欧州中央銀行が仮想通貨に懸念

ニッキン平成28年10月28日付記事です。ECBが加盟各国に対して、仮想通貨の使用を推奨すべきでないと提言したそうです。アンチマネロンやテロ資金供与対策に関するEUの法改正案に対するECBの見解の中で示されたそうです。10月12日に公表されました。その論拠は、仮想通貨の有用性を認めながらも、法定通貨ではなく、確実な保証はない。仮想通貨の比重が高まれば、マネーサプライ管理に悪影響を与え、物価等の安定性に対するリスクとなる。アンチマネロンやテロ資金供与対策としてのFATF勧告に沿った統制が比喩要だという内容です。

その10月12日ですが、日経新聞が「財務省と金融庁が、ビットコインを通貨として明確に位置付け、消費税の対象外にする。」との大きな記事がありました。この記事を見た多くの人が、それも銀行関連の人が、「国が仮想通貨を通貨として認めた。」と言います。えっ?と思ったのですが、国は仮想通貨を支払手段と認めていますが、通貨とはしていません。どうも通貨の定義が曖昧になってきたようです。価値の保証のない通貨なんて、通貨といえないのですが。財務省はもう一度、通貨の定義を周知させる必要があります。それと日経の記者ともあろう者が、こうした定義を確認もせず、ビットコインと仮想通貨を同意に扱っているのは、意図的なのか、勘違いなのか。

筆者の友人でもビットコインなど仮想通貨を保有している人が数名います。でも、決済に使っている人はいません。単なる興味本位で経験してみようとか、外貨投資のような目的です。彼等に試してみろと奨められますが、それなら豪ドルやタイバーツでも買った方が、まだマシだと断っています。ましてや、知人にお金を送る時に、仮想通貨を送ろうとは思いません。こちらは、1万円分を送ったのに、先方が資金化する時に8千円に下がっていたら、友達を失います。逆に上がる時もあるでしょうが、その時には、自分が損した気分になるでしょうし。まして、店への支払いを考えたら、店としては仮想通貨の相場ばかりが気になって仕方ないでしょう。ハイパーインフレの時、商人達が、オチオチ商売できなかったという話を思い出してしまいます。

ブロックチェーンの安全性やシステム安定性も強調されますが、災害でもあってインターネットが思うように使えない時や、先頃、海外で続発したハッキングと思われるような資金消失などに対する対応方法も明確になっていません。それは、使いながら手当てすれば良いというのが、オープン・イノベーションなのか?筆者も仮想通貨の利便性などは評価しますが、日経新聞や役所が煽ることは、いかがなものかと思っています。やはり、ECBと同じ考えに、行き着きます。ですから、友人達には、日経新聞の購読料をビットコインで払えと奨めています。

メガバンクでブロックチェーンの実証実験を行なっている人達の話を聞くことがあります。普及すると思いますか?と聞くと、答えは想像通りです。「ある程度は使われるでしょう。特定の人達の特定の用途において。ただ、オープン・ブロックチェーンだと取引者の匿名性がなくなる。金融にとって、AからBへの資金移動は、多くの場合に匿名性が求められる。それを避けるには、プライベートかコミュニティのブロックチェーンとせざるを得ない。すると、ブロックチェーンの低コスト性や安定性が薄らいでしまう。その結果、ネットワーク効果が大幅に減衰してしまう。そこに、日銀あたりが最終保証した仮想通貨が法定通貨として出てきたら、それまでの努力は全て消えてしまう。本気で取り組むわけにはいかない。」と言います。

それでも、メガバンクのトップや地方銀行などが、仮想通貨をやると発表します。そして、仲間を募ります。すると、結構な数の金融機関が集まる。参加する金融機関に本気かと聞くと、「とりあえず入っておいても、たいした損もない。勉強になるし。」と答えます。参加しない銀行に聞くと、「あんなもん、誰が使うのか。人や資金を使いたいことは、他にたくさんある。」と言います。その通りで、優先順位を自分で決めるか、他行の動きや新聞報道で決めるかの違いのようです。各金融機関の仮想通貨に対する方針を記録しておいて、10年後に結果とつきあわせたら面白そうです。

そのブロックチェーンですが、金融の世界で何か旨い使い方がないかと思うのですが、なかなか、見つかりません。特に現行システム (ITだけでなく、仕組み全体) からの移行コストが制約となります。発展途上国で新たに決済や証券取引システムを創るのであれば、レガシーがないし、取引件数も僅かですので、いろいろな使い方が考えられるのですが。保険関係で、P2P保険のようなものが作れないかとは思いますが、やはり利用件数が見込めない。馬券の販売やレース前の譲渡などもおもしろそうだという意見も出ますが、やはりピンときません。だんだん、金融から遠ざかります。そういえば、最近は、金融以外の企業が、ブロックチェーンの勉強に熱心です。

                                           (平成28年10月31日 島田 直貴)