地域銀でフィンテック・アライアンスが相次ぐ

金融経済新聞の12月5日号記事です。複数の地銀とITベンダーによるフィンテック連携が加速しているとして、TSUBASA金融システム高度化アライアンス(6行参加)、じゅうだん会FinTech研究会(7行)、Chance・FinTech・Lab(8行)の例を紹介していました。ベンダーといっても全てIBMです。地銀としては、メガバンクのように数十億円の予算と40人前後の要員を使えるわけではなく、まさに協力して資金と人材と知恵を出し合おうということでしょうし、ベンダーとしては個々別々の地方銀行の面倒を見るよりは、効率的です。地銀の名前を使って、ベンチャー等他社を巻き込むことも容易となります。

共同で実証実験や共同導入を行なうのですが、今のところ、スマホ決済やブロックチェーンなどマスコミ受けするテーマではなく、生体認証やワトソンの活用を検討しているとのことです。よくよく考えた結果の選択なのでしょう。確かに地域決済のFinTechをやっても年間の収入は数十万円にしかならないでしょうし、始めてしまうと、儲からないから止めるとも言えません。そもそも銀行業界には撤退という概念が希薄です。その点で、生体認証やワトソンは、実現性や波及効果が大きいですし、何よりも経験することに価値があります。また、将来のコア技術となる可能性も高い。

セミナーハウスの方々に聞くところでは、この夏頃からFinTech関係の有料セミナーで集客が難しくなったそうです。メガバンクは元々、参加しませんが、多かった地銀関係者が急に減ったそうです。それを一般事業会社が補っているのですが、採算ラインの集客が難しくなったと言います。一方で、信用金庫が一挙に動き出して、地区協会単位で講師を招聘しているようです。もっとも、セミナーを受講するといのは、あくまでも情報収集の段階ですから、信用金庫が実証実験などに踏み込む時期は来年以降となるでしょう。その点、地方銀行は情報収集段階を越えたということです。

メガバンクは実証実験で技術と経験を蓄積しています。しかし、これなら商売になるとか、大ヒットするという新サービスは見つかっていません。逆に、ATM手数料をやたらと有料化することで、顧客をネット銀などに追いやっているように見えます。好意的に見れば、フィンテックに顧客を誘導する為の地ならしなのか。あるメガバンク関係者が、今年の年末までにはブロックチェーンの見極めがつけられるだろうと言っていました。筆者は見極めを見切りと解釈しているのですが。

3メガがデロイト・トーマツと共同で実験した結果をデロイトが報告書として公表しました。読んでみると、何とも煮え切らない報告でして、国内送金業務の仕向・被仕向間データ送受に関して実証実験したが、コストが下がる可能性を確認できた、ネックとされるスループットも秒1500件程度は可能である。可用性、拡張性、保守性、セキュリティ等の課題については更なる実験が必要とのことでした。送金データ送受だけでは、送金業務は成り立ちません。全銀が行なうクリアリングと日銀ネットが行なうセトルメントをどうするのだというと、手が出せない。この共同研究に携わったメガの担当者達は、経営陣にどう説明したのか?1年もかけて、こんな報告かと怒られなかったかと心配になります。大和証券のように、ミャンマーの証券取引でブロックチェーンを使うといったレガシーのない場所を選ぶというのが、現時点では正解ということか。

メガバンクでこういう状況ですから、地域金融機関はどうしたら良いのか?ひょっとして、地方創生に結びつくFinTechが何かないかと思って、先日、アイデア・コンテストを開催しました。20件以上のアイデア応募があり、発表9件から4つのアイデアを表彰しました。どれもアイデア・レベルかパーツとしてのソリューションですから、そのまま地方創生に使えるというものではありません。しかし、応募されたアイデア同士を組み合わせると、更に面白そうなサービスが考えられる。今回、応募してはいませんが、筆者の知るアイデアやソリューションと組み合わせても面白い。あ〜、これがオープン・イノベーションなんだと実感できます。

できれば、アイデアをマッチングできる仕組みが欲しい。ただし、それでもアイデア止まりなので、それをより、具体的なサービスやソリューションに練りあげる必要があります。それには柔軟な発想と現場を良く知る経験が必要です。アイデアソンとアクセラレーションの組合せのような方法も欲しい。その上で、実証実験なのでしょう。問題は、アイデアをマッチングできるノウハウとセンスを持った人、それを具体的なサービス・イメージに磨きあげられる人がどこにいるのか?ということです。難しい問題です。地銀のFinTechアライアンスは、各地銀から人を集めていますが、それだけでは限界があるでしょう。銀行とは全く関係なく、銀行が好きな有識者でもなく、実際のニーズとシーズを知っていて、デザイン・シンキングをできる人達をかき集めたチームが必要だろうと思います。

今回、アイデア・コンテストややってみて、痛感したのがアナログ情報の重要性でした。ネット経由で集まる情報を並べても、本当のところは見えてこない。最優秀賞を取った大日本印刷の「寄り道xFinTechで日本を元気に」が高く評価されたのは、地域地域の隠れた情報(どこそこのおばあさんが作るXX料理が絶品といったような情報)を足で集めて、観光ガイド・サービスと連携させる点でした。足で集める情報となると、地域金融機関の強みが活きる。Googleがマップ情報を土地の人達に集めさせるような仕組みができれば、更に良い。

最近、テクノロジー・マッチングで事業を急拡大している会社があります。ここの決め手もやはりアナログ情報です。全国の産業コンサルタントが企業訪問し、その会社が持つ技術を評価して応用可能範囲を登録します。企業紹介サイトなどに掲載されるうたい文句だけでは、とてもマッチングが実現しません。地域金融機関のビジネス・マッチングが実効性に欠けるのは、この問題です。東京のある信用金庫の場合は、渉外担当者が徹底的に商品や技術を調べて、他地域の案件とすり合わせるので、成約率が他信金をはるかに越えると聞きます。サイバー空間を中心とした情報とリアル空間で得た情報をマッチングさせるところに、地域性が発揮できる。それに金融機能を付加すると地域創生FinTechとなるのでしょう。地銀のFinTechはメガのミニコピーではなく、こうした発想で進めたらどうかと思う次第です。

                        (平成28年12月8日 島田 直貴)