地方創生とFinTech (NPO金融ITたくみsがアイデアコンテスト)

ニッキンの平成28年9月16日号、日経産業新聞10月6日号の記事です。このNPOは筆者達が事務局を務めていますので、少し、コンテストの趣旨を説明させて頂きます。

http://www.takumis.org/idea-contest/

まずは、今、進んでいるフィンテックは、従来にない顧客目線でITを活用しようとする点は評価しますが、残念ながら、金融ビジネスを変えるものではない、もっと、ビジネス・モデルそのものを変えるようなサービス革新が図れないかという問題意識があります。

例えば、仮想通貨や地域マネーです。超長い目で見れば、普及するかも知れない。ただ、こうしたネットワーク効果(大勢が繋がることで効果を増す)は、排他性を避けるので、必ずしも先行しなくても、後から参入することは可能で、中央銀行や胴元的なポジションを取れない限りは、急ぐ理由はない。結局は、日銀が仮想通貨を出して決着となるのではないか。

まして、個人顧客の2%、法人顧客の6%しかインターネット・バンキングにアクティブに繋がっていない現状からすれば、スマホバンキング利用者は、更に少ない。一体、誰が今のフィンテック(決済、送金、家計簿など)を使うのか。収益に貢献できなければ、サービス改善の投資ができなくなり、一度ついた利用者も減り出すでしょう。ゼロになれば、サービス停止もできるが、少しでも利用者が残る間は、保守コストを垂れ流すことになる。最悪のケースだが、これが実に頻繁に起きる。

柱となるサービスを作り、それへの客寄せに仮想通貨や送金など枝葉のサービスを出すのであれば、まだしも、最初から収益を期待できないサービスを複数の提供者で協業して出せば、デッドロックに乗り上げることは容易に想像できる。柱となるサービスですが、地域金融機関だから、地域決済だ地域通貨だというのは、少々短絡にすぎないかというのが次の問題意識であります。

地域金融機関にとって地域振興、地方創生は自行庫の生存、発展に直結する経営課題ですが、今、行なわれているビジネスマッチングが大きく貢献したという話を聞いたことがありません。個々の金融機関は、フェアやマッチングで何件成約したとか発表しますが、それを手伝った人達から、前向きな話を聞いたことがない。むしろ逆で、形ばかりで数字だけが走っているとも聞きます。地域経済に大きく貢献するビジネス・チェーンがあります。地域である程度規模の大きいコア企業が、地域外から注文を受けて、地域内協力企業に下請け注文を廻す。つまりインバウンド資金が地域内で給料や消費といった形で環流することです。

地域決済で年1千万件の支払件数があり、件当たり5円の手数料をとっても、所詮は5千万円です。県内GDPが4兆円の県だとして、2%成長するには、800億円の追加成長が必要です。それに比べると、決済や送金のサービス革新がどの程度、経済成長を促進するのか。むしろ、逆ではないか。経済成長があって、それを決済などが下からではなく、横から支援するのが本来ではないか。とすれば、地方創生とは、地元企業が、ある程度の規模で事業を拡大することを金融機関が支援して、それに融資や決済など金融サービスを組み込むというのが本来のあり方ではないか。今のフィンテックは顧客目線といいながら、誰の目線でもなくなってはいないか?(第三の問題意識)

このように言うと、フィンテック推進派の行政担当者は不愉快な顔になって「ではアメリカでフィンテックが普及しているのはどういう訳か?」と問い返してきます。「アメリカの金融は、道路と同じで大きな穴ぼこだらけである。フィンテックはその穴や溝を埋めるところに、顧客価値があるが、日本の金融にはそんな大きな穴も溝もない。行政や民間が、これまで築き上げてきた公正で公平な金融サービスを簡単に否定しない方が良い。」と答えると、次に「では、アメリカに追い越されてしまうが、日本はどう進めば良いというのだ。」ときます。「顧客の本来業務をオープンな経験と目線を持った金融の立場で支援して、本来業務の生産性や効率を上げることに集中すべき。さすれば自ずと金融サービスの市場は拡大するし、そこにITを使った新たな金融サービスを組み込むことが可能となる。」と答えます。すると「では、具体的にどんなことが考えられるのか」とくるので、「IoTやECやシェアリングなどだろう。技術や資金のマッチングも有効だろう。」と答えます。

しかし、こうしたビジネス・モデルを根本から変えるような革新には、時間がかかり過ぎます。何か、誰もが面白い、やってみたいと思うようなことがないか?(コンサル業界では、これをQuickHitと呼びます。) どうも、これは金融目線からは出て来そうもない。金融以外の法人や個人からアイデアを求めることはできないだろうかというのが、今回、アイデアコンテストを開催する理由であります。アイデアを出してもらって、優秀作を表彰して終わるとすれば、余り意味をなさないことは承知です。サービスを作る人、提供する人、使う人が集まって、アイデアに磨きをかけて、実用化にまでもっていくアクセラレーションのような仕組みがないと、本物にはならないでしょう。でも、今なら、その位の覚悟をする金融機関もベンダーもいます。滅多にない、流れが出来ているのです。フィンテックのエコシステムができるかも知れないのです。正直なところ、フィンテックと呼べるような代物でなくても構わない。頭取にはこれがフィンテックだと言えば良い、どうせ、判らないから・・・などと、ひどいことを言っています。

読者の皆さんには、是非、ワイルドで面白いアイデアを応募して頂きたいと願っています。今の金融サービスは役所並みに、つまらない。だから、銀行の支店に行きたくならないし、スマホでもアクセスしません。毎日、使いたくなる、使わざるをえなくなる、そんなサービスを見つけたいのです。原石で良い。それを皆で磨けば良い。それもアジャイルで。

先日、Uberの話を聞きました。このアイデアは、創業者二人がパリの会合から帰ろうとした時に、電車もバスも止まって立ち往生した時のものだそうです。スマホでタクシーを呼べたら便利なのにと思ったのがUberの原型だそうです。アイデアは、最初から綺麗で大きなものではありません。まずは、具体的な悩みや課題のあるローカルで思いつくものです。このローカルとは現地現場という意味ですが、このコンテストの標語は、「サービスはローカルから」であります。応募をお待ちしております。

                             (平成28年10月18日 島田 直貴)