山陰合同銀と東日本銀がNTTデータの共同に移行発表

平成28年11月11日付けのITProで日経FinTechが報道していました。山陰合同は、日立の共同オンライン「Bank’s ware」加盟行(他には肥後銀とみちのく銀の2行のみ)ですが、同日にNTTデータと基本契約を締結して、2019年下期〜2020年上期にBeSTAへ移行するとしています。東日本銀は、横浜銀との経営統合を今年4月にしたばかりで、富士通による自営オンラインからMEJARへ2019年1月に移行する予定だという内容です。

東日本銀は横浜銀との経営統合を決めた時点で、横浜が加入するMEJARに移るだろうと思われていましたので、余り、反響はありませんが、山陰合同は意外との見方が多い。同行が以前から、BeSTAを検討していることは知られていました。しかし、肥後銀とみちのく銀への影響を考えると、地銀界の仁義として、まさかという地銀IT関係者が多かった。それが、肥後銀が鹿児島銀と経営統合して、将来は鹿児島のユニシス製BankVisionに移る可能性が出てきた。すると残る山陰合同とみちのくはどうするのかというのが、もっぱらの話題だったのです。しかし、鹿児島と肥後は、それぞれのシステムを当面、継続利用すると発表したので、この問題は、しばらくは動かないだろうと思われていたのです。今回の山陰合同の決定の裏には、何があったのか?と関心が高まっています。

日立とNTTデータは親密な関係なので、NTTデータが強引な商談を持ちかけたとは思えません。日立は、静岡銀と次世代システムを開発中ですので、それが完成すれば、日立共同の将来は明るく見えるはずです。しかし、山陰合同が抜けると、肥後とみちのくの負担は重くなり、肥後がBnakVisionに移る可能性が高まります。すると、みちのく一行が残って、共同とはいえなくなります。

こうした問題は、何年も前から日銀や日経コンピュータは、指摘していました。自行の都合ではなく、他行の事情で大きなIT戦略変更を余儀なくされるリスクです。冒頭に、日経FinTechの報道だと書きました。担当の岡部記者は日経コンピュータの記者も兼務しており、金融業界の担当でもあります。地銀の基幹系勢力分野も熟知しています。そこで、NTTデータ系共同加盟地銀が51行となり、全地銀(地銀と第二地銀の合計は105行)の半分近くを握ることになるとしています。

こうした記事が出ると、NTTデータ系共同に加盟する地方銀行は安心しますが、それ以外の地銀経営者達は、不安になります。山陰合同の決定の理由は何なのか、当行への影響は、そしてどうするのだとIT部門に質問を投げるでしょう。11月21日付日経新聞が、このニュースを改めて報道しており、その見出しは「NTTデータ勢力拡大」というものでした。あ〜あ、また、的違いな議論が始まるのかと暗い気持ちになりました。早速、幾つかの地銀から、記事の裏取り目的の電話が入りました。質問は予想通りです。

「今の勘定系で寿命に関わる問題はありますか?例えば、ベンダーがメンテできなくなるとか、処理能力に限界があるとか、新商品、アプリを乗せられないとか。」と聞くと、そんな問題はないと言います。では、「何が不安なのですか?例えば、ベンダーが倒産しそうだとか、金融から撤退するとか、兆しがあるのですか?それとも、ベンダーサーポートや価格に不満があるのですか?」と聞きますと、そんな懸念は表面化していないという。

要は、経営がこれから何をしたくて、今の基幹系がそれをサポートできるのか、できないのかが見えないのです。特に、ビジネス要件の変化が見えない。それは、ベンダーが提供する共同オンライン・サービス以前の問題なのですが、それに気付いているIT部門長でも、経営トップにそうは言えない。マスコミがそれを言ってくれるのが、一番、効果的なのですが、何故かそれを書かない。隣が車を変えた、今度はトヨタだ、ウチはホンダだが大丈夫かといった程度の話なのです。

11月7日に開催された日銀の高度化セミナーでは、共同化による独自性やITガバナンス、そして、ITスキル人材の欠落が大きな問題としてクローズアップされました。FinTechが普及すると、創造性、スピード、コスト、柔軟性が大きな課題となります。どれも共同化では不利な要素です。加えて、電子決済等による小口決済が増えると、従量制料金がかさむだけでなく、場合によっては処理能力がボトムネックとなります。FinTechトランザクションを別のベンダーにアウトソーシングする方法もありますが、そこまで来ると、一体誰が銀行業務をやっているのだとなります。そんな時に、共同オンラインか自営か、共同ならXYかなどという議論に何の意味があるのか。自分が何をしたいか決めるのが先なのですが。

要はソーシングの問題で、自行の取り得る経営戦略とそれを実現するIT戦略、そして、ITシステム全体の業務体系を描き、各サブシステムをどうソーシングするのか。内製するシステム、共同マル投げシステム、IaaSとエンドユーザー開発の組合せ、パッケージ、SaaSなどなどありますが、それを開発、運用、保守といったシステムのライフステージ毎にどうするか。それぞれに対して、データセンター、ハード、インフラ、アプリケーションなどのリソースをいかに調達するか。このステージとリソースを最適化するのがソーシング戦略です。それを作っている地銀はまだありません。将来、どんな新規業務が出てくるか見えないので、ソーシング戦略を作れないというのが正確ですが。

共同化という呼び方は同じでも、ソーシング方法は多種多様です。このことも、メディアは触れません。共同化=丸投げというイメージです。そして、安易に走れば走るほど、ベンダー丸投げが進みます。気付いた時には、自分では何も出来ず、コストは高止まりし、銀行免許はベンダーに譲ったほうが合理的という状況になっているのではないか。市場全体と自分の位置関係を見ずに、他行の動きに揺れ動いていると、そうなります。顧客としては、代わりに便利で役立つサービスを提供する代替者が出てくれば、別に構わないのですが。やはり、預金口座や融資債務のポータビリティ制度は必要かと思うようになりました。フィデューシャリー・デューティを金融機関に求めるだけでは、顧客自身の防衛力を強めることにはなりません。顧客が取引銀行を簡便に変更できるように制度変更を考える時かもしれません。

                          (平成28年11月25日 島田 直貴)