断がありました。また、銀行であれば、返せないほどの貸し込みはしないだろうという、期待もありました。ですから、金融庁としては、直接的な行政指導にまでは踏み込めないのでしょう。

個人ローンに積極的な金融機関は、当初は、与信ノウハウも信用情報も不足しているので、外部の信用保証会社と提携します。すると、利息収入の半分が保証料として取られてしまいます。何とか取り戻そうと、グループ内の保証会社を使って、そこに情報とノウハウを蓄積しつつ、利息収入をグループ内に留めました。次に行なったのは、プロパー融資です。外部保証を使わずに、全額を直接融資とします。そして、出来たのが顧客の信用リスクに応じた、プロパー融資、グループ保証会社、外部保証会社という濾過装置です。

一方で、金利上限と総量規制が少々厳し過ぎたとの声も高まり、国会では規制緩和を検討する動きが出ました。上限金利を緩和する、総量規制を撤廃するなどです。ところが、肝心の信販業界やクレジット業界は、金利上限を上げてもらえると助かるが、総量規制は残して欲しい。それにより悪質業者や返済能力に欠ける顧客を回避することができるという理由でした。しかし、マイナス金利となって、上限金利を上げるという考えは消えてしまいました。結果として、銀行にとって7〜18%程度となるカードローンが、競合のない魅力的な市場になったということです。

では、銀行に押しやられたノンバンク各社はどうしているかというと、信販大手などはASEANや韓国への進出です。これらの国では上限金利がないか、とても緩い。ましてや総量規制などありません。韓国では住宅ローンを含めた個人債務は昨年末で1340兆?(133兆円)を越えたといいます。人口が日本の半分ですから、1人当たりで見ると日本の倍の借入額です。借金に消極的な日本よりも、海外の方が、はるかに大きく、高収益な市場がある。やがては、銀行も海外進出に向かうことになります。

とはいえ、国によって特性が大きく違うので、日本の審査項目や基準が、他国で使えるわけではありません。まして、個人信用情報を蓄積・提供する機関のない国が多い。そこで出てくるのが、SNSを含めた顧客の行動履歴とキャッシュフローの分析です。それをBIだけでなく、AIも使って分析する。日本の場合は、BIやAIはあくまでも人間による審査の補助としての使い方ですが、全面的に自動化できて、使い込むほど精度が高まるとすれば、海外進出はより容易となります。

わが国の地域金融機関では、プロパー、グループ内保証会社、外部保証会社に融資案件を分類するシステム化が進んでいますが、ノンバンクではITによる自動審査化が進んでいます。遠くない将来、上限金利が緩和され、総量規制も緩和、或いは、撤廃される可能性があります。その時に、個人向け融資という重要な市場での競争力がどうなっているか、銀行としては目先の利益だけで動いていると、金融庁が求める持続的なビジネスモデル構築はできません。更に、金融庁が今進めている金融行政改革ではFD(フィデューシャリー・デューティ)が大きな柱ですが、顧客指向だけを意味しているわけではありません。同時に、金融機関や機関投資家の運用力強化=稼ぐ力をも強化しようとしていることを忘れてはいけません。我が国が持つ、2千兆円を超える金融資産は、現在、働いていません。それが年1%でも2%でも稼ぐようにすることが、金融庁がFDを進める目的のようです。

                     (平成29年2月27日 島田 直貴)