決済システム(全銀が利用料値下げ)


日経金融(平成14年8月19日号)によれば、第五次全銀システムではシステム運用費が4割下がって年間60億円程度となるため、加入金融機関が負担する利用料を来年秋から

40%程度引き下げる見込みだそうです。

全銀システムは国内の金融機関同士が顧客の委託を受けて、振込などのデータ通知とその決済を行なうシステムです。利用者が窓口で送金したり、ATMで振込したり、他行のATMで出金する取引の仲介処理が代表的な業務です。

国内のほぼ全ての民間金融機関(郵貯など政府系は除く)2079社、約4万1千店舗が加盟しています。平成12年度の取り扱い件数は約12億件です。加盟銀行の利用料金は、その規模に比例する基本料金と取り扱い件数に比例する従量性料金との組み合わせです。平均すると一件当たり、大手銀行で20円弱、大手地銀で30円強、信金中位で60円程度と考えられます。全銀の処理コストも高いのですが、銀行内で発生するオンライン処理コストや人件費を合わせますと優に千円は超えます。為替は一時的に与信が発生するので、そのリスク・コストを加えればとても採算がとれません。受益者負担が少ないというより、提供者コストが高すぎるのです。銀行における最大のBPR対象分野です。

3万円以上の送金にかかる印紙税も料金低下の阻害要因です。消費税と合わせた二重課税であることは間違いありません。そもそも印紙税の歴史と根拠を明確に説明できる主税官僚に会ったことがありません。機会のある都度、質問してみたのですが。決済の電子化が進むに従って印紙税の存在意義が問われることになるでしょう。

ここ3年間の全銀取り扱い件数の平均伸び率はおよそ4.3%です。この伸び率が大きいか小さいかは判断の分かれるところでしょう。経済成長率より高いことは確かです。しかしながら、日本全体で500億件以上はあると推測される決済件数(口座振込なども含む)に占める率としては、余りに低いと私は考えています。その原因はコストが高いこと、機能が不十分なこと、参加できる機関が限定されていることでしょう。

1983年に私は初めて本を出版しました。その中で「銀行決済は、宅配便よりも価格・機能・サービス水準ではるかに劣る。宅配便は600円で2kgの荷物を翌日配達してくれる。

2kgは一万円札2千枚分。銀行の800円より安く、翌日には届いて配達通知までくる。2百円追加すれば自宅まで集荷に来てくれる。」と全銀批判をしました。年に100回以上行なった講演でも必ず言うので、全銀関係者からは随分と嫌われたものです。

決済サービスは、堅確性・価格・利便性(参加者数、請求データとのマッチングを可能とするデータ項目、スピード、利用場所、利用時間など)のバランスです。それを銀行間決済も、大企業の大口決済も個人の超小口決済も同じインフラに載せていることに無理があります。少なくとも上記三つの決済インフラに分別すべきだと20年前から主張しています。銀行決済サービスのあり方は根本から討論されたことはありません。一時期、日銀がテーマに取り上げようとしました。都市銀行の猛烈な反発で中断されました。決済は銀行固有機能だという古い考えがいまだにあります。預金通貨以外の決済媒体を何とでも作れる時代なのですが。米国ACHのように小口決済は、一般事業者にも開放すればよいと思います。最終的な尻取りは銀行預金を使うことになるのですから、余計な心配は無用な筈なのですが。

来年11月に稼動予定という第五次全銀システムは、昭和48年の稼動以来、8年毎に更新してきました。何故、8年かといえば、電々公社直営オンライン・システムが8年償却を前提としていたからです。NTTデータとしては、8年毎に大プロジェクトを独占的に請け負えるのですから、何ともおいしいビジネスだったでしょう。技術も商慣習も急激に変わっている今日、まだこのような発想で仕事をしている人達がいることに驚きを感じます。大手銀行の中には、全銀の高コスト、機能不足、柔軟性の無さに危険を感じているところがあります。数行が協力して独自の銀行間決済システムを構築しようとする動きが何回かありました。何故か全銀協会長行交替の度に話が消えるようです。

競争のないビジネスが顧客のみならず自分自身にも不利益であることを認識している筈なのですが。