キャッシュアウト・サービスの解禁とチェックアウト・フリー

ニッキンの平成29年1月13日付記事です。金融庁は4月に銀行法施行規則を改正して、小売店などでのキャッシュアウト・サービスを解禁するそうです。銀行が小売業者などに外部委託して、顧客の預金引出しを代行してもらいます。20年以上前から解禁の話は出ていたのですが、ようやく始まることになりました。どれほど使われるかは判りませんので、金融庁も急いで解禁せずにいたのでしょう。何故、今、解禁することになったのか、その方に関心があります。

30年程前に、米国のバンクPOSサービスが日本でも流行ったことがあります。殆どは実験レベルでしたが、中には専用POS端末を小売店に設置して、そこで買物代金の収納と同時に預金引出しを大々的に実施した地方銀行もありました。その後、ATMやクレジットカードが普及したこともあり、使われなくなったという経緯があります。米国では、デビット・カードが当時から普及していたので、100ドルの買物をする時に、200ドルの現金も受け取って、口座から店に300ドルが振り替えるサービスが流行っていました。

今度、解禁されるキャッシュアウト・サービスもデビット・カードでの決済が前提のようです。今はブランド・デビットがデビット・カードの中心ですが、キャッシュアウトとなると、北国銀のように自行発行デビットを考える銀行が増えるでしょう。

小売店の窓口で預金を引き出すというニーズがどの程度あるのか疑問ですが、急いでいる時とか、ATMが近くにないとか、機械操作の嫌いなお年寄りが、レジ係に一言頼むだけで現金を引き出せれば、便利なことは確かです。小売側からすると、人手不足のレジに仕事を追加することが可能なのかという懸念もあるでしょう。以前は、深夜営業のコンビニ店主などは、強盗を恐れて現金の扱いを増やすことに反対でした。キャッシュアウトは、病院の売店などで小さく始めて、徐々に広げることになるのが良いのかも知れません。

レジといえば、昨年12月5日に米Amazonがチェックアウト不要のAmazonGoを発表しました。画像認識で商品やお客の動きを把握し、どの商品をカートに入れたかを認識し、合計金額をAmazonアカウントから引き落とします。レジがないのです。店内にはセンサーが取りつけられ、音や振動などで人や品物の動きなども検知しているそうです。つまり、画像認識、音声認識、IoTを複合的に使っているとのこと。こういったサービスを開発している連中は面白くて仕方ないだろうと羨ましくなります。Amazonは、社内店舗で社員向けの実証実験を続けるとのことです。

日本でも小売業界は、レジの合理化に四苦八苦しているそうです。顧客の待ち時間という問題もありますが、レジ係はスキルを必要とする一方で極端な人手不足です。セルフレジを導入した店を観察したことがありますが、思うように操作できない客のサポートに店員が張り付いており、これなら、普通のレジの方が、効率的だと思いました。最近は、バーコードの読取りを店員が行なって、顧客は、指定された精算機から現金かカードで支払うという方法が使われ出しました。これも、効率的になったとも見えず、お客が楽しそうな顔をしている訳でもない。

やはり、AmazonGoのように、徹底的に自動化しないと面白くも速くもないという感じです。Amazonと同じようなコンセプトでレジレス・システムを開発した国内ベンダーがあります。画像認識で商品の動きと顧客の動きを検知して何をカートに入れたか、戻したかを認識します。デモ・ビデオを見ると、まだ単純で、ある程度の大きさのあるパッケージ商品ばかりですが、使い込むことでもっと複雑な認識精度をあげることができます。画像認識ですから、バーコードやNFCは使わない。だから、そのタグ貼付の手間やNFCの電波干渉の問題もない。万引きを防止できるし、何よりもレジ係の確保という問題を解決できます。

このアプリは、何も小売店のレジだけが対象ではありません。倉庫や工場内の部品・備品の管理にも使える。銀行営業店の窓口などで顧客の動きに合わせた対応にも使えそうです。アマゾンのようにセンサーを設置してIoT化を進めると、更に精度があがり、使い方も広がるでしょう。結果、在庫管理や動線効率化が可能となる。アマゾンの場合は、顧客が入店する際に顧客認識のバーコードをスマホに取り込む必要があるが、事前に顔か指紋などで顧客登録しておくことで、その操作も不要になる。すると顧客別の価格付けやサービスが可能となります。IoTをうまく使えば、量り売り商品の価格認識も容易です。おもてなしをアピールする小売店に進化させることができそうです。

金融ジャーナルの2017年2月号に面白い記事がありました。宮崎銀行の女性行員4人によるソリューション推進班の活動です。彼女達が、顧客企業にIoT導入支援することで、取引先開拓に成功しているというのです。当然、外部専門家の力を借りているのですが、IoTなどで法人取引先の本業推進を手伝うことで、銀行取引に結び付けるという話です。筆者がここ1年半ほど地域金融機関に推奨するソリューション営業と同じ考え方ですが、本気で取り組むケースは殆どありません。それを若い女子行員達が進めているというのです。おじさん達相手に、発想を変えろと言っても無駄で、新しい人達でやるしかないのだと痛感します。

このチェックアウト・フリーというコンセプトでは、技術的シーズは揃っています。企業側には合理化や客寄せ効果などのニーズもあります。後は、実証実験を積み上げて、万引き防止、誤認識防止、顧客との親密感演出、決済との連携、販売促進へのつなぎ等々、具体的な解決策やユーザー・インタフェースの改善を積み上げると、誠に面白いことになるでしょう。営業店の外壁塗り替えを一回、我慢すれば、こうした実証実験に必要な費用は捻出できます。あとは、誰が実験の為のコンソーシアムを組成してマネージするかということだけです。銀行員にも面白い仕事が沢山出てくる時代になったと思います。

 

                                  (平成29年1月30日 島田 直貴)