保険ショップ戦国時代 (異業種が本格参入)

日経新聞の平成28年10月3日付記事です。成長を続ける保険ショップに異業種の参入が続いているとの内容です。ドコモ、ニトリ、ゼクシィ、ドラッグストアの日本調剤、ヤマダ電機などが例としてあげられていました。来店客が多いとか、本業との親和性が高いというのが参入の理由です。ニトリが日生と提携して参入した時には、家具を見に行って保険を買うか?と思ったのですが、意外と受け入れられているそうです。結婚や出産、リフォームなど人生のイベントを抱えた客の来店が多いのだそうです。ゼクシーも結婚式の相談を受ける際に、保険の見直しを勧めるといいます。一見、コストとつりあうのかと思いますが、本業の店内に小さなブースを構えて、資格を持つ販売員を1人か二人おくだけなら、採算がとれるかも知れません。

地銀では山口FGの保険ひろば買収や静岡銀など15行による保険の窓口との共同店舗なども紹介されていました。地銀としては、子育て世代と保険で繋がりをつけて、住宅ローンや投信の販売に結びつけたいとのことです。こうして見ると、保険商品というのは、個々の顧客のイベントや都合に密接なつながりを持つ商品であって、いままでが余りにマスプロに過ぎたということに気付きます。

保険業界は、そんなことは百も承知だから、マイクロ・セグメント化した商品対応を進めてきたのでしょう。行政がそれを受けて、更に共済の不祥事再発防止も兼ねて、少額短期保険制度を作ったのだと思います。いろいろと面白そうな商品がありますが、市場規模としては60社強の参入で700億弱の保険料収入しかないようです。ブランドが問題なのか、マーケティングが問題なのか判りませんが、ネットワーク戦略に頼り過ぎのような気もします。保険では、どうしても対面販売を柱とせざるをえないのか。

これまでの金融商品は、保険も銀行もプロダクトアウトで画一的な商品が中心でした。FinTechによって機能がアンバンドリングされながら、ニッチに新規参入が増え、やがては既存の金融機関が事業基盤を犯されるというのが、メディアや評論家が描くフィンテックの影響です。欧米のように顧客目線から隔絶した国なら、そうかも知れませんが、日本では新規参入者が伝統的金融業者を簡単に置き換えるとは思い難い。それでも、アンバンドリングは進むでしょう。

しかし、アンバンドルして終わりということにはなりません。必ず、顧客は自分のニーズに合わせてリバンドリングします。かつて一体型のステレオコンポがバラバラになったのと同じです。スピーカーだけでは、音楽も聞けない。そこで、リバンドリングを顧客自身が行なう場合と、専門家が行なう場合が出てきます。専門家のリバンドリング・ノウハウはAI等である程度は代替できるでしょう。しかし、リバンドルする最終目的がある筈です。その目的をより早く認知し、最適なリバンドルを提案、提供できる力が、金融商品販売の源泉になることでしょう。

こう考えると、金融業界は、アンバンドリングしつつ、より高度な専門商品・機能を提供するサプライヤーが出てきて、それを顧客目線でリバンドルする顧客インタフェース担当企業に分化する可能性が高い。そして、両者の間に入って、ブックキーピングを提供するBPO業者や顧客やインタフェース企業に市場情報等を提供する業者、更には、口座開設や本人確認に特化する業者なども出てくるかもしれない。何よりも強いのは、顧客インタフェースを握るポジションだと思います。顧客がどのインタフェース企業を選ぶかは、企業規模と関係ないでしょう。どこまで、自分に合ったソリューションを親身に提案してくれるかが大事になります。

ブックキーピングのBPO業者とさりげなく書きましたが、全銀協か日銀がそれを担うと面白そうです。勘定系オンラインや保険契約管理システムは、わが国に一つあれば良いことになります。各金融機関は、バックオフィスを気に掛けずに、顧客目線で営業一筋に頑張れば良い。差別化は、対顧客サービスで行う。それは、ネットと対面のハイブリッド・チャネルで提供される。ネットで完結できる業務であれば、営業担当者はスマートデバイスだけ持って、顧客の場所で業務も完結させる。営業拠点は、何をするのでしょう?殆どの活動は、営業担当者がモバイル・ブランチとして出先で済ませることになりそうです。

こうした絵柄を考えて、それに必要な機能、それを実行する社員のスキル、そしてシステム・サポートのあり方等を想定するのは、とても面白い。仲間と酒でも飲みながら、議論するのもよいでしょう。そうして、大きな方向性を固める。次に、それに合う施策を打ってみる。旨く行かなければ、即座に撤退するヒットアンドアウェイ戦略が重要です。失敗から学んで、次に反映する。それを繰り返して10年後に備える金融機関と様子を見続ける金融機関があったとして、結果は目に見えます。昔のITと違って、今後は、金さえあればシステムを入手できる時代ではありません。システムは自社組織が持つ、文化とノウハウの塊であり、それを作って保守するのも、自社要員がやらざるをえない。他人に委託して済むような業務で、他社との競争に勝てる筈がありません。

FinTechをこうした流れで見ると、電子決済やAIでのローン審査が、コア機能になるとは到底思えません。しかし、今後はヒットアンドアウェイのチャレンジと差別化サービスの内製化を急ぐ必要がありますが、FinTechはその良い経験材料になることでしょう。保険の動きは銀行に先行すると、最近、思うようになりました。

                        (平成28年10月4日 島田 直貴)